『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
173 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第54話 妖怪制作② ~テケテケ~ 前編

しおりを挟む
  

 新たに出て来る『素材』の回収を冷静沈着な『雪女』しらゆきにお願いして、現状の素材再生をカルマは進めていく。
 この階層にはレイドに出た『探索者』の半数以上が『ある』。
 どんどん進めていける。



「次は『テケテケ』を作ります!」
 みどりとしらゆきを左右に従えて宣言した。

 なにせ「そのために用意しました!」と言わんばかりの素材があるんですもの。
 作らないわけにいかないじゃないか!

 なんのことか?
 しらゆきちゃんが人間だったときの彼氏を略奪した女のことだ。
 騙されていただけかもしれないが、いまとなってはどちらだろうが関係ない。

 ウエストのくびれた部分で輪切りにされていた子である。
 傷口をすぐに凍らされたことで即死せず、ヒーラーを探して這いずった根性女子だ。

 この執念。
 実に妖怪向きの逸材である。

「足すモノとかないしな。すぐ作れる」
 胴体の半ばから下がない以外は『人間』だからな。

 創作の漫画だとハサミを持っていたりカマを持っていたりするけど。
 手で這うのにハサミを持ったら動きにくいだろう。

「まぁ、モンスターとしては攻撃手段がないってのは問題だけど」
 腕で這いずって、見たモノを恐怖させて追い掛け回すのがテケテケなのだ。

 だが、そこは『スキル』とかで何とかなるだろう。
 正直作ってみたいだけだったりするし。

「生前の意識を確認してみよう」
 ポチッとな。

『システム』内のデータを呼び起こす。
 死ぬ寸前の記憶だ。

 ウィンドウが起動して、映像が浮かび上がる。
 
『痛い、痛い!』
 魂なのだろうか?
 へその上あたりからぶつ切りされた女の子が、宙に浮いた状態で訴えてくる。

 よく見ると左手も手首から先が無くなっていた。
 腹部と左手の傷口を氷なのかエクトプラズマなのか、青いものがモワモワと覆っている。

『助けて、助けて、タスケテ、タスケテ、テケ、テケ』
 テケテケの名前の由来だとされる言葉が紡がれた。

「そうだね。助けてあげるよ」
 体を回収、データ化したのちに『妖怪』属性のモンスターとして再構築。
 それだけで、『テケテケ』は完成した。

      ◆園山裕子視点(テケテケの前)◆

 もう、足の痛みはない。
 もう、叫ばなくていい。

 血まみれの手も、泡のような下半身も、誰かに見られても、もう恥ずかしくない。
 だって、もう人間じゃないから。

 彼女は知っていた。
 この姿になったのは、怒りのせいだって。
 嫉妬のせいだって。

 友梨ちゃんの、あの冷たい視線。
 彼を奪った罰。

 ヒーラーを探して這っているさなか、体が凍った。
 氷は傷口を塞ぐと同時に地面に固着させる。

 動けない。
 首だけで、氷の魔法が飛んできた方向を見た。
 友梨がいた。オニヤンマに咥えられて宙に浮いた姿で。

 本来なら、オニヤンマに向けるだろう手をこちらへ向けて伸ばしている。
 自分を救えるかもしれない『最後の魔法』を私にかけた意味。

 寒さでなく、震えた。
 人間の情念の熱さと冷たさを身と魂に刻み込まれた気がした。

 そして、わかる。
『アイツ』に『死』を強制した罪。
 それが根幹にあると。

 爆発して消えたと思っていたら、『妖怪』を作る能力を得て戻ってくるとか。
 そんなこと、誰が予想できる?

 生きて帰れなかったのは、その報い。
 変な風に復活させられるのは、その代償。

 だとしても・・・ここまでされなきゃいけないことだった?
 死を強制する筋書きを描いたのは学校の教師たちだ。
 
 そう聞いている。
 少なくとも、『私』ではない。
 なのに・・・。

 でも、それでも。
 今は静かだ。
 自分の鼓動も呼吸音さえ聞こえない。
 この静けさは、彼女にとって救いだった。

 誰も追いかけてこない廊下。
 誰も叫ばない夜。
 泡の中に溶けていく痛み。

 彼女は、そっと目を閉じた。
 そして、微笑んだ。

 死の恐怖から解放され。
 痛みからも解放された。
 とても安らかだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...