下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】

tii

文字の大きさ
10 / 27

「ごめんなさい」

しおりを挟む
 鼓動が早まる。
 朝比奈さんは間髪入れず、俺の頬を両手で包み込むと――そのまま無言で口づけてきた。

 唇は熱く、微かにお酒の匂いがする。

けれど、それ以上に彼自身の、甘くて落ち着くような香りが鼻の奥をくすぐった。

俺はその香りに酔いしれていた。
いや、興奮していた。

これを発情と言わずしてなんと言うのだろう?

彼から舌が差し込まれた瞬間、俺はもうどうしようもなく、飢えた獣のように欲しくて仕方がなかった。
彼の舌を吸い味わうと、唾液を残らず吸った。
そして、こくこくと喉を鳴らして彼の唾液を飲み込む。
もっと、もっと欲しいという、抑えきれない欲求が全身を突き動かした。

唇が離れるとお互い息が荒く、朝比奈さんは俺の激しさに驚いているような表情を浮かべた。だが言葉はなく、彼は情熱のままに俺をベッドに手招いた。

俺をベッドに寝かせると、彼は、俺の体に跨り、再び深く口付けを交わす。
頬にキスをし、耳、首筋、そしてTシャツを捲り上げ、胸、腹へとその熱い口唇と指先はゆっくりと降りていく。

俺は抗いようもない気持ちよさに悶え、シーツを握りしめていた。
肌に触れる空気がひんやりと感じるほど、体内は熱に支配されていた。
あらゆる場所にキスを落とされ、そして、熱を帯びた手が臍から下へと辿り着く。

もちろん、そこはすでに熱と固さを持っている。
俺も健康な男子なのだ。

俺の「慎ましきもの」は、スウェット越しにその形状が露わになっていた。

普段の慎ましさは鳴りを潜め、今は初めての主役となれる場所に降り立った、まるで初めて武道館、国立競技場に立つアーティストのように堂々とそそり立ち、熱を帯びていた。

朝比奈さんは俺の目を見つめながら、それを愛おしそうに撫でる。

「う……」

俺の腰が跳ねた。
勝手に腰が動き、彼の指先が触れるたびに刺激を求めてしまう。

こんな経験は初めてだった。
これからもっと素晴らしいことが起きると予感した。


その時だった。

濃密だった空気が、突然止まった。

朝比奈さんが苦しそうな顔をして、俺の上から離れた。

 「……ごめんなさい……」

 それだけ言って、玄関の方へ向かっていった。

……え?

俺は慌ててTシャツを直し、廊下へ出る。
彼はお手洗いに入ったようだった。

「だ、大丈夫……?」

扉の向こうから、呻くような声が聞こえた。

「うう、ごめんなさい……気持ち悪くて……」


……。


そりゃそうだ。あんな風にストゼロを一気に飲めば、誰だって回る。

俺は冷蔵庫に行き新しいペットボトルの水を取り出すと、キャップを開けた。
遠慮なくドアを開けて手渡すと、彼の背中をさすった。

出番を失ったアーティストは、急速に熱を失い、静かに慎ましさを取り戻していた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法学校の城に囚われている想い人♡を救い出して結婚したい天才有能美形魔術師(強火執着)の話

ぱふぇ
BL
名門魔法学校を首席で卒業し、若くして国家機関のエースに上り詰めた天才魔術師パドリグ・ウインズロー(26歳)。顔よし、頭脳よし、キャリアよし! さぞかしおモテになるんでしょう? ええ、モテますとも。でも問題がある。十年越しの想い人に、いまだに振り向いてもらえないのだ。そんな片思い相手は学生時代の恩師・ハウベオル先生(48歳屈強男性)。無愛想で不器用、そしてある事情から、魔法学校の城から一歩も出られない身の上。先生を外の世界に連れ出すまで、全力求婚は止まらない! 26歳魔術師(元生徒)×48歳魔術師(元教師)

オメガ公子とアルファ王子の初恋婚姻譚

須宮りんこ
BL
ノアメット公国の公子であるユーリアスは、二十三歳のオメガだ。大寒波に襲われ、復興の途にある祖国のためにシャムスバハル王国のアルファ王子・アディムと政略結婚をする。  この結婚に気持ちはいらないとアディムに宣言するユーリアスだが、あるときアディムの初恋の相手が自分であることを知る。子どもっぽいところがありつつも、単身シャムスバハルへと嫁いだ自分を気遣ってくれるアディム。そんな夫にユーリアスは徐々に惹かれていくが――。

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

かわいい王子の残像

芽吹鹿
BL
 王子の家庭教師を務めるアリア・マキュベリー男爵の思い出語り。天使のようにかわいい幼い王子が成長するにつれて立派な男になっていく。その育成に10年間を尽くして貢献した家庭教師が、最終的に主に押し倒されちゃう話。

潔癖王子の唯一無二

秋月真鳥
BL
 アルファと思われているオメガの王子と、美少女でオメガと思われているアルファの少年は、すれ違う。  整った容姿、鍛え上げられた屈強な身体、見上げるほどの長身。  ササラ王国の王子、アレクサンテリは、アルファと間違われるオメガだった。  潔癖症で、「キスは唾液が耐えられない」「他人の体内に体の一部を突っ込むのは気持ち悪い」「中で放たれたら発狂する」と、あまりにも恋愛に向かないアレクサンテリ王子の結婚相手探しは困難を極めていた。  王子の誕生日パーティーの日に、雨に降られて入った離れの館で、アレクサンテリは濡れた自分を心配してくれる美少女に恋をする。  しかし、その美少女は、実は男性でアルファだった。  王子をアルファと信じて、自分が男性でアルファと打ち明けられない少年と、美少女を運命と思いながらも抱くのは何か違うと違和感を覚える王子のすれ違い、身分違いの恋愛物語。 ※受け(王子、アレクサンテリ)と、攻め(少年、ヨウシア)の視点が一話ごとに切り替わります。 ※受けはオメガで王子のアレクサンテリです。 ※受けが優位で性行為を行います。(騎乗位とか) ムーンライトノベルズでも投稿しています。

ヤンデレ王子と哀れなおっさん辺境伯 恋も人生も二度目なら

音無野ウサギ
BL
ある日おっさん辺境伯ゲオハルトは美貌の第三王子リヒトにぺろりと食べられてしまいました。 しかも貴族たちに濡れ場を聞かれてしまい…… ところが権力者による性的搾取かと思われた出来事には実はもう少し深いわけが…… だって第三王子には前世の記憶があったから! といった感じの話です。おっさんがグチョグチョにされていても許してくださる方どうぞ。 濡れ場回にはタイトルに※をいれています おっさん企画を知ってから自分なりのおっさん受けってどんな形かなって考えていて生まれた話です。 この作品はムーンライトノベルズでも公開しています。

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

箱入りオメガの受難

おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。 元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。 ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰? 不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。 現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。 この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

処理中です...