『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第163話 最後の10人 ③ ~毒の広がるとき~ 前編

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「くッ、クソガァァァァ!!」

 自失の数秒。
 その沈黙を破ったのは、リーダーの咆哮だった。
 怒りと悔しさが混ざり合い、喉を裂くような声となって響く。

 彼は、輝く大剣を高く掲げた。
 刃が、氷の光を受けて白く閃く。
 そして——

「砕け散れぇぇッ!!」

 振り下ろされた剣が、天井を薙いだ。
 魔力を帯びた斬撃が、空間を裂くように走る。
 一瞬の静寂。
 次の瞬間、天井の氷柱が一斉に砕けた。

 バキィィィン!!

 耳をつんざく破砕音。
 氷柱が、まるで悲鳴を上げるように砕け、無数の氷片となって、白い雨のように降り注いだ。

「うわっ!」
「くそっ、目に……!」

 仲間たちは、反射的に身をかがめ、ある者は転び、ある者は滑り、ある者は盾を構えた。
 氷片は鋭く、硬く、冷たく、容赦なく肌を裂いた。

 粉々になっている分、致命傷にはならない。
 だが、頬を裂き、腕を切り、足を滑らせるには十分だった。

「うっわ、ムチャするねー」

 フラノが、折りたたみ傘を器用に開いて、ひらりと氷の雨を受け流していた。
 その姿は、まるで通学路で小雨をやり過ごす女子学生のように軽やかだった。

 けれど、彼女の口元が、半月型に歪む。
 それは、笑顔ではない。
 冷笑。

「その状態じゃ、走れないよね?」

 床は、大小無数の氷片で覆われていた。
 尖った破片が、まるで罠のように散らばっている。

 踏めば滑る。
 転べば裂ける。
 動けば、音が出る。

「バラバラだし」

 氷塊を避けようとした彼らは、隊列を崩し、互いの背中を見失っていた。
 盾役は前にいない。
 回復役は孤立している。
 魔法使いは、足元の氷に足を取られそうになっていた。

 控えめに言って、隙だらけ。
 フラノの目には、『狩り場』に散った獲物たちにしか見えなかった。

「……さて、どこから凍らせようかしら」

 彼女の声は、まるで氷点下の風が囁くように、静かだった。

 そこへ——

 氷片が舞う中、色褪せた制服の一団が、音もなく現れた。

 彼女らは、霜月フラノの芝居がかった仕草に迎え入れられる。
 まるで、舞台の幕が上がるように。
 まるで、死の演目が始まるように。

「『素材』を採取します」

 その声が響いた瞬間、空気が変わった。
 冷気が、意志を持ったように動き始める。

 一影が前に出る。
 足元の氷を踏みしめ、迷いなく進む。
 彼女の足運びに合わせて、氷片が左右に退き、細い道が形成される。
 ナイフが光を反射し、敵の視線を奪う。

 ターゲットとなったのは、一人の女子。
 濡れた肩を抱くようにして、身を縮めていた。
 目を見開き、ナイフに釘付けになる。

 仲間の退場。
 氷片の痛み。
 突然の襲撃者。
 思考が、止まった。

 二影が囁く。
 声なき声が、彼女の心に入り込む。
 恐怖。
 混乱。
 後悔。
 感情の隙間に、冷たい言葉が染み込んでいく。

 杖を握る手が、震えた。
 目が曇る。
 意識が、内面に沈んでいく。

 三影が盾となり、反撃を受け止める。
 氷片が砕ける音に紛れて、彼女の腕が軋む。

 四影が滑るように背後へ。
 刃が一閃。
 血が、舞う。

 五影が囮となり、氷の上を舞うように跳ねる。
 笑みを浮かべながら、注意を引きつける。

 六影が傷を癒す。
『素材』に手を添え、光が灯る。
 無駄な傷は、残さない。

 そして——

 七影候補かを審問する。
 実体のない影が、彼女の輪郭を覆い隠す。
 数秒の間。
 魂の奥を覗き込むような、静かな審判。

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 拒絶の叫び。
 魂が拒んだその瞬間、影への道は、断たれた。

「採取、失敗」

 一影のナイフが、静かに一閃。
 横に薙がれた。
 命が、音もなく終わる。

 床に転がる重いもの。
 氷の上を転がる音が、静寂を切り裂いた。

 転がったものは、六つの影が拾い、支えて運び出す。
 仲間にはならなかった。
 けれど、『素材』には違いない。

 残り、七人。

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