『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
198 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第82話 最前線攻略者たち⑤ ~静かな崩壊、大広間にて~ 前編

しおりを挟む
 

 残り二班となった後詰は、64階層中央――『大広間』にいた。
 当初は『中ボス』がいると予想されていたが、モンスターの姿はない。
 妙に静かで、広すぎる空間。
 それは、ただの『空き部屋』にしては、どこか落ち着かない空気をまとっていた。

 本来は『サブマスター』が陣取るための部屋。
 だが、63階層に追いやられていたことで、今は無主の空間となっている――そんな事情を、彼らは知る由もない。

 後詰の役目は、主力の速やかな移動を支援するための環境づくり。
 周囲のモンスターを粗方駆逐し終えた彼らは、ここで『待機』に入っていた。
 主力が戻るまでは、することがない。

「・・・他の奴ら、遅くね?」

 ぽつりと漏れた声に、数人が顔を上げる。

「チャットも既読つかねーな」

「なにしてんのかしら・・・」

「ミスってんじゃねーだろうな?」

「全員? さすがにそれはないでしょうよ」

「・・・それも、そうか」

 最後の予想が、最も現実に近かった。
 だが、誰もそれを口にしたがらなかった。
 昨日までは、無傷で通れた階層。 
 一度は攻略した場所。
『まさか』が起きるはずがない――そう思いたかった。

「Eは宝探しに夢中、Fはお昼寝かもな」

「それだ!」

「他の奴らも似たようなもんか」

「どっかで、お金になる素材の採取でもしてるんでしょ。ほんと、意地汚いんだから!」

 サイテー!
 鼻息を荒くする女子の声に、周囲が笑う。
 だが、その笑いもどこか乾いていた。
 裏返せば、「その手があったか」と悔しさが滲んでいる。

「金になる採取ポイントか・・・そういや、近くにもあったな」

「ウソ、どこ?!」

 男子D――エンタの何気ない一言に、女子B——イクヨが食いついた。
 その目には、ほんのわずかな焦りがあった。
 何かをしていないと、不安になる。
 この静けさが、妙に耳に残るから。

 「ほら、あそこだよ。部屋中糸まみれの」
 「は? あの部屋って奥に宝箱あるだけでしょ?!」
 それも微妙な性能のアイテムが出る宝箱だ。
 
 発見当初には、糸だらけの部屋がスパイ映画のワンシーンを想起させて期待されたが、まるっきりの『ハズレ』宝箱だったのだ。
 一応、何人かで何度も開けてみもした。
 
『レア』があるかもしれないと思ったからだ。
 なのに出るものは変わらず。
 『ハズレ』と断定された。

 「あんなもん、高くなんて売れないっての!」
 ふざけてるのか!
 イクヨの目が怒りでつり上がった。
 
 「宝箱のことじゃねーよ」
 落ち着けと宥めるように腕を振る。
 
 「周りの糸が実は『レア』だったって話!」
 「糸?」
 あの邪魔ものが?
 イクヨは不審そうだ。

 「極上のナノファイバーなんだと。科宮研(科学的迷宮研究所の略)からの最新報告だそうだ。『コレ』より上質なものが作れるんだとよ」
 『コレ』と襟をつまんで見せる。

 学校指定の学生服のことだ。
 全世界共通、最上位と言われている素材で作られているダンジョン装備である。
 
 「マジ?」
 「おおマジ」
 「くっ、宝箱はブラフってわけ?」
 「そういうことだろ。底意地が悪いよな。ま、ダンジョンなんだから、当然と言えば当然なんだが」
 エンタが肩をすくめた。

 「回収してくる!」
 シュタ!
 片手をあげ宣言する女子A。
 
 「ショウガナイワネ、ツキアウワ」
 
「あ、アタシも!」
 
「オレモ」
 
「オレモ」
 便乗する者たち。

 「あんたたちだけで行かせるのは不安すぎるわね」
 手を上げた者たちを見回して、腕を組むB班リーダーのヤヨイ。

 「ついて行ってやれ」
 あとは任せた!
 思い切り押し付けるA班リーダーのオオタ。

 「お目付け役も一緒かぁ」
 不満そうに口を尖らせるイクヨだが、拒否して止められても困るのだろう。
 いそいそと準備を始めた。
 食料などの嵩張る荷物を残して、身軽になって出かけようということだ。
 
 「ささっと行って、とっとと帰るんだからね?!」
 「・・・はーい!」
 敵はもう駆逐してある。
 その確信から、彼女らの言動は軽い。
 お目付け役とされたヤヨイであってすらも。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...