『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
197 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第81話  裏切られる巫女 ~祈りを失った者の問い~ 後編

しおりを挟む
 
「・・・ああ、そうなのね」

 その呟きは、誰にも届かなかった。
 けれど、彼には届いていたのだろう。
 予想していたのではない。
 予想されていたのだ。

 最小の犠牲で最大の戦果を。
 それが、私たちの『正義』だった。
 その正義のもとで、彼は命を捨てさせられた。

 だが、彼の魂は腐らなかった。
 怒りと憎しみと絶望が、彼を膨らませた。
 そして、彼は『神』になった。

 彼は、裏切られた魂を集めていたのだと思う。
 その中でも、志乃は特別だったに違いない。

 祈りを封じられ、未来を奪われた巫女。
 手に握らされた石は、祈りを封じるための楔。
 その光が灯った瞬間、彼女の未来は閉ざされた。

「手足が吹き飛ぶ程度の威力しかなかったんだね?」

 カルマの言葉は、彼女の力のなさを嘲るものだった。
 覚悟のなさを、暴くものだった。

 志乃は、かつて『不要な術の行使』を嫌った。
 魔力は限られていた。
 だから、無駄にしたくなかった。

 カルマの『無限魔力』は、彼女にとって羨望であり、恐怖だった。
 だから、彼を遠ざけた。
 だから、彼を見捨てた。

 そして今、私は祈りを呪いに変えられた。
 手も、足も、もういらない。
 それは、裏切られた証。
 それが、彼女が『達磨』である理由。

 流されて、流されて。
 それでも、ここに戻ってきた。

 私は、祈る者だった。
 風に願いを乗せ、剣に福を宿し、命の灯を守ろうとした。
 けれど――

 私の祈りは、裏切られた。
 私を守るはずの者たちが、私の祈りを盾にして、私を差し出した。

 そして私は、達磨になった。

 その過程で、記憶が流れ込んだ。
 私を裏切った者の顔。
 私が祈った者の死。
 そして――私の祈りが、誰かを裏切っていたこと。

 裏切りは、誰か一人の罪ではない。
 それは、恐れが形を変えただけのもの。
 私も、誰かの恐れに加担していた。

 だから、私は恨むのをやめた。
 恨みは、私に還ってくる。
 私は、自分を恨みたくない。

 代わりに、私は『淀み』になる。
 人として死に、妖怪として蘇り、ここにいる。

 生と死の境界にいる者として、領域を越える者に問いかけよう。

 ――存在を歪めてまで、何を得たいのか?
 ――それは、本当にそこまでする価値があるのか?

 本当に?

   ◇達磨として覚醒◇

 私は達磨。
 祈りを失った祈る者。
 恨みを手放した、問う者。
 そして今、静かに歩き出す。


 私は、もう人間ではない。
 祈りを捧げる巫女でもない。
 誰かのために命を軽くすることも、誰かの願いに寄り添うことも、もう、しない。

 私は知っている。
 人間は恐れる。
 恐れから逃げるために、誰かを差し出す。
 その連鎖の中で、私は裏切られた。
 でも、私はその連鎖を断ち切る。

 恨みではない。
 これは、選択だ。

 私は、人間の敵になる。
 それは復讐ではない。

 私は、祈りを呪術に変えた。
 それは、私の意志。
 誰かに命じられたものではない。
『彼』の配下として歩むのは、私が選んだ道。


 私は知っている。
 私を殺したのは、『彼』だ。
 直接ではない。
 でも、彼が命じたことではある。
 私を、ではないにしても。

 彼の怒りが、私を裏切りへ導いた。
 彼の呪いが、私の死を呼んだ。
 だから、私は彼を憎むべきだった。
 でも――

 私は、彼に惹かれてしまった。
 こんな身になってわかる。
 彼の孤独、痛み。
 私は、自分もまた裏切り者だったことを知った。

 彼は私を壊した。
 でも、私を拾ったのも彼だった。

 それは、再生。
 歪んでいて、冷たくて、でも、確かに私を『生かした』もの。

 私は、彼に恋をした。
 それは、乙女の恋ではない。
 それは、死者の恋。

 彼の孤独を知って、自分の冷たさに気付いたからのぬくもりと焦がれ。

 痛みを知った者だけが抱ける、静かで、燃えるような情熱。

 彼の孤独に触れたとき、私はようやく祈りの意味を知る。

 彼の配下になるとき、私は震えた。

 それは恐れではなく、彼の孤独に触れられる喜びだった。

 私は達磨。
 彼に殺され、彼に拾われ。
 そして今、彼の影となる。

 私は、もう祈らない。
 願わない。
 救わない。

 冷たい?
 そうかもしれない。
 でも、冷たさは、裏切られた者の最後の誇り。

 私は、もう揺れない。
 私は、もう迷わない。
 私は、ただ、問いかける。

 あなたは、なにを求めてここへ来た?
 なにを犠牲にしてでも、来なければならないほどのこと?

 答えられるのなら、実力で示せ。
 答えられないのなら、一人死んで逝け。
 誰かを裏切ることも、誰かに裏切られることもないうちに。


 私の名前は『達磨ふよう』。
 不要と呼ばれた私が、今は浮かび上がる。
 祈りの残骸として、問いかける者として。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...