『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第82話 最前線攻略者たち⑤ ~静かな崩壊、大広間にて~ 前編

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 残り二班となった後詰は、64階層中央――『大広間』にいた。
 当初は『中ボス』がいると予想されていたが、モンスターの姿はない。
 妙に静かで、広すぎる空間。
 それは、ただの『空き部屋』にしては、どこか落ち着かない空気をまとっていた。

 本来は『サブマスター』が陣取るための部屋。
 だが、63階層に追いやられていたことで、今は無主の空間となっている――そんな事情を、彼らは知る由もない。

 後詰の役目は、主力の速やかな移動を支援するための環境づくり。
 周囲のモンスターを粗方駆逐し終えた彼らは、ここで『待機』に入っていた。
 主力が戻るまでは、することがない。

「・・・他の奴ら、遅くね?」

 ぽつりと漏れた声に、数人が顔を上げる。

「チャットも既読つかねーな」

「なにしてんのかしら・・・」

「ミスってんじゃねーだろうな?」

「全員? さすがにそれはないでしょうよ」

「・・・それも、そうか」

 最後の予想が、最も現実に近かった。
 だが、誰もそれを口にしたがらなかった。
 昨日までは、無傷で通れた階層。 
 一度は攻略した場所。
『まさか』が起きるはずがない――そう思いたかった。

「Eは宝探しに夢中、Fはお昼寝かもな」

「それだ!」

「他の奴らも似たようなもんか」

「どっかで、お金になる素材の採取でもしてるんでしょ。ほんと、意地汚いんだから!」

 サイテー!
 鼻息を荒くする女子の声に、周囲が笑う。
 だが、その笑いもどこか乾いていた。
 裏返せば、「その手があったか」と悔しさが滲んでいる。

「金になる採取ポイントか・・・そういや、近くにもあったな」

「ウソ、どこ?!」

 男子D――エンタの何気ない一言に、女子B——イクヨが食いついた。
 その目には、ほんのわずかな焦りがあった。
 何かをしていないと、不安になる。
 この静けさが、妙に耳に残るから。

 「ほら、あそこだよ。部屋中糸まみれの」
 「は? あの部屋って奥に宝箱あるだけでしょ?!」
 それも微妙な性能のアイテムが出る宝箱だ。
 
 発見当初には、糸だらけの部屋がスパイ映画のワンシーンを想起させて期待されたが、まるっきりの『ハズレ』宝箱だったのだ。
 一応、何人かで何度も開けてみもした。
 
『レア』があるかもしれないと思ったからだ。
 なのに出るものは変わらず。
 『ハズレ』と断定された。

 「あんなもん、高くなんて売れないっての!」
 ふざけてるのか!
 イクヨの目が怒りでつり上がった。
 
 「宝箱のことじゃねーよ」
 落ち着けと宥めるように腕を振る。
 
 「周りの糸が実は『レア』だったって話!」
 「糸?」
 あの邪魔ものが?
 イクヨは不審そうだ。

 「極上のナノファイバーなんだと。科宮研(科学的迷宮研究所の略)からの最新報告だそうだ。『コレ』より上質なものが作れるんだとよ」
 『コレ』と襟をつまんで見せる。

 学校指定の学生服のことだ。
 全世界共通、最上位と言われている素材で作られているダンジョン装備である。
 
 「マジ?」
 「おおマジ」
 「くっ、宝箱はブラフってわけ?」
 「そういうことだろ。底意地が悪いよな。ま、ダンジョンなんだから、当然と言えば当然なんだが」
 エンタが肩をすくめた。

 「回収してくる!」
 シュタ!
 片手をあげ宣言する女子A。
 
 「ショウガナイワネ、ツキアウワ」
 
「あ、アタシも!」
 
「オレモ」
 
「オレモ」
 便乗する者たち。

 「あんたたちだけで行かせるのは不安すぎるわね」
 手を上げた者たちを見回して、腕を組むB班リーダーのヤヨイ。

 「ついて行ってやれ」
 あとは任せた!
 思い切り押し付けるA班リーダーのオオタ。

 「お目付け役も一緒かぁ」
 不満そうに口を尖らせるイクヨだが、拒否して止められても困るのだろう。
 いそいそと準備を始めた。
 食料などの嵩張る荷物を残して、身軽になって出かけようということだ。
 
 「ささっと行って、とっとと帰るんだからね?!」
 「・・・はーい!」
 敵はもう駆逐してある。
 その確信から、彼女らの言動は軽い。
 お目付け役とされたヤヨイであってすらも。
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