『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第60話 妖怪制作③ ~垢嘗め~ 前編

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「お! サブマス候補発見!」
 テケテケを仲間に加えて歩いていると、なじみ深い『足』があったので拾った。
 もちろん、足には腰も腹も胸も腕も首も頭もついている。

 外見は奇麗なまま残っていた。
 ・・・少なくとも、遠目にはそう見えた。

 近づいてみると、頭部の下に、何かが『溶けたように』広がっている。
 固形とも液体ともつかないそれは、まるで振動で崩れたゼリーのようだった。

 目は、妙に生々しく、こちらを見ているような錯覚を覚える。
 まるで、まだ何かを訴えようとしているかのように。
 だがそれだけのこと。
 この程度なんとも―――

「おもわ・・・」

 そこまで言って、カルマは口を押さえた。

「ゲボッ! ムリ・・・」

 さすがに吐いた。
 一度細胞レベルで吹き飛ばされた身とはいえ、これはキツい。


 それはそうと、気を取り直して拾ったものを確認した。
 水魔法の使い手、校内九大魔女が一人『八島薫』様だ。

 9人いる大魔法使いの一人。
 ただ、その能力はどちらかと言うと『回復系』。

 状態異常回復などに強い半面、攻撃力は高くない。
 回復力も専門のヒーラーには及ばない。
 派閥外の女子からは「9人中一番弱い」と言われていたはずだ。

 生まれついてのお嬢様。
 とある大企業の創業者一族の直系。
 現会長の孫で、現社長の姪というセレブだ。
 根っからの女王様気質で、それはもう可愛がっていただいた。

   ◆往路・ダンジョン15階層での追憶◆

 セーフティエリアでのこと。
 突然、それまであまり接点のなかった人から呼び出しを受けた。

「いいこと? 薫様はとても素晴らしいお方なの。あなたなんて本来目にも入れてはいけない穢れ亡きお方。絶対に粗相しないよう、心しなさい!」
「はい」
 案内役の女子に念を押された。

 完全に上からだ。
 駆馬のクラスメイトなのだが。
 
 八島薫。
 彼女がリーダーを務めるパーティのテントの前だ。
 周囲は『薫様』に心酔しているらしい女性パーティのものらしい数個のテントが囲み。
 それをさらに追っかけか下僕の男子パーティのテントが囲んでいる。
 二、三十人規模の派閥を形成しているらしい。

 テントの入り口で片膝をついた案内の女生徒が、静かに声をかける。
「薫様、連れてきました」

 その姿は、まるで教団の儀式に仕える巫女のようだった。
『お姫様』と『騎士』では足りない。
 むしろ、『教祖』と『信者』という構図が、空気にぴたりと馴染んでいた。

「入らせなさい。あなたは下がっていてね?」
「ですが!」
「あらあら。主に吠えかかる犬に用はなくてよ?」

 言葉は柔らかいのに、空気が刃のように冷たい。
 案内役の女生徒は、見られてもいないのに地面に額をつけるほど頭を下げた。
 その姿は、服従の儀式そのものだった。

 テントの前に座り込んだ彼女は、細剣の柄を撫でている。
 その仕草は、沈黙の警告。
 薫様が悲鳴を上げれば、空気が裂けるより早く、心臓を貫くのだろう。

「お邪魔します」
 布をくぐる瞬間、空気が変わった。
 視線が、肌に触れる前に心に触れてくるような感覚。
 逃げられないことは、呼び出された時点でわかっていた。

「っく」
 入った途端、息が止まりかけた。

 薫の装いは、均衡の対極。
 上半身は白い冬服で整えられているのに、その下は、『隠すことで見せる』構成だった。

 薄いハンカチが掛けられている。
 それは、布ではなく境界だった。
 見せないことで、視線を誘導する。
 まるで、祈りを捧げる祭壇の布のように、そこだけが異様に浮かび上がっていた。

 薫は微笑む。
 その微笑みは、反応を試す神の表情。

 誘惑ではない。
 支配の道具としての美しさ。
 主人公の心の揺れを測るための、静かな儀式。

 視線が吸い寄せられる。
 それは、禁忌に触れる前の緊張。
 空気が張り詰まり、沈黙が重くのしかかる。

 カルマは、ただ立ち尽くす。
 息を呑む。
 それは、空気に触れたのではなく、空気に触れられた感覚だった。
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