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8話
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「リト殿。今夜は嵐になるという予報が出ています。……非常に危険です。私の騎士としての直感が、貴殿を一人にしてはならないと警鐘を鳴らしています」
「……さっきまで雲一つない快晴だったんだけど。ていうか、ゼノさん、その手に持ってる大きな荷物は何?」
夕暮れ時、僕のログハウスの前に現れたゼノは、どこからどう見ても「今からここに住みます」という気満々の大荷物を抱えていた。
「これは、万が一に備えたサバイバルキット……及び、私のパジャマ代わりの儀礼用制服です。あと、リト殿の快眠をサポートするための最高級アロマキャンドルと、夜食の最高級生ハム……」
「要するに、泊まりたいだけでしょ。いいですよ、嵐(仮)が怖いなら客間を使ってください」
「……っ! 許可をいただけるなんて……! 感謝します、リト殿! 今夜は朝まで、私の武勇伝と、貴殿がいかに素晴らしいかを語り明かしましょう!」
ゼノは目を輝かせ、鼻歌を歌いながらログハウスに上がり込んできた。
一方の僕は、すでに眠気の限界だった。
今日は魔導師団で、新人魔導師たちが暴走させた「巨大ひよこ」の回収作業に追われていたのだ。もふもふだったけど、精神的な疲労がすごい。
「ゼノさん、勝手にくつろいでてくださいね。僕はもう寝ますから」
「えっ!? まだ十九時ですよ!? これからメインディッシュを焼き、ワインを開け、二人の親睦を深めるゴールデンタイムが――」
「おやすみなさい」
僕はゼノの言葉をシャットアウトし、寝室へ向かった。
寝室には、僕の最強の癒やし、ココとグレートドッグの「もふもふコンビ」がすでにスタンバイしている。
「クゥン」
ココが僕の枕元に陣取り、グレートドッグが足元で丸くなる。
最高だ。この包囲網こそが、僕の求めていた異世界スローライフの完成形だ。
僕はベッドに倒れ込み、意識を手放した。
……わずか三秒。社畜時代に培った「どこでも秒で寝るスキル」が火を噴いた。
一方、リビングに取り残されたゼノは――。
「……リト殿? 寝室の扉、開いていますよ? 寂しくなったら、いつでも私を呼んで――」
ゼノはおずおずと寝室の様子を伺った。
そこには、自分を呼ぶどころか、魔獣たちに囲まれて「むにゃむにゃ」と幸せそうに寝息を立てるリトの姿があった。
「…………」
ゼノは絶望した。
彼は今日、この日のために、騎士団の厳しい訓練の合間を縫って「女性向け恋愛小説・王道シチュエーション百選」を読破してきたのだ。
『眠れない夜に寄り添う騎士』『寝顔を見つめて思わずキス』『うなされている彼を抱きしめる』……。
数々のプランが、リトの「爆睡」という物理攻撃によってすべて粉砕された。
「リト殿……せめて、せめて少しだけでも私の存在を意識して……」
ゼノはベッドの脇に膝をつき、リトの手をそっと握ろうとした。
だが、その瞬間。
「グルルルル……」
足元で寝ていたグレートドッグが、鋭い牙を見せてゼノを睨みつけた。
さらにはココが、寝たふりをしながらゼノの指先を甘噛み(という名の全力攻撃)してきたのだ。
「……貴様ら。主の寝顔を独占するとは、いい度胸だ。どけ。そこは私の定位置になる予定の場所だ」
「ワフッ!(お前みたいな不審者に、ご主人様は渡さないぜ)」
夜の寝室で、この国の最強騎士と伝説の魔獣(ポメラニアン)による、音を立ててはいけない極限の静かな戦いが勃発した。
ゼノが布団をめくろうとすれば、ココが吠えない程度に唸り、グレートドッグがその巨体でゼノをベッドから押し出す。
結局、ゼノは一晩中、ベッドの横の床に正座したまま、リトと魔獣たちが仲良く絡まり合って寝ている様子を、血の涙を流しながら見守ることになったのである。
翌朝。
「……あー、よく寝た。おはよう、ゼノさん」
スッキリと目覚めた僕がリビングに行くと、そこには真っ白に燃え尽きたような顔で、床に座り込んだままのゼノがいた。
「おはよう、ございます……リト殿……。……愛しています……(低音)」
「元気ないですね。やっぱり嵐(仮)が怖かったんですか? 聖騎士なのに可愛いところあるなぁ」
「…………もう、いっそ殺してください……」
