『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第81話  裏切られる巫女 ~祈りを失った者の問い~ 後編

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「・・・ああ、そうなのね」

 その呟きは、誰にも届かなかった。
 けれど、彼には届いていたのだろう。
 予想していたのではない。
 予想されていたのだ。

 最小の犠牲で最大の戦果を。
 それが、私たちの『正義』だった。
 その正義のもとで、彼は命を捨てさせられた。

 だが、彼の魂は腐らなかった。
 怒りと憎しみと絶望が、彼を膨らませた。
 そして、彼は『神』になった。

 彼は、裏切られた魂を集めていたのだと思う。
 その中でも、志乃は特別だったに違いない。

 祈りを封じられ、未来を奪われた巫女。
 手に握らされた石は、祈りを封じるための楔。
 その光が灯った瞬間、彼女の未来は閉ざされた。

「手足が吹き飛ぶ程度の威力しかなかったんだね?」

 カルマの言葉は、彼女の力のなさを嘲るものだった。
 覚悟のなさを、暴くものだった。

 志乃は、かつて『不要な術の行使』を嫌った。
 魔力は限られていた。
 だから、無駄にしたくなかった。

 カルマの『無限魔力』は、彼女にとって羨望であり、恐怖だった。
 だから、彼を遠ざけた。
 だから、彼を見捨てた。

 そして今、私は祈りを呪いに変えられた。
 手も、足も、もういらない。
 それは、裏切られた証。
 それが、彼女が『達磨』である理由。

 流されて、流されて。
 それでも、ここに戻ってきた。

 私は、祈る者だった。
 風に願いを乗せ、剣に福を宿し、命の灯を守ろうとした。
 けれど――

 私の祈りは、裏切られた。
 私を守るはずの者たちが、私の祈りを盾にして、私を差し出した。

 そして私は、達磨になった。

 その過程で、記憶が流れ込んだ。
 私を裏切った者の顔。
 私が祈った者の死。
 そして――私の祈りが、誰かを裏切っていたこと。

 裏切りは、誰か一人の罪ではない。
 それは、恐れが形を変えただけのもの。
 私も、誰かの恐れに加担していた。

 だから、私は恨むのをやめた。
 恨みは、私に還ってくる。
 私は、自分を恨みたくない。

 代わりに、私は『淀み』になる。
 人として死に、妖怪として蘇り、ここにいる。

 生と死の境界にいる者として、領域を越える者に問いかけよう。

 ――存在を歪めてまで、何を得たいのか?
 ――それは、本当にそこまでする価値があるのか?

 本当に?

   ◇達磨として覚醒◇

 私は達磨。
 祈りを失った祈る者。
 恨みを手放した、問う者。
 そして今、静かに歩き出す。


 私は、もう人間ではない。
 祈りを捧げる巫女でもない。
 誰かのために命を軽くすることも、誰かの願いに寄り添うことも、もう、しない。

 私は知っている。
 人間は恐れる。
 恐れから逃げるために、誰かを差し出す。
 その連鎖の中で、私は裏切られた。
 でも、私はその連鎖を断ち切る。

 恨みではない。
 これは、選択だ。

 私は、人間の敵になる。
 それは復讐ではない。

 私は、祈りを呪術に変えた。
 それは、私の意志。
 誰かに命じられたものではない。
『彼』の配下として歩むのは、私が選んだ道。


 私は知っている。
 私を殺したのは、『彼』だ。
 直接ではない。
 でも、彼が命じたことではある。
 私を、ではないにしても。

 彼の怒りが、私を裏切りへ導いた。
 彼の呪いが、私の死を呼んだ。
 だから、私は彼を憎むべきだった。
 でも――

 私は、彼に惹かれてしまった。
 こんな身になってわかる。
 彼の孤独、痛み。
 私は、自分もまた裏切り者だったことを知った。

 彼は私を壊した。
 でも、私を拾ったのも彼だった。

 それは、再生。
 歪んでいて、冷たくて、でも、確かに私を『生かした』もの。

 私は、彼に恋をした。
 それは、乙女の恋ではない。
 それは、死者の恋。

 彼の孤独を知って、自分の冷たさに気付いたからのぬくもりと焦がれ。

 痛みを知った者だけが抱ける、静かで、燃えるような情熱。

 彼の孤独に触れたとき、私はようやく祈りの意味を知る。

 彼の配下になるとき、私は震えた。

 それは恐れではなく、彼の孤独に触れられる喜びだった。

 私は達磨。
 彼に殺され、彼に拾われ。
 そして今、彼の影となる。

 私は、もう祈らない。
 願わない。
 救わない。

 冷たい?
 そうかもしれない。
 でも、冷たさは、裏切られた者の最後の誇り。

 私は、もう揺れない。
 私は、もう迷わない。
 私は、ただ、問いかける。

 あなたは、なにを求めてここへ来た?
 なにを犠牲にしてでも、来なければならないほどのこと?

 答えられるのなら、実力で示せ。
 答えられないのなら、一人死んで逝け。
 誰かを裏切ることも、誰かに裏切られることもないうちに。


 私の名前は『達磨ふよう』。
 不要と呼ばれた私が、今は浮かび上がる。
 祈りの残骸として、問いかける者として。

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