7 / 145
偽りのオメガ
しおりを挟む
『いい? 渉は絶対にあの人の血を引くアルファなの。こんなに頭が良くてなんでもできるんだから、オメガのはずがない。優秀なアルファなら、必ずあの人が私たちを迎えに来る。だから一緒に待ってましょう。一緒に暮らし始めたら、ここに噛み痕をつけてもらうのよ』
(そっか。ボクはアルファなんだ! アルファだってショウメイされれば、さんにんでいっしょにくらせるんだ! それに、おとうさんとおなじイッキュウケンチクシになったら、ふたりともきっとよろこんでくれるよね!)
子供の頃、母は白い肌の首元を俺に見せながら、まるで呪文のように噛み痕の話を何度も俺に言い聞かせていた。
有名な建築士である父の愛人として俺を産んだ母は、本妻には子供がいなかったため、自分がいつか本妻として迎えられると信じて疑わなかった。
だが、俺が小学校高学年の頃、無理やり父に連れていかれ、第二次性診断を受けさせられた。
その結果、俺がオメガだと判明すると、父は母と俺をあっさり捨てた。
それまでは養育費も支払われていたらしいが、それも突然なくなり、あっという間に苦しい生活が始まった。
三食をまともにとることも難しい経済状況の中、母は俺のことを国にオメガだと届け出ず、自分の発情期抑制剤を俺に飲ませ始めた。
俺がオメガでないと周りに偽り続ければ、父が俺を認めて、迎えに来ると信じていたからだ。
『渉はアルファなの! 絶対に! だからあの人は、すぐ迎えに来るわ!私に噛み痕をつけるの!』
狂ったように毎日そう叫びながら、父に噛み痕をつけてもらえるのを楽しみにしていた母。
そんな母がある日突然、大金が入ったバックを持って帰ってきたかと思うと、首元には噛み痕がつけらていた。
『大丈夫。この大金があれば、あの人を助けられるらしいわ。だから、もう少しで迎えに来れるってあの人が言ってくれたの。愛してるわ、渉。大丈夫、あの人は必ず私たちを迎えに来てくれる。迎えに来るわ。必ず、迎えに……』
子供ながらに、母が父のために自分の体を差し出して、お金を手にしてきたのだと理解した。
そのとき母に感じた感情は、軽蔑よりも同情だった。
(裏切られたのに、またあの人に騙されて、それでも信じ続けるなんて……。俺がしっかりしないと。アルファとして生きて、母さんを守ってあげないと)
そう決意して、オメガだとバレる危険を避けるために友達も作らず、父以上の建築士になって見返してやろうと、俺は必死に勉強を続けた。
その結果、私立の大学付属高校に、学費免除の特待生として入学することができた。
だが、そこで偶然、父方のいとこである将人に出会った。
今まで家族は母のみで、同い年のいとこがいることさえ知らなかった俺は、兄弟ができたように思え、浮かれてしまった。
『俺、実はお前の……』
今思えば、なんて軽率な行動だったんだろうと思う。
あの時、自ら俺が将人のいとこであることを明かしてしまったことで、その後の俺の人生は大きく変わってしまった。
(そっか。ボクはアルファなんだ! アルファだってショウメイされれば、さんにんでいっしょにくらせるんだ! それに、おとうさんとおなじイッキュウケンチクシになったら、ふたりともきっとよろこんでくれるよね!)
