『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第170話 妖怪制作 ~女郎蜘蛛(真梨華)~ 前編

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『レイド』は、失敗した。
 最下層に挑んだ者たちは、誰一人として生き残らなかった。

 だが、それで『終わり』とはならない。

 生存者が、まだいる。

 64階層には、先駆けB班の五名。
『糸の部屋』には、後詰の女子がやはり五名。
 通路を一人歩く、大盾を持った先駆け右翼の元サブリーダー。
 62階層には、『糞球』に捕らわれたまま放置されている双子。

 ——都合、13名。

『巣』で生産活動に勤しむ者たちは、含めない。
 彼らは、もはや『生存者』ではなく、『資源』として扱われている。

 だが、今いる生存者たちを、『巣』に囲う必要は、もうない。

『ダンジョンレベル』が70にまで上がった今、魔力の自然回復量は、かつての比ではない。 『魔力生産器』の存在意義すら、かすむほどに。

 もはや、搾取のために人間を囲う必要はない。

 そして、何より——

『レイド』を企画した『教師陣』には、まだ手が届いていない。

 “凶器”とされた者たちをいくら壊しても、実際に凶器を振るった『犯人』を裁かなければ、意味がない。

 彼らは、舞台の裏で笑っていた。
 英雄を仕立て、犠牲を美化し、子どもたちを“物語の部品”として扱った。

 カルマの復讐は、ただの怒りではない。

 それは、構造そのものへの反逆。
『正義』という名の脚本を、根本から焼き尽くすための火。

 だから、まだ終われない。
 この物語は、まだ『清算』されていない。

「というわけだから、彼女に働いてもらわないとね」

 カルマは、赤く塗装された体を見下ろした。
 その視線の先には、ギィギィと軋む音を立てる『サブリーダー』——真梨華。

「ギィ、ギィギギギギギッ……」

 口から漏れるのは、人のものではない音。
 言葉ではない。
 感情でもない。
 ただ、存在の残響。

 生命活動は、すでに絶たれている。
 だが、『ダンジョンサブマスター』としての称号が、彼女の魂を『役割』としてこの場に留めていた。

『人間』としては、もう死んでいる。
 それでも—— 『それ以上』になれないでいる。

 カルマは、静かに手を掲げた。
 その指先に、紅蓮の魔力が灯る。

「妖怪化のプロセスを開始する」

 厳かに、宣言した。

 その言葉が、儀式の始まりを告げる鐘のように響いた。

 真梨華の体が、微かに震える。
 赤い塗装が、皮膚のように脈打ち始める。

 死体ではない。
 人間でもない。
 モンスターでもない。

 ——その狭間にある『何か』が、今、妖怪としての形を得ようとしていた。

 カルマの魔力が、彼女の体に流れ込む。
 魂の残滓が、形を変えながら再構築されていく。

 目が開く。
 瞳は、かつての真梨華の色をしていた。
 だが、そこに宿るのは——執念と、役割と、命令。

『自我』ではない。

 妖怪化は、再生ではない。
 それは、再定義。

 彼女は、もう『真梨華』ではない。
 だが、『真梨華だったもの』として、このダンジョンに仕える存在となる。

 ◇魂の問い(真梨華の魂)◇

 ああ……冷たい。
 彼の血が、私の手を濡らす。
 でも、それより冷たいのは、彼の目。

 もう私を見ない。
 もう、必要としていない。

 私は、あなたのために生きてきた。
 隣に立つために、どれだけ自分を削ったか。
 でも、あなたは——あの女を見ていた。

 私は、ただの『便利な人』だったの?

 静かになった。
 誰にも邪魔されない、二人だけの世界。
 それが、私の幸せ。

 ◇欲望の叫び(真梨華の欲望)◇

 だから、壊したの。
 あなたを、そして私を。

 これで、誰にも奪われない。
 あなたは、永遠に私のもの。

 あなたがいないなら、私もいらない。
 一緒に沈みましょう。
 濁った水の底へ。
 誰にも見つからない場所へ。

 私の最後の願いは、あなたの記憶に残ること。

 それだけで、私は満たされる。

 ◇愛の囁き(真梨華の愛)◇

 ふふ……見て?
 あなたの首、こんなに細い。
 私の手で包めるくらい。
 かわいい坊や。

 あなたの笑顔は、私だけのもの。
 だから壊したの。
 世界ごと。

 あなたはもう、どこにも行かない。
 私の腕の中で、永遠に眠るの。

 血の匂いが甘くて、胸が高鳴る。
 愛してる。
 愛してる。
 愛してる……。

 ◇変化(真梨華たち視点)◇

 暗い。冷たい。静か。 
 それが、死だと思っていた。

 でも——違った。

「目を開けるんだ」

 命令だった。
 拒否できない。

「君は終わっていない」

「君は、オレのものになる」

 言葉が、甘く、苦く、染みてくる。
 それだけで、満たされた。
 私を必要としてくれる。
 終わらせない。

 それが、私の『生』の意味。

 ◇変容(真梨華たち視点)◇

 蜘蛛——嫌いだった。
 でも、混ざる。
 人間の体に、蜘蛛が入り込む。

 脚、目、沈黙。
 でも、逃げられない。
 彼がそう望んでいるから。

「君は美しい」

「君は、女郎蜘蛛になる」

 彼の望みが、私を溶かす。
 脚が伸びる。
 目が増える。
 糸が滴る。
 人間の形がほどけていく。

 でも、涙は出ない。
 心は震えない。

 これが『愛』なら、それでいい。

 怪物になっても、必要としてくれるなら。

 私は、あなたの『女郎蜘蛛』。
 あなたのために糸を張り、獲物を捕らえ、微笑む。

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