ゼノが力なく項垂れる横で、ココとグレートドッグが勝ち誇ったように尻尾を振っていた。
僕の寝室の平和は、今日ももふもふ達によって守られたのである。
「……さっきまで雲一つない快晴だったんだけど。ていうか、ゼノさん、その手に持ってる大きな荷物は何?」
夕暮れ時、僕のログハウスの前に現れたゼノは、どこからどう見ても「今からここに住みます」という気満々の大荷物を抱えていた。
「これは、万が一に備えたサバイバルキット……及び、私のパジャマ代わりの儀礼用制服です。あと、リト殿の快眠をサポートするための最高級アロマキャンドルと、夜食の最高級生ハム……」
「要するに、泊まりたいだけでしょ。いいですよ、嵐(仮)が怖いなら客間を使ってください」
「……っ! 許可をいただけるなんて……! 感謝します、リト殿! 今夜は朝まで、私の武勇伝と、貴殿がいかに素晴らしいかを語り明かしましょう!」
ゼノは目を輝かせ、鼻歌を歌いながらログハウスに上がり込んできた。
一方の僕は、すでに眠気の限界だった。
今日は魔導師団で、新人魔導師たちが暴走させた「巨大ひよこ」の回収作業に追われていたのだ。もふもふだったけど、精神的な疲労がすごい。
「ゼノさん、勝手にくつろいでてくださいね。僕はもう寝ますから」
「えっ!? まだ十九時ですよ!? これからメインディッシュを焼き、ワインを開け、二人の親睦を深めるゴールデンタイムが――」
「おやすみなさい」
僕はゼノの言葉をシャットアウトし、寝室へ向かった。
寝室には、僕の最強の癒やし、ココとグレートドッグの「もふもふコンビ」がすでにスタンバイしている。
「クゥン」
ココが僕の枕元に陣取り、グレートドッグが足元で丸くなる。
最高だ。この包囲網こそが、僕の求めていた異世界スローライフの完成形だ。
僕はベッドに倒れ込み、意識を手放した。
……わずか三秒。社畜時代に培った「どこでも秒で寝るスキル」が火を噴いた。
一方、リビングに取り残されたゼノは――。
「……リト殿? 寝室の扉、開いていますよ? 寂しくなったら、いつでも私を呼んで――」
ゼノはおずおずと寝室の様子を伺った。
そこには、自分を呼ぶどころか、魔獣たちに囲まれて「むにゃむにゃ」と幸せそうに寝息を立てるリトの姿があった。
「…………」
ゼノは絶望した。
彼は今日、この日のために、騎士団の厳しい訓練の合間を縫って「女性向け恋愛小説・王道シチュエーション百選」を読破してきたのだ。
『眠れない夜に寄り添う騎士』『寝顔を見つめて思わずキス』『うなされている彼を抱きしめる』……。
数々のプランが、リトの「爆睡」という物理攻撃によってすべて粉砕された。
「リト殿……せめて、せめて少しだけでも私の存在を意識して……」
ゼノはベッドの脇に膝をつき、リトの手をそっと握ろうとした。
だが、その瞬間。
「グルルルル……」
足元で寝ていたグレートドッグが、鋭い牙を見せてゼノを睨みつけた。
さらにはココが、寝たふりをしながらゼノの指先を甘噛み(という名の全力攻撃)してきたのだ。
「……貴様ら。主の寝顔を独占するとは、いい度胸だ。どけ。そこは私の定位置になる予定の場所だ」
「ワフッ!(お前みたいな不審者に、ご主人様は渡さないぜ)」
夜の寝室で、この国の最強騎士と伝説の魔獣(ポメラニアン)による、音を立ててはいけない極限の静かな戦いが勃発した。
ゼノが布団をめくろうとすれば、ココが吠えない程度に唸り、グレートドッグがその巨体でゼノをベッドから押し出す。
結局、ゼノは一晩中、ベッドの横の床に正座したまま、リトと魔獣たちが仲良く絡まり合って寝ている様子を、血の涙を流しながら見守ることになったのである。
翌朝。
「……あー、よく寝た。おはよう、ゼノさん」
スッキリと目覚めた僕がリビングに行くと、そこには真っ白に燃え尽きたような顔で、床に座り込んだままのゼノがいた。
「おはよう、ございます……リト殿……。……愛しています……(低音)」
「元気ないですね。やっぱり嵐(仮)が怖かったんですか? 聖騎士なのに可愛いところあるなぁ」
「…………もう、いっそ殺してください……」
ゼノが力なく項垂れる横で、ココとグレートドッグが勝ち誇ったように尻尾を振っていた。
僕の寝室の平和は、今日ももふもふ達によって守られたのである。
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