子供の頃、母は白い肌の首元を俺に見せながら、まるで呪文のように噛み痕の話を何度も俺に言い聞かせていた。
有名な建築士である父の愛人として俺を産んだ母は、本妻には子供がいなかったため、自分がいつか本妻として迎えられると信じて疑わなかった。
だが、俺が小学校高学年の頃、無理やり父に連れていかれ、第二次性診断を受けさせられた。
その結果、俺がオメガだと判明すると、父は母と俺をあっさり捨てた。
それまでは養育費も支払われていたらしいが、それも突然なくなり、あっという間に苦しい生活が始まった。
三食をまともにとることも難しい経済状況の中、母は俺のことを国にオメガだと届け出ず、自分の発情期抑制剤を俺に飲ませ始めた。
俺がオメガでないと周りに偽り続ければ、父が俺を認めて、迎えに来ると信じていたからだ。
『渉はアルファなの! 絶対に! だからあの人は、すぐ迎えに来るわ!私に噛み痕をつけるの!』
狂ったように毎日そう叫びながら、父に噛み痕をつけてもらえるのを楽しみにしていた母。
そんな母がある日突然、大金が入ったバックを持って帰ってきたかと思うと、首元には噛み痕がつけらていた。
『大丈夫。この大金があれば、あの人を助けられるらしいわ。だから、もう少しで迎えに来れるってあの人が言ってくれたの。愛してるわ、渉。大丈夫、あの人は必ず私たちを迎えに来てくれる。迎えに来るわ。必ず、迎えに……』
子供ながらに、母が父のために自分の体を差し出して、お金を手にしてきたのだと理解した。
そのとき母に感じた感情は、軽蔑よりも同情だった。
(裏切られたのに、またあの人に騙されて、それでも信じ続けるなんて……。俺がしっかりしないと。アルファとして生きて、母さんを守ってあげないと)
そう決意して、オメガだとバレる危険を避けるために友達も作らず、父以上の建築士になって見返してやろうと、俺は必死に勉強を続けた。
その結果、私立の大学付属高校に、学費免除の特待生として入学することができた。
だが、そこで偶然、父方のいとこである将人に出会った。
今まで家族は母のみで、同い年のいとこがいることさえ知らなかった俺は、兄弟ができたように思え、浮かれてしまった。
『俺、実はお前の……』
今思えば、なんて軽率な行動だったんだろうと思う。
あの時、自ら俺が将人のいとこであることを明かしてしまったことで、その後の俺の人生は大きく変わってしまった。
47
あなたにおすすめの小説
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【BL】正統派イケメンな幼馴染が僕だけに見せる顔が可愛いすぎる!
ひつじのめい
BL
αとΩの同性の両親を持つ相模 楓(さがみ かえで)は母似の容姿の為にΩと思われる事が多々あるが、説明するのが面倒くさいと放置した事でクラスメイトにはΩと認識されていたが楓のバース性はαである。
そんな楓が初恋を拗らせている相手はαの両親を持つ2つ年上の小野寺 翠(おのでら すい)だった。
翠に恋人が出来た時に気持ちも告げずに、接触を一切絶ちながらも、好みのタイプを観察しながら自分磨きに勤しんでいたが、実際は好みのタイプとは正反対の風貌へと自ら進んでいた。
実は翠も幼い頃の女の子の様な可愛い楓に心を惹かれていたのだった。
楓がΩだと信じていた翠は、自分の本当のバース性がβだと気づかれるのを恐れ、楓とは正反対の相手と付き合っていたのだった。
楓がその事を知った時に、翠に対して粘着系の溺愛が始まるとは、この頃の翠は微塵も考えてはいなかった。
※作者の個人的な解釈が含まれています。
※Rシーンがある回はタイトルに☆が付きます。
ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー
紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。
立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。
※攻めと女性との絡みが何度かあります。
※展開かなり遅いと思います。
下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】
tii
BL
市役所勤めの野々宮は、どこにでもいる平凡なβ。
仕事は無難、恋愛は停滞、毎夜の癒しはゲームとストゼロだけ。
そんな日々に現れたのは、派遣職員として配属された青年――朝比奈。
背が高く、音大卒で、いっけん冷たそうに見えるが、
話せば驚くほど穏やかで優しい。
ただひとつ、彼は自己紹介のときに言った。
「僕、αなんです。迷惑をかけるかもしれませんが……」
軽く流されたその言葉が、
野々宮の中でじわりと残り続ける。
残業続きの夜、偶然居酒屋でふたりきりになり――
その指先が触れた瞬間、世界が音を立てて軋んだ。
「……野々宮さんって、本当にβなんですか?」
揺らぎ始めた日常、
“立場”と“本能”の境界が、静かに崩れていく。
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
【第13回BL小説大賞】にエントリーさせて頂きました!
まこxゆず の応援 ぜひよろしくお願いします!
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる