『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第59話 最前線攻略者たち② ~静かに崩れる舞台裏②~ 後編

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 ◇観察者視点◇

「フンコロガシさーん!」
 たまたま見ていたカルマが叫んだ。
 直近の戦闘では要だった、頼れるナイスガイが初めて失われようとしている。

「往生際が悪いな、こいつ!」
 ウィンドウ越しに睨みつける。

「ああ。城野敦君か」
 見知った顔だった。
 すれ違うたびに腹パンされていた相手だ。
 毎度のことなので、いやでも顔が焼き付いている。

「フンコロガシさん、ガンバレ!」
 声援を送った。




「・・・」
「―――」
 後ろで、少女が三人。
 あきれ顔をしているが、意識していなかった。

「・・・なに?」
 見られることに慣れていないカルマだからこその失敗である。
 自分の行動を気にかける癖がついていないのだ。

   ◇後詰B班の最後◇

 カルマの声が届いたわけでもあるまいが、フンコロガシさんは頑強だった。
 突き立てられた剣をものともせず前進。
 鉤のついた前脚で、応戦した。

 見る見るうちに城野敦君の装備は崩れ、制服も裂けていった。
 傷が増えていくのがわかる。
 れど、彼は立ち続けた。

 だが、フンコロガシさんの奮戦もそこまで。
 フンコロガシさんの目の輝きが失せ、前のめりに倒れる。
 ずんぐりとした巨体が静かに覆いかぶさり、戦いの終わりを告げた。

 あとには、モンスターの遺骸と『甲虫の甲殻』。
 そして、赤く染まった城野敦君が、かすかに息をしていた。
『運悪く』死ねなかったようだ。

     ◇観察者視点◇

「英雄になるには、少しばかり運が足りなかったようだね」
 憐れむようにカルマが呟く。

 その手が歪んだ口元を抑えていた。

 舞台の幕はもう閉じていた。
 誰も拍手を送る者はいない。

      ◇そして、終わり◇

 その向こうでは、もう一人。
 名の知れぬ魔職女子があがいている。
 フンコロガシさんが近づいてくるのを見て、咄嗟に火炎系の魔法を打ち出していたのだ。

 反射的な行動だっただろう。
 もう少し考える余裕があれば、回復を優先させたはずだ。
 行動の選択を間違えている。
 魔法の属性の選択も誤りだった。

 フンコロガシさんは砂漠の虫。
 熱に強い。
 その特性はモンスターにも受け継がれている。

 彼女からすれば、『属性の逆転』情報が頭にあったからの行動だったのだろうが、残念!
 フンコロガシさんは60階層より下のモンスター。 
 属性が変化していない。
 ダメージを与えることはできなかった。

「あっ」
 その代わり、思い切り気を惹いた。
 糞球の成形に集中していたフンコロガシさんが、成形を中止して女子に目を向けた。

 ガシ!
 四本の脚で逃げ道を塞がれ、彼女は身動きが取れなくなった。

「くっ・・・!」
 苦しげな声が漏れ、装備が軋む音が響く。

 フンコロガシさんの前脚が、彼女の胴を挟み込むように締め上げた。
 まるで相撲の『さばおり』のように、上体を反らせながら、じわじわと圧を加えていく。

 内部で何かがきしみ、軋む音が彼女の息と重なる。
 背中のプレートが歪み、胸当てがひしゃげていく。
 その下で、彼女の身体もまた、限界を迎えつつあった。

「っ・・・!」
 声にならない呻きが漏れ、目が揺れる。
 呼吸は浅く、意識が遠のいていく。

 地面に落ちる音が、静かに響いた。
 それは汗か涙か、あるいは別の何かか。

 フンコロガシさんは、最後の一押しで彼女を地に伏せさせると、興味を失ったように脚を離した。
 崩れた身体は、壁際へと転がり、赤い軌跡を残して静かに横たわった。

 反応が無くなった彼女に興味を失くしたらしいフンコロガシさんが、彼女を放り出す。
 彼女の体は、無造作に壁際へ寄せられた。

 壁に赤く線を引きながら床に落ちた彼女。
 それでもその胸は、わずかに上下していた。

『メガネウロ』が、すかさず拾い上げて運び出す。
 城野敦君や幸か不幸か、最初の衝撃で気を失ったままの者たちも同様だ。

 後詰B班は、静かに舞台袖へとはけていった。
 本人たちには不本意だっただろうが、少しばかり役者不足だったようだ。
 彼らは、スポットライトの届かない場所で、静かに幕を閉じた。
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