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おいしいパスタ作ったお前
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朝比奈さんは本当に迎えに来てくれた。
昼にもLINEをして、彼は「病院内のカフェでサンドイッチを食べた」と返してきた。
有給休暇を取っているし、同僚と顔を合わせるのが気まずいということで、朝のムーンバックスの角で待ち合わせをすることになった。
夕暮れの街は、オレンジ色の街灯がぼんやりと灯りはじめ、人々の足音が石畳に響いていた。
約束の場所に立つ彼の姿は、夕陽が似合う。
すらりとした長身に、風に揺れる暗めの茶髪。買い物袋を片手に提げていてもなお、雑誌の一頁のようで、通りすがりの人が思わず振り返るのも無理はない。
そんな彼が俺を見つけて微笑み、「お疲れ様です」と声をかけてくれる――その瞬間の優越感たるや、世界を征服した気分だ。
生きててよかった、と思った。
アパートに着くと、朝比奈さんは玄関に買い物袋を置き、「野々宮さん、お腹減りました?」と笑顔で尋ねてきた。
キッチンに立つ姿を見ているだけで、胸が高鳴る。なんでこんなに素敵な人が、俺の部屋なんかにいるんだ。
彼はレタス、トマト、きゅうりを手際よく切り揃え、色鮮やかなサラダを仕上げた。
ガスコンロの火が点き、パスタを茹でる音と、鶏肉を焼く香ばしい匂いが部屋を満たしていく。コンソメとトマト缶で作るソースの香りが、アパートの空気ごと柔らかくした。
「俺、パスタなんてレトルトでしか作ったことないよ」と呟くと、朝比奈さんは振り返って、いたずらっぽく笑った。
「野々宮さんに料理できるアピールしてるだけですよ?」
――ガーン。なんだこの人。そんな可愛いことを言うなんて。心臓がドクンと跳ねた。
……待てよ。
俺、この人に影響されて成人後発現型オメガを発症しかけているんじゃなかったか?
もしΩになったら、公務員の仕事も、この部屋での生活も危うくなる。立地も広さも気に入っているこのアパートを手放すことになるかもしれない。
それでも、彼の存在は、この数日であまりにも大きくなっていた。
俺の心配をよそに、朝比奈さんはパスタとサラダを木目の小さなダイニングテーブルに並べてくれていた。
窓の外では夕暮れが夜に変わり、遠くの街の灯がちらちらと瞬く。
テレビをつけると、夕方のニュースが流れはじめる。
「アメプラあるけど、何か見る?」
俺が尋ねると、彼は「んー」と首を傾げ、適当なトーク番組にチャンネルを合わせた。
軽快なBGMが流れ、部屋は一気に“ふたりの空間”になっていく。
「作ってくれてありがとう!」
思わずがっついた。パスタは信じられないほど美味しかった。
トマトの酸味と鶏肉の旨味が絶妙に絡み合い、シンプルなのに奥深い味。サラダのシャキッとした食感も最高。
――朝比奈さん、結婚してくれ。
いや、料理してくれるからじゃない。俺が毎日作ったっていい。
皿洗いと片付けを率先して済ませ、タオルで手を拭きながら振り返ると、朝比奈さんはソファでもスマホを手にしてくつろいでいた。
人をダメにするソファ(類似品)に体を預ける姿は、少しいつもより若く見える。
長い脚を投げ出し、スマホの光に照らされた横顔は、やっぱり整っている。
俺の視線に気づいた朝比奈さんが、ソファの隣をポンポンと叩く。
「早く、早く!」
少し乱れた前髪が、普段の整った彼に人間らしい可愛さを添えている。
隣に腰を下ろすと、彼はガバッと抱きついてきた。
「片付け、ありがとうございます!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、朝比奈さんの香りがふわりと鼻をくすぐる。
大型犬にじゃれつかれているような温かさと重み。反射的に、俺の手は彼の頭に伸び、さらりとした髪を撫でてしまった。
朝比奈さんは一瞬驚いた顔をしたが、頬を赤らめ、さらに抱き寄せてくる。
――可愛い。
だけど、なんか、こう、変な気分になってきた。
スキンシップに慣れていない俺、野々宮譲。
こんな親愛の瞬間に欲を感じるなんて、最低だ。
……そう思っていたら、朝比奈さんの手が俺の腰からゆっくりと滑り、鼠径部を撫ではじめた。
熱を帯びた掌が、ためらいなく中心ーーー俺の慎ましきもの(もう全然慎ましくはない)をなぞる。
頬を染め、にやっと笑みを浮かべた彼が、まっすぐ俺を見つめて言葉もなく問いかけてくる。
