『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第146話 相翼の競演 後編

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 ◇相翼の終章◇

 風が、舞っていた。
 二つだった渦が一つになり、風が収まる。

 その瞬間、空気が変わった。
 まるで、舞台の幕が静かに降りるように。

 廊下に残るのは、 隅に吹き寄せられた制服と、倒れた者のねじれた影。

 そして、女の影が二つ。

 白い女は、誇らしげに胸を反らして立っていた。
 長く流れる白髪が、薄光を受けて淡く輝き、その瞳は金色に燃えていた。

 頭上に浮かぶ白い羽根の輪は、まるで天に選ばれた者の証。

 黒いセーラー襟に赤いリボン。 
 白の衣に結ばれた帯。
 それは、風を操る者としての誇りと、命令に忠実な『完成』の姿。

 その背に寄り添うように立つのは、黒い女。
 長い黒髪が肩に落ち、顔の半分を覆っている。
 琥珀色の瞳は、どこか遠くを見ていた。

 制服は黒。
 ただ、胸元の赤いリボンだけが、かつての『少女』の記憶を留めている。

 頭上には、黒い月桂の枝が弧を描いていた。
 それは、白い羽根の輪と対を成し、静かに夜空に溶け込んでいる。

 ふげんは、風の中心に立つ者。
 みれんは、風の影に立つ者。

 二人は、背中合わせに立っていた。

 一人は命令に従い、風を操る。
 一人は命令に逆らえず、風に削られる。

 その姿は、まるで『罪と赦し』の彫像。

 月の光が、白い女を照らし、黒い女を隠す。

 でも、どちらも——風の中に生きていた。

 妖怪『鶴女房』。
 己の羽で布を織る。
 献身の象徴。

 命令に忠実。
 完璧を支える未熟。
 強さと儚さの象徴。

 戦いが終わり。
 嵐は過ぎ去り。
 静寂が戻ってきた。

 そして、風は語らない。
 ただ、二人の影をそっと撫でて、次の物語へと吹き抜けていく。

     ◇

「風は役に立つ」
 自慢げに胸を反らす白い女。

 その言葉は、誇りか、それとも皮肉か。
 ふげんの『完璧』は、命令を遂行する力。
 風は、彼女の意志そのもの。

「そうね」
 虚ろな響きで、同意する黒い女。

 みれんの声は、まるで『風に削られた心』の残響。
 同じ風を知りながら、その意味をまったく違う角度で受け止めている。

 廊下には、風が猛威を振るった痕跡が、まるで傷跡のように刻まれていた。

 壁に走る無数のひび。
 床に散らばる破れた紙片と、焦げたように黒ずんだ床板。

 そして、制服が三つ。
 男女のものが、ねじれて横たわっていた。

 一つは、袖が裂け、中の腕が不自然な角度で折れ曲がっている。
 指先は、何かを掴もうとしたまま、空を切った形で止まっていた。

 もう一つは、胸元に深く抉れた裂け目があり、そこから滲み出た赤が、制服の白をじわじわと侵食していた。
 その赤は、すでに乾き、黒ずんだ花のように広がっている。

 最後の一つは、顔が見えなかった。
 長い髪が覆い隠していた。
 けれど、首の角度が、その者がもう起き上がらないことを物語っていた。

 風が吹き抜けたのは、ほんの一瞬だった。
 だが、その一瞬で、三つの命が、音もなく地に伏した。

 まるで、嵐の後に落ちた蝶のように。
 羽ばたくこともなく、ただ、静かに、そこにあった。


 残り、14人。


 数字が、物語の終わりを告げる鐘の音のように響く。
 風が吹くたびに、数が減る。
 でも、風は止まらない。
 なぜなら、それが『役に立つ』ということだから。

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