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第一章
クロと再会
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「クロ~! 元気にしてるー?」
《……キアラ?》
ドアからひょこっと顔を出すと、すぐ床に寝そべっているクロを見つけた。
クロに与えられたという部屋へ、メリアンとリリアンを連れてやってきた。ベッドや机などが何もない、カーペットだけが敷かれた部屋に、たくさんのプーニャ用のおもちゃが転がっている。
「うわぁ、すごい。これも全部、昨日用意したのよね?」
メリアンたちに訊くと、笑顔で頷かれた。ちょっと驚くくらい良くしてくれている。全く興味なさそうにただ寝そべっているクロは、このたくさんのおもちゃをきっと何も使わないだろうから、もったいないなとわたしは思ってしまったけれど。
「こんなにたくさん、すごいね。クロ!」
そう声をかけても、クロはパチパチと瞬きをするだけで、返事をしてくれない。
……あ。メリアンとリリアンがいるからかな? でも、一方的に話しかけるみたいにすれば、大丈夫よね!
そう思い、わたしは普通に話しかけることにした。
「ねぇクロ、わたしね、さっき初めてお湯がいっぱいのお風呂に入ったのよ。とっても気持ち良かったわ! あとね、この服と髪は、後ろにいるメリアンとリリアンがやってくれたの。すごいでしょ?」
そう言うと、クロがわたしの後ろへ視線を向けた。
「あ、二人はね、わたしの専属メイドなんだって」
そう紹介すると、クロはまたわたしに目を向けた。
「クロ?」
《いや、ちょっとびっくりしてた。すごく似合うよ、キアラ》
「ほんと? えへへ」
クロにも褒められて、わたしは大変満足である。
「……皇女殿下は、まるでそのプーニャと本当にお話しされているかのようですね?」
「へっ!?」
リリアンにそう言われて、わたしはギクリと身を強張らせた。
まずい。つい、普通に会話をしているかのような返事をしてしまった。
《……見た目は変わっても、やっぱりキアラはキアラだな》
……なにそれ。どういう意味!?
頬を膨らませてクロを見るが、クロはフイッと顔を横へそむけてしまった。こうなったら、わたし一人で、なんとか言い訳を考えなければならない。
「えーっと、その、わたしとクロはとっても仲良しだから、なんとなく思っていることがわかるのよ!」
「そうなのですか。素敵ですね!」
リリアンは無邪気な様子でそう言った。どうやら、無事に誤魔化せたらしい。
メリアンが何を考えているのかわからない笑顔で黙っているのが少し怖いけれど、気のせいだと思うことにして、わたしは話を逸らした。
「そういえば、二人とも。わたしのこと、皇女殿下って呼ぶんじゃなくて、名前で呼んでほしいんだけど、ダメかな?」
「えっ?」
「えっ?」
なぜか、二人にものすごく驚いた顔をされてしまった。でも、「皇女殿下」って長いし、かたくるしいから嫌だなと、ずっと思っていたのだ。
「ダメ?」
「ダメといいますか……、皇族の方が名前で呼ぶことを許可するのは、相手への信頼の証とされているのです。誰も彼もに許可していいものではありませんので……」
メリアンの言葉に、リリアンもコクコクと頷いた。
「そうなのね、わかったわ。じゃあ二人以外に言う時は気をつけるね!」
「えっ?」
「えっ?」
二人が声を揃えてキョトンとした顔をした。さすが双子なだけあって、息がピッタリだ。
「メリアンもリリアンも、昨日からとってもわたしに良くしてくれているのがわかるから、これからは名前で呼んでほしいんだけど、嫌?」
「こ、皇女殿下……! い、いえ、その……キアラ様。嫌だなんて、とんでもないです!」
「とても光栄です、キアラ様! ありがとうございます!」
「よかったぁ!」
せっかく専属メイドになってくれたのだから、二人とは仲良くしていきたいと思っている。
……かたくるしい呼び方じゃ、やっぱり距離ができちゃうもんね!
「クロには会えたから、次はセラに会いたいな。そういえば、セラもここに住めるのかな?」
「……セラ、ですか?」
「セラとは、どなたのことでしょう?」
二人が揃って首を傾げてしまった。どうやらセラのことは伝えられていないらしい。
「わたしたちと一緒に暮らしてた、獣人族の聖女よ! ルーシャスさんの家で別れたんだけど、セラは家族みたいなものなのよ」
「まぁ、そうだったのですね。情報不足で申し訳ございません!」
「すぐにお調べ致します。リリアン!」
「ええ。ここは任せたわ、メリアン!」
メリアンの指示により、リリアンが颯爽とどこかへ駆けていった。
……わたし、皇女になっちゃったみたいだけど、セラも今までみたいに一緒に暮らせるよね?