狭い部屋に響くのは、テレビの音と、俺の心臓の鼓動だけだった。
昼にもLINEをして、彼は「病院内のカフェでサンドイッチを食べた」と返してきた。
有給休暇を取っているし、同僚と顔を合わせるのが気まずいということで、朝のムーンバックスの角で待ち合わせをすることになった。
夕暮れの街は、オレンジ色の街灯がぼんやりと灯りはじめ、人々の足音が石畳に響いていた。
約束の場所に立つ彼の姿は、夕陽が似合う。
すらりとした長身に、風に揺れる暗めの茶髪。買い物袋を片手に提げていてもなお、雑誌の一頁のようで、通りすがりの人が思わず振り返るのも無理はない。
そんな彼が俺を見つけて微笑み、「お疲れ様です」と声をかけてくれる――その瞬間の優越感たるや、世界を征服した気分だ。
生きててよかった、と思った。
アパートに着くと、朝比奈さんは玄関に買い物袋を置き、「野々宮さん、お腹減りました?」と笑顔で尋ねてきた。
キッチンに立つ姿を見ているだけで、胸が高鳴る。なんでこんなに素敵な人が、俺の部屋なんかにいるんだ。
彼はレタス、トマト、きゅうりを手際よく切り揃え、色鮮やかなサラダを仕上げた。
ガスコンロの火が点き、パスタを茹でる音と、鶏肉を焼く香ばしい匂いが部屋を満たしていく。コンソメとトマト缶で作るソースの香りが、アパートの空気ごと柔らかくした。
「俺、パスタなんてレトルトでしか作ったことないよ」と呟くと、朝比奈さんは振り返って、いたずらっぽく笑った。
「野々宮さんに料理できるアピールしてるだけですよ?」
――ガーン。なんだこの人。そんな可愛いことを言うなんて。心臓がドクンと跳ねた。
……待てよ。
俺、この人に影響されて成人後発現型オメガを発症しかけているんじゃなかったか?
もしΩになったら、公務員の仕事も、この部屋での生活も危うくなる。立地も広さも気に入っているこのアパートを手放すことになるかもしれない。
それでも、彼の存在は、この数日であまりにも大きくなっていた。
俺の心配をよそに、朝比奈さんはパスタとサラダを木目の小さなダイニングテーブルに並べてくれていた。
窓の外では夕暮れが夜に変わり、遠くの街の灯がちらちらと瞬く。
テレビをつけると、夕方のニュースが流れはじめる。
「アメプラあるけど、何か見る?」
俺が尋ねると、彼は「んー」と首を傾げ、適当なトーク番組にチャンネルを合わせた。
軽快なBGMが流れ、部屋は一気に“ふたりの空間”になっていく。
「作ってくれてありがとう!」
思わずがっついた。パスタは信じられないほど美味しかった。
トマトの酸味と鶏肉の旨味が絶妙に絡み合い、シンプルなのに奥深い味。サラダのシャキッとした食感も最高。
――朝比奈さん、結婚してくれ。
いや、料理してくれるからじゃない。俺が毎日作ったっていい。
皿洗いと片付けを率先して済ませ、タオルで手を拭きながら振り返ると、朝比奈さんはソファでもスマホを手にしてくつろいでいた。
人をダメにするソファ(類似品)に体を預ける姿は、少しいつもより若く見える。
長い脚を投げ出し、スマホの光に照らされた横顔は、やっぱり整っている。
俺の視線に気づいた朝比奈さんが、ソファの隣をポンポンと叩く。
「早く、早く!」
少し乱れた前髪が、普段の整った彼に人間らしい可愛さを添えている。
隣に腰を下ろすと、彼はガバッと抱きついてきた。
「片付け、ありがとうございます!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、朝比奈さんの香りがふわりと鼻をくすぐる。
大型犬にじゃれつかれているような温かさと重み。反射的に、俺の手は彼の頭に伸び、さらりとした髪を撫でてしまった。
朝比奈さんは一瞬驚いた顔をしたが、頬を赤らめ、さらに抱き寄せてくる。
――可愛い。
だけど、なんか、こう、変な気分になってきた。
スキンシップに慣れていない俺、野々宮譲。
こんな親愛の瞬間に欲を感じるなんて、最低だ。
……そう思っていたら、朝比奈さんの手が俺の腰からゆっくりと滑り、鼠径部を撫ではじめた。
熱を帯びた掌が、ためらいなく中心ーーー俺の慎ましきもの(もう全然慎ましくはない)をなぞる。
頬を染め、にやっと笑みを浮かべた彼が、まっすぐ俺を見つめて言葉もなく問いかけてくる。
狭い部屋に響くのは、テレビの音と、俺の心臓の鼓動だけだった。
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