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帰り道
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店を出ると、夜風が肌に触れた。
春の空気は冷たくて、酔いの熱を少し奪っていく。
街灯が並ぶ道に、二人分の影が延びて揺れた。
「……すみません、飲ませすぎました?」
朝比奈さんが笑う。
その声が、夜の静けさに妙に馴染んでいた。
「いや、全然。むしろ久々に喋りすぎた気がする」
「そうですか。僕は、聞いてるの好きなんですよ」
足音が並んで響く。
庁舎の近くを流れる川の音が遠くで聞こえていた。
風が強く、肩にかけた上着の裾がはためく。
信号の赤が道を染め、ふと立ち止まったとき、
朝比奈さんが少しだけこちらを見下ろした。
「……寒くないですか」
「だいじょ――」
言い終えるより早く、手が取られた。
指先が自然に絡む。
あまりにも自然で、まるでずっと前から決まっていたみたいだった。
「っ、ちょ、待って……」
振り解こうと力を入れる。
けれど、ほどけなかった。
彼の手は、力を込めているわけではないのに、
包み込むように温かくて、拒む感覚がどこかで鈍った。
「……は、離して」
「道、暗いので」
「それだけ?」
「ええ。それだけです」
穏やかな声。けれど、そこに少しも隙がない。
夜風が二人の間を通り抜けるたび、
握られた手の温度だけが強く残る。
信号が青に変わっても、動けなかった。
心臓が早くなって、呼吸の音がやけに大きく聞こえる。
彼はそのまま歩き出し、自然と俺も引かれて歩いた。
「……朝比奈さん」
「はい」
「なんで俺なんかに構うんですか」
「ふふ、酔っているだけですよ」
返事は、あっさりしていた。
それなのに、握られた手の温度は、
その言葉よりもずっと雄弁に思えた。
角を曲がると、街灯が一つ切れていた。
暗がりの中で、
指先だけがまだ熱を残していた。
春の空気は冷たくて、酔いの熱を少し奪っていく。
街灯が並ぶ道に、二人分の影が延びて揺れた。
「……すみません、飲ませすぎました?」
朝比奈さんが笑う。
その声が、夜の静けさに妙に馴染んでいた。
「いや、全然。むしろ久々に喋りすぎた気がする」
「そうですか。僕は、聞いてるの好きなんですよ」
足音が並んで響く。
庁舎の近くを流れる川の音が遠くで聞こえていた。
風が強く、肩にかけた上着の裾がはためく。
信号の赤が道を染め、ふと立ち止まったとき、
朝比奈さんが少しだけこちらを見下ろした。
「……寒くないですか」
「だいじょ――」
言い終えるより早く、手が取られた。
指先が自然に絡む。
あまりにも自然で、まるでずっと前から決まっていたみたいだった。
「っ、ちょ、待って……」
振り解こうと力を入れる。
けれど、ほどけなかった。
彼の手は、力を込めているわけではないのに、
包み込むように温かくて、拒む感覚がどこかで鈍った。
「……は、離して」
「道、暗いので」
「それだけ?」
「ええ。それだけです」
穏やかな声。けれど、そこに少しも隙がない。
夜風が二人の間を通り抜けるたび、
握られた手の温度だけが強く残る。
信号が青に変わっても、動けなかった。
心臓が早くなって、呼吸の音がやけに大きく聞こえる。
彼はそのまま歩き出し、自然と俺も引かれて歩いた。
「……朝比奈さん」
「はい」
「なんで俺なんかに構うんですか」
「ふふ、酔っているだけですよ」
返事は、あっさりしていた。
それなのに、握られた手の温度は、
その言葉よりもずっと雄弁に思えた。
角を曲がると、街灯が一つ切れていた。
暗がりの中で、
指先だけがまだ熱を残していた。
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