そう軽く考えていたわたしだったが、事はそう簡単にはいかなかった。
《……キアラ?》
ドアからひょこっと顔を出すと、すぐ床に寝そべっているクロを見つけた。
クロに与えられたという部屋へ、メリアンとリリアンを連れてやってきた。ベッドや机などが何もない、カーペットだけが敷かれた部屋に、たくさんのプーニャ用のおもちゃが転がっている。
「うわぁ、すごい。これも全部、昨日用意したのよね?」
メリアンたちに訊くと、笑顔で頷かれた。ちょっと驚くくらい良くしてくれている。全く興味なさそうにただ寝そべっているクロは、このたくさんのおもちゃをきっと何も使わないだろうから、もったいないなとわたしは思ってしまったけれど。
「こんなにたくさん、すごいね。クロ!」
そう声をかけても、クロはパチパチと瞬きをするだけで、返事をしてくれない。
……あ。メリアンとリリアンがいるからかな? でも、一方的に話しかけるみたいにすれば、大丈夫よね!
そう思い、わたしは普通に話しかけることにした。
「ねぇクロ、わたしね、さっき初めてお湯がいっぱいのお風呂に入ったのよ。とっても気持ち良かったわ! あとね、この服と髪は、後ろにいるメリアンとリリアンがやってくれたの。すごいでしょ?」
そう言うと、クロがわたしの後ろへ視線を向けた。
「あ、二人はね、わたしの専属メイドなんだって」
そう紹介すると、クロはまたわたしに目を向けた。
「クロ?」
《いや、ちょっとびっくりしてた。すごく似合うよ、キアラ》
「ほんと? えへへ」
クロにも褒められて、わたしは大変満足である。
「……皇女殿下は、まるでそのプーニャと本当にお話しされているかのようですね?」
「へっ!?」
リリアンにそう言われて、わたしはギクリと身を強張らせた。
まずい。つい、普通に会話をしているかのような返事をしてしまった。
《……見た目は変わっても、やっぱりキアラはキアラだな》
……なにそれ。どういう意味!?
頬を膨らませてクロを見るが、クロはフイッと顔を横へそむけてしまった。こうなったら、わたし一人で、なんとか言い訳を考えなければならない。
「えーっと、その、わたしとクロはとっても仲良しだから、なんとなく思っていることがわかるのよ!」
「そうなのですか。素敵ですね!」
リリアンは無邪気な様子でそう言った。どうやら、無事に誤魔化せたらしい。
メリアンが何を考えているのかわからない笑顔で黙っているのが少し怖いけれど、気のせいだと思うことにして、わたしは話を逸らした。
「そういえば、二人とも。わたしのこと、皇女殿下って呼ぶんじゃなくて、名前で呼んでほしいんだけど、ダメかな?」
「えっ?」
「えっ?」
なぜか、二人にものすごく驚いた顔をされてしまった。でも、「皇女殿下」って長いし、かたくるしいから嫌だなと、ずっと思っていたのだ。
「ダメ?」
「ダメといいますか……、皇族の方が名前で呼ぶことを許可するのは、相手への信頼の証とされているのです。誰も彼もに許可していいものではありませんので……」
メリアンの言葉に、リリアンもコクコクと頷いた。
「そうなのね、わかったわ。じゃあ二人以外に言う時は気をつけるね!」
「えっ?」
「えっ?」
二人が声を揃えてキョトンとした顔をした。さすが双子なだけあって、息がピッタリだ。
「メリアンもリリアンも、昨日からとってもわたしに良くしてくれているのがわかるから、これからは名前で呼んでほしいんだけど、嫌?」
「こ、皇女殿下……! い、いえ、その……キアラ様。嫌だなんて、とんでもないです!」
「とても光栄です、キアラ様! ありがとうございます!」
「よかったぁ!」
せっかく専属メイドになってくれたのだから、二人とは仲良くしていきたいと思っている。
……かたくるしい呼び方じゃ、やっぱり距離ができちゃうもんね!
「クロには会えたから、次はセラに会いたいな。そういえば、セラもここに住めるのかな?」
「……セラ、ですか?」
「セラとは、どなたのことでしょう?」
二人が揃って首を傾げてしまった。どうやらセラのことは伝えられていないらしい。
「わたしたちと一緒に暮らしてた、獣人族の聖女よ! ルーシャスさんの家で別れたんだけど、セラは家族みたいなものなのよ」
「まぁ、そうだったのですね。情報不足で申し訳ございません!」
「すぐにお調べ致します。リリアン!」
「ええ。ここは任せたわ、メリアン!」
メリアンの指示により、リリアンが颯爽とどこかへ駆けていった。
……わたし、皇女になっちゃったみたいだけど、セラも今までみたいに一緒に暮らせるよね?
そう軽く考えていたわたしだったが、事はそう簡単にはいかなかった。
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