260 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます
第145話 相翼の競演 前編
しおりを挟む◆比翼ふげん(満島小夜)視点◆
風は、今日もよく吹いている。
羽根は乱れず、詠唱は淀みない。
命令は明確。
対象は、かつての『仲間』。
「……問題ないわ」
その声に、迷いはなかった。
少なくとも、表面には。
完璧であること。
それが、私に課された役割。
それが、私が『私』であるための条件。
かつて、私は選んだ。
誰かを守るために、誰かを切り捨てることを。
その選択を、もう後悔しないと決めた。
だから、今さら迷う理由はない。
たとえ、相手が『あの子』でも。
たとえ、あの時、私の手を取ろうとしてくれた子でも。
「完璧であることは、感情を捨てることじゃない。でも、感情に従うことでもない」
それが、私の結論。
風は、私の意志を映す。
ならば、私は風に恥じないように、ただ正確に、ただ美しく、ただ冷たく。
仲間を殺すことになるかもしれない。
でも、それは『任務』だ。
『命令』だ。
そして、『私が選んだ道』だ。
「私は、比翼ふげん。完璧であることを、私自身に課した者」
だから、私は迷わない。
だから、私は振り返らない。
だから、私は『彼』のために、風を吹かせる。
たとえ、その風が、かつての仲間の命を奪うとしても。
たとえ、その羽根が、かつての自分を切り裂くとしても。
「私は、完璧である。だから、私は美しい。……そうでなければならない。そうでなければ、私は——」
そう言い聞かせるように、風を巻き起こす。
その風は、誰かの叫びをかき消し、誰かの涙を乾かし、誰かの命を奪う。
でも、私は振り返らない。
なぜなら、私の背後には——『私の影』が、すべての痛みを引き受けてくれているから。
私は、ただ前を向いていればいい。
私は、ただ命令に従えばいい。
私は、ただ——完璧であればいい。
それが、私の『赦し』であり、『罰』であり、『存在理由』。
◆比翼みれん(満島小夜の魂)視点◆
ふげんの背は、まっすぐだった。
風を纏い、羽根を揃え、命令に忠実。
誰かを守るために、誰かを切り捨てることを、躊躇わない。
その姿は、美しい。
でも、私は——怖かった。
あれは、私の『器』。
かつての私が、なりたかった『理想』。
誰にも怯えず、誰にも縋らず、ただ正しく、ただ強く。
でも、私は知っている。
その強さの裏に、どれだけの『痛み』があるかを。
その正しさの中に、どれだけの『嘘』があるかを。
ふげんは、仲間を殺すかもしれない。
それを『任務』として受け入れている。
でも、私は——受け入れられない。
あの子は、私を庇ってくれた。
私の魔法を信じてくれた。
私の風に、希望を託してくれた。
なのに、私は—— 風を、私自身のために使った。
仲間を見捨てて、自分だけを守った。
その罪が、私を『みれん』にした。
完璧になれなかった私。
赦されなかった私。
でも、忘れられなかった私。
ふげんは、私の『完成形』。
でも、私は——あれに混ざれない。
あれは、痛みを切り捨てた私。
私は、痛みを抱えたままの私。
ふげんが風を巻き起こすたび、私は、かつての仲間の声を思い出す。
「助けて!」「お願い、守って!」
その声が、風にかき消されていく。
ふげんは、振り返らない。
でも、私は——振り返ってしまう。
そのたびに、風が私を裂く。
羽根が、私の体を貫く。
それでも、私は後ろを歩く。
ふげんの背を見つめながら。
それが、私に残された唯一の『意味』だから。
私は、ふげんに嫉妬している。
でも、同時に——哀れんでいる。
あれは、痛みを知らない強さ。
私は、痛みを知ってしまった弱さ。
どちらが『正しい』かなんて、わからない。
でも、私は——仲間を殺す風には、なりたくない。
だから、私は風に混ざれない。
だから、私は羽根になれない。
だから、私は——みれんのまま。
ふげんが前を向くたび、私は、後ろで泣いている。
その涙は、誰にも届かない。
でも、風は——知っている。
風が、少しだけ揺れた。
それは、私の痛みが、ふげんに届いた証かもしれない。
でも、ふげんは振り返らない。
それが、あの子の『完璧』だから。
私は、ただ歩く。
半歩後ろで。 風に削られながら。
仲間の名前を、心の中で呼びながら。
「ごめんね」。
その言葉だけが、私の詠唱。
誰にも届かなくても、私は、それを唱え続ける。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる