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25話
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星祭の余韻が残る早朝、王都の街並みはまだ深い眠りの中にあった。
ガイアスの屋敷の前に用意された馬車には、往路よりも少しだけ増えた荷物が積み込まれている。そのほとんどは、ガイアスが研究の役に立つだろうとリィエルに贈った、希少な魔導具や文房具の類だった。
「……結局、インベントリが大幅に拡張されてしまったな。これではスローライフという名の軽量化設定が台なしだ」
リィエルは馬車の座席に深く腰掛け、窓の外を眺めた。
見送りに出てきた使用人たちは、今やリィエルを伝説の賢者として崇拝しており、別れを惜しんで涙ぐんでいる者さえいる。
「いいじゃないか。たまには贅沢な外部拡張も必要だ。……リィエル、またすぐに会いに行く。次はお前の好きな、あの森の茶葉を補充するタイミングに合わせてな」
御者台から振り返ったガイアスが、朝日を背に受けて笑う。
彼はリィエルが森に帰ることを引き留めはしなかった。彼があの場所をどれほど大切にしているか、この数日間で誰よりも理解したからだ。
「ええ。セキュリティレベルを上げて待っています。……シロ、お前もいつまで寝ているんだ。もう出発だぞ」
「きゅう……」
シロは王都のふかふかな生活に馴染みすぎたのか、クッションの間に埋もれて眠そうな声を上げた。だが、馬車がゆっくりと動き出し、王都の石畳を叩くリズムが始まると、名残惜しそうに窓から遠ざかる城門を見つめていた。
帰路は往路よりもさらに穏やかだった。
リィエルは車中で、王都で手に入れた新しいインクの成分を分析したり、ガイアスが時折話しかけてくる王都の古い伝承に耳を傾けたりしながら過ごした。
数日が経ち、馬車の窓から見える景色が、開けた草原から次第に深い緑の壁へと変わっていく。
「……戻ってきましたね。我が家の魔力波長を検知しました」
懐かしい、静謐で高密度な魔力の気配。
境界線を越えた瞬間、リィエルの全身を包んでいた緊張がふっと解け、本来のパーソナリティが再起動していくのが分かった。
だが、馬車がログハウスの前に到着したとき、リィエルは違和感に眉をひそめた。
彼が構築した鉄壁の自動防衛システムが、なぜか非戦闘モードのまま、奇妙なノイズを発していたからだ。
「……おかしいな。侵入者ログは記録されていないが、庭の魔力回路が不規則に点滅しているぞ」
リィエルが馬車を降り、庭のハーブ園へと足を踏み入れると、そこには金色の光の粉を撒き散らしながら、右往左往している精霊の姿があった。
「ああ、リィエル! お帰り、やっと戻ってきたね。大変だよ、君がいない間に、とんでもないものが君のポストにチェックインしてしまったんだ!」
「長老。落ち着いてください。論理的な説明をしてください。とんでもないものとは?」
精霊が指さした先。そこは、リィエルが魔導郵便を受け取るために設置していた、木製のポストだった。
その中からは、眩いばかりの純白の光が漏れ出し、時折ぷるぷるという奇妙な振動音が響いている。
「……リィエル、これはお前の知り合いか? 何やら、かなり高エネルギーな生命反応を感じるが」
剣の柄に手をかけ、警戒しながら近寄るガイアス。
リィエルはおそるおそるポストの蓋を開けた。
中にいたのは、手のひらサイズの、半透明で白く輝くスライムのような不思議な生き物だった。それはリィエルの顔を見るなり、嬉しそうに全身を震わせ、ポストから飛び出して彼の肩へと着地した。
「……新種のアプリケーションか? いや、これは……」
王都から帰ったリィエルを待っていたのは、静寂ではなく、新たな未知の居候だった。
ガイアスの屋敷の前に用意された馬車には、往路よりも少しだけ増えた荷物が積み込まれている。そのほとんどは、ガイアスが研究の役に立つだろうとリィエルに贈った、希少な魔導具や文房具の類だった。
「……結局、インベントリが大幅に拡張されてしまったな。これではスローライフという名の軽量化設定が台なしだ」
リィエルは馬車の座席に深く腰掛け、窓の外を眺めた。
見送りに出てきた使用人たちは、今やリィエルを伝説の賢者として崇拝しており、別れを惜しんで涙ぐんでいる者さえいる。
「いいじゃないか。たまには贅沢な外部拡張も必要だ。……リィエル、またすぐに会いに行く。次はお前の好きな、あの森の茶葉を補充するタイミングに合わせてな」
御者台から振り返ったガイアスが、朝日を背に受けて笑う。
彼はリィエルが森に帰ることを引き留めはしなかった。彼があの場所をどれほど大切にしているか、この数日間で誰よりも理解したからだ。
「ええ。セキュリティレベルを上げて待っています。……シロ、お前もいつまで寝ているんだ。もう出発だぞ」
「きゅう……」
シロは王都のふかふかな生活に馴染みすぎたのか、クッションの間に埋もれて眠そうな声を上げた。だが、馬車がゆっくりと動き出し、王都の石畳を叩くリズムが始まると、名残惜しそうに窓から遠ざかる城門を見つめていた。
帰路は往路よりもさらに穏やかだった。
リィエルは車中で、王都で手に入れた新しいインクの成分を分析したり、ガイアスが時折話しかけてくる王都の古い伝承に耳を傾けたりしながら過ごした。
数日が経ち、馬車の窓から見える景色が、開けた草原から次第に深い緑の壁へと変わっていく。
「……戻ってきましたね。我が家の魔力波長を検知しました」
懐かしい、静謐で高密度な魔力の気配。
境界線を越えた瞬間、リィエルの全身を包んでいた緊張がふっと解け、本来のパーソナリティが再起動していくのが分かった。
だが、馬車がログハウスの前に到着したとき、リィエルは違和感に眉をひそめた。
彼が構築した鉄壁の自動防衛システムが、なぜか非戦闘モードのまま、奇妙なノイズを発していたからだ。
「……おかしいな。侵入者ログは記録されていないが、庭の魔力回路が不規則に点滅しているぞ」
リィエルが馬車を降り、庭のハーブ園へと足を踏み入れると、そこには金色の光の粉を撒き散らしながら、右往左往している精霊の姿があった。
「ああ、リィエル! お帰り、やっと戻ってきたね。大変だよ、君がいない間に、とんでもないものが君のポストにチェックインしてしまったんだ!」
「長老。落ち着いてください。論理的な説明をしてください。とんでもないものとは?」
精霊が指さした先。そこは、リィエルが魔導郵便を受け取るために設置していた、木製のポストだった。
その中からは、眩いばかりの純白の光が漏れ出し、時折ぷるぷるという奇妙な振動音が響いている。
「……リィエル、これはお前の知り合いか? 何やら、かなり高エネルギーな生命反応を感じるが」
剣の柄に手をかけ、警戒しながら近寄るガイアス。
リィエルはおそるおそるポストの蓋を開けた。
中にいたのは、手のひらサイズの、半透明で白く輝くスライムのような不思議な生き物だった。それはリィエルの顔を見るなり、嬉しそうに全身を震わせ、ポストから飛び出して彼の肩へと着地した。
「……新種のアプリケーションか? いや、これは……」
王都から帰ったリィエルを待っていたのは、静寂ではなく、新たな未知の居候だった。
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