お人好しな新米冒険者は最強パーティに愛で尽くされる~行き倒れ戦士と毒舌魔導師、そして大型犬な後継者に囲まれて~

たら昆布

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12話

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「……いいかい、レオ。魔力とは君の血液と同じだ。ただ流すのではなく、自分の意志でその『熱』を制御しなければならない」

聖都の宿屋の一室。シリウスはレオの背後に立ち、教鞭を執る教師のような、落ち着いた、けれどどこか熱を孕んだ声で語りかけた。

レオは机に向かい、シリウスが用意した古めかしい魔導書を広げている。
だが、その内容は全く頭に入ってこなかった。

「あの、シリウスさん……。教え方はすごく分かりやすいんですけど、その……距離が近くないですか?」

レオが戸惑いながら振り返ると、すぐそこにシリウスの端正な顔があった。
鼻先が触れそうなほどの距離。
シリウスの切れ長の青い瞳が、レオの琥珀色の瞳をじっと見据えている。

「何を言うんだ。魔力の流れを微細に感知するには、この距離でなければ正確な指導はできない。……それとも、僕に触れられるのは嫌かな?」

シリウスはわざとらしく眉を下げ、レオの耳元でしなやかに囁いた。
ひんやりとした吐息が耳朶を掠め、レオの肩がびくんと震える。
その様子を部屋の隅で見ていたガウルが、椅子を乱暴に鳴らして立ち上がった。

「貴様……指導と言いつつ、さっきからレオの体に触れてばかりではないか。いい加減にしろ」

ガウルの低い声には、隠しきれない怒りと嫉妬が混じっている。
大剣こそ置いてあるが、その巨躯から放たれる威圧感は部屋中の空気を重く沈ませていた。

「やれやれ、これだから野蛮な戦士は困る。魔術の深淵を知らぬ者に、僕の教育方針を口出しされたくないね。……さあレオ、集中して。僕の手の動きをなぞるんだ」

シリウスはガウルの言葉を無視し、レオの両手を後ろから包み込むようにして重ねた。
シリウスの指先は細く長いが、その掌には魔導師特有の、鋭利な知性を感じさせる確かな力強さがある。

レオの細い指の間に、シリウスの指が一本ずつ滑り込んでいく。
指と指が絡まり、密着した肌からシリウスの涼やかな魔力がじわりと流れ込んできた。

「ひゃっ……あ、魔力が……」

「……そう。僕の魔力を受け入れて。君の『器』を満たしていく感覚を、しっかりと感じるんだ」

シリウスはレオの背中に自分の胸板をぴたりと押し当てた。
法衣越しでも分かる、しなやかな筋肉の質感。
レオの体は、背後からシリウスに完全に抱き込まれる形になっていた。

シリウスの片手がレオの腰に回り、無意識にその細い線をなぞる。
レオの心臓は、壊れた時計のように不規則な音を立てていた。
ガウルに見守られながら、別の男にこんな風に触れられる背徳感に、頭がぼうっとしてくる。

「……んっ……シリウス、さん……。手が、変なところに……」

「変なところ? ああ、ここは君の魔力の結節点(ゲート)だからね。少し刺激して、通りを良くしてあげているだけだよ」

シリウスは嘘をついた。
彼が触れているのは、レオの太ももの付け根に近い、敏感な場所だ。
シリウスの瞳には、レオの反応を楽しむような、サディスティックで情熱的な光が宿っている。

「――そこまでだ、この変態魔導師め!」

ついに限界に達したガウルが、二人の間に割って入った。
ガウルはレオの腕を強引に引き、自分の逞しい胸の中にレオを回収する。
岩のような筋肉の熱。ガウルの激しい鼓動が、レオの背中にダイレクトに伝わってきた。

「レオ、もうこんなレッスンは終わりだ。こいつは教えるふりをして、あんたを味見しているだけだぞ」

「味見? 人聞きの悪いことを。僕は君のような粗野な男とは違う。……レオ、もっと『深い』レッスンを続けようか。次は僕の部屋で、二人きりで……」

シリウスが妖しく微笑み、レオの指先に唇を寄せた。
ガウルはそれを阻止するようにレオの腰を強く抱き寄せ、シリウスに向けて剥き出しの牙を剥く。

「二人とも、やめてってば……! 僕はただ、魔術を覚えたかっただけなのに……っ」

レオは赤くなった顔をガウルの胸に押し当て、混乱した頭を落ち着かせようと必死だった。
ガウルの猛々しい独占欲と、シリウスの粘りつくような知的な情欲。
二つの巨大な『愛』に挟まれ、レオの平穏な日常は、甘く激しい音を立てて壊れ始めていた。

「(……僕、これからどうなっちゃうんだろう)」

レオの小さな呟きは、二人の男の熱い視線にかき消されていった。
聖都の夜はまだ始まったばかり。
レオを巡る争奪戦は、場所を変え、形を変え、さらに過激さを増していく。
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