半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子

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第一章

わたしの女神様

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 セラと二人で水場へ行き、体を洗って着替えを済ませると、セラは見違えるほど可愛くなった。
 
「わあ! セラって、やっぱりすごく可愛いわ!」
「そ、そんなことないです。キアラさんの方が、ずっとずっと可愛いじゃないですか」
 
 セラは照れて真っ赤になってしまった。そんな姿も可愛かった。

 その後、みんなで昼食を食べた。
 セラは美味しいと喜んでいたが、すぐにお腹がいっぱいになってしまった。
 
 セラはすごく細いのに、あまり食べられないなんて心配になったけれど、今までまともに食事できていなかったのが原因らしい。だんだん食べられる量が増えるはずだと母が言っていたので、少し安心した。
 
「ゲホッ、ゴホッ」
「お母さん! 大丈夫!?」
 
 母が急に咳き込んだので、わたしは背中をさすってあげた。でも、その顔色はとても悪い。
 
「だ、大丈夫よ。昨日から、あまり眠れていなかったせいかしら。少しだけ、疲れたみたい。悪いけどお母さん、ベッドで休むわね」
「う、うん。手伝うわ」
 
 わたしは母を支えながら、ベッドへ連れていった。
 
「ごめんなさいね、セラ。せっかく来てくれたのに、わたしったら……」
「そ、そんな。気になさらないでください。わたしこそ、体調が良くないのにいきなり来て、ご迷惑をおかけしてしまって……」
 
 セラまで顔を真っ青にしているので、わたしは母に毛布をかけてあげると、セラに説明するため、一緒に外へ出た。
 
「セラ、言ってなくてごめんね。わたしのお母さんは、あんまり体が強くないの。それなのに、ゆっくりできる環境でもないし、今回はわたしがすごく心配をかけちゃったから……」
「……そうなんですね。あの、もしかして環境って、昨日言っていた事情というのが関係しているんですか?」
 
 セラはわたしが友達になってほしいと言った時に、事情があると伝えたことを覚えてくれていたようだ。
 わたしは、母が領主に目をつけられて仕事や家を追われ、ここへ住むことになった経緯を話した。
 
「そんな事が……。それならわたしが来たことは、やっぱりご迷惑だったのでは……」
「ううん、そんなことないわ! それに、わたしが狩りや採集へ行く時、セラがお母さんのそばにいてくれると心強いもの。クロはいつもわたしについてくるから、いつもお母さんを一人にしちゃうのが心配なの。もちろん、セラが嫌じゃなければだけど……」
「も、もちろんわたし、精一杯看病します! というか、わたしが怪我だけでなく病気も治せたらよかったんですけど、治癒魔法は病気には効果がないみたいで……」
 
 しゅん、とセラがうなだれた。

「そうなのね。でも、怪我を治せるだけでもすごいし、お母さんの怪我を治してくれてとっても助かったわ! それって、神様に愛された聖女だけが使える魔法なんでしょう?」
「あ……」
 
 セラが言い辛そうに視線を逸らす。
 
 ……何か、まずいことを言ってしまったかしら?
 
「わたしは、聖女ではありません。少しだけ神殿にいたんですが、獣人族だとわかると、聖女様を騙るなと言われて、追い出されてしまいましたから」
「ええっ、なにそれ!?」
 
 治癒魔法が使える人は聖者や聖女と呼ばれて神殿で大切に保護されるという話が、まさか獣人族だから当てはまらないというのだろうか。信じられない。どれだけ差別が好きなのだろう。
 
「セラは間違いなく聖女よ! だって、ひどい態度を取ってくる人たちにも、見返りもなく魔法をかけてあげていたじゃない。それに、お礼を言われなくたって怒らなかったわ。わたしだったら、絶対に怒ってるもの!」
 
 わたしがプンプン怒っていると、セラが少しポカンとしたあと、クスッと笑った。
 
「いいえ。わたしは……誰かに対して怒っても、意味がないと諦めているだけです。でも、キアラさんは本当に優しい人ですね。キアラさんの方がずっと、聖女みたいだと思います」
「うぇ!?」

 何を言うのだろう。わたしみたいに力が強くて狩りが得意で、頑丈な聖女なんているわけがない。正直、まるで正反対だと思う。
 
「本当ですよ。聖女どころか、わたしには女神様にさえ見えます。神様は今まで一度もわたしを助けてくれたことはなかったけれど、キアラさんはわたしを助けてくれました。だから、キアラさんはわたしの女神様なんです」
 
 大げさすぎる。
 わたしはヒクッと口端を引きつらせた。
 強く否定したいが、セラがキラキラした笑顔で話すので、わたしはつい言葉に詰まった。
 
 昨日からずっと一緒にいるけれど、セラはずっと申し訳なさそうな顔か、悲しそうな顔をしていたので、セラの笑顔が見られたのはとても嬉しい。
 
「……わたしはそんな大層な存在じゃないけど、別になんでもいいわ。セラが笑って、わたしの友達でいてくれるなら」
 
 そう言うと、セラはとても嬉しそうに笑ったのだった。
 
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