お人好しな新米冒険者は最強パーティに愛で尽くされる~行き倒れ戦士と毒舌魔導師、そして大型犬な後継者に囲まれて~

たら昆布

文字の大きさ
11 / 34

11話

しおりを挟む
「……ふざけるな。誰が貴様のような男を仲間にすると言った」

聖都のギルドへ向かう道すがら、ガウルの低く地響きのような声が何度も繰り返されていた。
その腕はレオの細い腰をがっちりと抱き込み、一歩たりともシリウスを近づけさせまいとする鉄壁の構えだ。
レオはガウルの逞しい腕の中で、真っ赤になりながら身を縮めている。

「やれやれ、耳に筋肉でも詰まっているのかい? 僕はレオの『管理』が必要だと言っているんだ。彼の中に眠る至純の魔力は、君のような野蛮な男が扱いきれる代物じゃない」

シリウスは優雅な足取りで二人の数歩後ろをついてくる。
銀髪が陽光に透け、道行く人々が思わず振り返るほどの美貌。
だがその瞳は、獲物であるレオの後ろ姿だけを、執拗なまでの熱量で見つめていた。

「レオ、君もそう思うだろう? あんな岩石のような男に抱きしめられていては、君の繊細な魔力の回路が濁ってしまう」

「え、あ……。そんな、濁るなんてことは……っ」

シリウスが不意に距離を詰め、レオの耳元で滑らかな声を落とした。
ひんやりとした、けれどどこか芳醇な香りを纏った吐息。
レオはゾクゾクとする戦慄に、思わずガウルの胸板に顔を埋めた。

「こら、レオを弄ぶな! ガウルも、そんなに強く抱きしめられたら歩きにくいよ……っ」

「……離さん。貴様に隙を見せれば、この小僧は一瞬で連れ去られる」

ガウルの独占欲は、シリウスという強敵が現れたことで限界まで高まっていた。
ギルドの重厚な扉を開けてもなお、その緊張感は解けない。

聖都のギルドは、レオがいた辺境の街とは比べものにならないほど豪華だった。
大理石の床に、高い天井。
受付に並ぶ冒険者たちも皆、洗練された装備を身につけている。
そこに、岩のような巨漢の戦士と、お人好しそうな少年、そして王立魔導院の法衣を纏った天才魔導師が現れたのだ。
一瞬にして、場が凍り付いたような静寂に包まれる。

「……あ、あの、新規パーティの登録……というか、メンバーの追加をお願いしたいのですが」

レオがおずおずと受付嬢にプレートを差し出した。
受付嬢はシリウスの姿を認めると、椅子から転げ落ちんばかりに驚愕した。

「シ、シリウス・ヴァレンティヌス様!? なぜ、王立魔導院の主席調査官様がこのような場所に……」

「仕事だよ。……今日から僕は、この少年のパーティに同行する。手続きを」

シリウスが冷淡な手付きで自身の金色の身分証を差し出す。
ガウルがその手を乱暴に弾こうとしたが、シリウスはそれを嘲笑うようにかわした。

「勝手に決めるな! 俺たちはこいつを認めていない!」

「ガウル、声が大きいよ……っ。でも、シリウスさん、本当にいいんですか? 僕たちみたいな新米と一緒にいたら、あなたのキャリアに傷が……」

レオが心配そうにシリウスを見上げる。
その潤んだ琥珀色の瞳に見つめられ、シリウスの理性が微かに揺らぐ。
彼はレオの顎をそっと指先で持ち上げ、逃げ場を塞ぐように視線を絡めた。

「君のためなら、地位も名誉もゴミ同然だ。……ねえ、レオ。僕を拒むというのなら、僕は職権を乱用してでも、君を研究所に監禁しなければならなくなる。……それでもいいのかな?」

「か、監禁……!?」

レオが恐怖で肩を震わせると、シリウスは満足げに目を細め、その震える唇を親指でなぞった。
柔らかい感触。シリウスの瞳に、暗い情欲が灯る。

「……貴様、死にたいか」

ガウルが大剣の柄に手をかけ、ギルド内に凄まじい殺気が充満した。
受付嬢は泡を吹いて倒れそうになり、周囲の冒険者たちは一斉に逃げ出していく。

「ガウル、待って! 分かった、分かったから! シリウスさん、一緒に来てください。だから街を壊さないで……!」

レオが必死にガウルの腕に縋り付くと、ガウルは苦渋の表情で剣から手を離した。
レオの頼みを断ることだけは、彼にはできなかった。

「……決まりだね。これからよろしく、僕の可愛いレオ」

シリウスはレオの手を取り、指の付け根に深く、跡を残すようなキスを落とした。
吸いつくような熱。
レオは全身が火照るのを感じ、ガウルとシリウスという、正反対の熱量を持った二人の男に挟まれている現実を、改めて突きつけられた。

「(どうしよう……。二人とも、目が全然笑ってない……)」

こうして、前代未聞の三人パーティが結成された。
最強の盾と、最強の魔法。
そのどちらからも、逃げられないほど深い愛を向けられながら、レオの冒険はさらなる混迷へと突き進んでいく。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった

近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。 それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。 初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息

悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

処理中です...