『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第53話 最前線攻略者たち ① ~英雄譚の崩壊~ 前編

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 妖怪制作に先立って、オレは残っている『虫型モンスター』全てに64階層の『お客様』への歓待を指示した。
 いずれにしろモンスターは総入れ替えをする。
 だったら、存在しているモノたちはここでキッチリ使い切りたい。

 準備ができるまで、時間も稼がなくてはならないからな。

       ◇

 その頃、64階層を進む主力は、苦闘の中に居た。
 カエル女『仁科悠』改め『河童』の女の子、『沢辺みどり』がいた先駆けA班の損失は他のパーティでも同様に発生していた。
 相互の連絡が用をなしていなかったからである。

 普段は各自10人以下のパーティで活動していて、他のパーティと連絡を取るということがない。
 深刻なダメージを負い、救援要請をするほかない。
 そんな事態にならない限りは、没交渉なのだ。

 大規模レイドとは、いくつものパーティが連動して当たるミッション。
 人数は大きいが単位としてはパーティごとの編成でしかない。
 連絡を取り合うという発想が、そもそも無かったのだ。
 
 始めに被害を受けたパーティは先遣隊の中でもさらに先鋭。
 先頭に立って正規ルートを進んでいた。

 その役目は、露払いであると同時にダンジョン内の変化にいち早く気付き情報を収集する重要なものだ。
 敵モンスターの変化についても可能な限り迅速に、他パーティへと展開している。

 ただ、その伝え方が問題だった。
 SNSを介してのチャットだったのだ。

 お判りいただけるだろう。
 暇な待機時間であれば、連絡が来たとなれば即、既読にもする。
 
 しかし、今まさに接敵中という状況だったらどうか?
 通信音がしたからといって、内容を確認できるか?

 スマホを操作できるか?

 できるわけがないではないか!

 他パーティの者たちは皆、着信に気付きつつも戦闘に入った。
 内容に目を通せたのは、死地を脱して落ち着いてからのことだ。
 そして、全員が叫ぶことになる。

「戦闘中に、こんなの読めるかよ!」
「緊急の用件は口で言って!」
「文字を読むなんてムリに決まってんだろ!」
「スマホ出す余裕なんてなかったわよ!」
 ・・・と。

 モンスターの属性が逆転していると気付くまでに、どのパーティも少なからず損害と犠牲者を出していた。
 これにより、先駆けA班は他のパーティから憎悪を抱かれることになる。

     ◇

「自分らの不注意を棚に上げやがって!」
 先駆けA班のリーダーが悪態をついた。

 続々と罵倒のメッセージが送られてくる。
 だが、それらはどれも理不尽に感じられた。

 どのみち、「戦闘中でスマホを取り出す余裕なんてなかった」のなら、電話の着信だって無視したに違いないのだ。
 不満なのはわかるが、理にかなっていない。

 さらには、本来なら先頭を交代するのだが、他のリーダーたちにより、彼のパーティが中盤以降も先頭で進むことになったことへの怒りもある。
 他のパーティよりほんの少し早く、接敵して情報を得ていただけだというのに。
 役目はきちんと果たして情報も展開したのに。

 責められる謂れなんてない。
 彼は大いに不満だったのだ。
 他のリーダーたちだって、立場が同じなら同じ行動をとったに違いないのだから。

「グチっても仕方ないわ。気を付けて進みましょ」
 サブリーダーが宥めに入る。

「・・・そうだな。みんな、モンスターの属性が逆転している。そのつもりで頼むぞ」
「わかっていれば、対処は難しくないわよ」
 サブリーダーが、大丈夫だと返し、他のメンバーも頷いた。
 根本的な勘違いに気が付かないままに。


 モンスターの属性が変化した。
 ならば、変化しないこともあり得るのだ。


 リーダーは、こう言うべきだったのである。

『初見のつもりで慎重に対処しろ!』と。

 逆になっているのだと決めつけずに。
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