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2章 2回戦目
18.俺なりの気遣い
しおりを挟む俺が自分の趣向を打ち明けると、尚輝くんの表情はみるみる焦ったものになって、青ざめていった。
あ、ヤバい、泣いちゃう?
やっぱりイメージと違うってパターンか。
もう慣れたけど、やっぱり俺は俺だしそう思われるのは辛かったりもするんだよね。
だって無理して合わせて食いたくもないもん食っても楽しくなくね?それなら安くて旨いもん食った方が幸せじゃん。
一応客だしフォロー入れとくか~。
「あ、だからと言って尚輝くんのデートが嫌って訳じゃないよ?普段味わえないリッチ感っての?大人なデート出来て楽しいよ?」
俺が一生懸命作った接客用の笑顔とセリフで凍り付いた空気を和らげようとするけど、尚輝くんは強張った表情のまま立ち上がり、ガバッと俺に向かって腰を折って頭を下げて来た。
い、いきなり何!?
近くにいたファミリーがめっちゃ見て来て、手を繋ぐより恥ずかしいんだけど!!
「すみませんでした!!全く伊吹さんの気持ちも考えずに自分の思い描いたデートを押し付けていましたっ!本当にごめんなさいっ」
「えええ!?そんな事で謝らなくていいって!てかやめてよ!恥ずいじゃん!」
「自分の好みの方と一緒に過ごせると思い舞い上がっていて、伊吹さんの気持ちを大切にするのを疎かにしてました……あ!レストランキャンセルします!待ってて下さい!!」
めっちゃ謝罪されて、急いでスマホでどこかに電話を掛け始める尚輝くん。
俺はそんな尚輝くんの姿をポカンと見ていた。
もしかして俺、とんでもなくマズイ事言っちゃった?
引かれるかなとは思ったけど、まさかこんな大事になるなんて思わなかったよ。
電話を終わらせた後、尚輝くんはまた俺の方を向いて焦ったように話し始めた。
「すみません、言い訳になってしまうのですが、好きな人とデートをするのは伊吹さんが初めてなもので……どうしたら満足していただけるのかいろいろ調べたりしたのですが、力不足でした」
「いや、俺も深く考えずに話して悪かったよ。あのさ、もうキャンセルしちゃった?」
「はい。もう勝手に予約したりしませんっ」
「いや、勝手に予約してもいいのよ?でもそれは特別な時とかにした方がいいよ。毎回されちゃうと感動が薄れちゃうし、俺みたいな一般人には特別な時ぐらいの方が嬉しいから」
「分かりました!頭に入れておきます!あの、それは次もあると言う事で受け取っていいんでしょうか!?」
あ、しまった。
そう言う事になるよな。
フォローのつもりで言っただけなんだけど、何か期待させちゃった。
でもいっか、いつまでもヘコヘコされてるのも嫌だしな。
「いいよ。でもさ、尚輝くんはこういうお店使うのはもう辞めた方がいいよ。それか他の人探すべきかな」
「えっ!それは……やっぱりさっきの失敗が響いてますか!?」
「そうじゃないけど、尚輝くんってすげぇ良い子だからさ~、俺みたいな奴といつまでもデートなんかしてないで本気で相手してくれる人と出会ってそっちに金使った方がいいって話。正直罪悪感ハンパないんだよ、尚輝くんを騙してるみたいでさ」
これは今日の最後に言おうと思ってた事だ。
今日1日尚輝くんと素でデートをして過ごして感じた事だ。
こういう仕事をしてる俺からしたら絶対逃したくないかなりの太客だ。それこそ他へ行かれるなんて何が何でも阻止するだろう。
だけど、尚輝くんは本当に純粋で、真っ直ぐで良い子なんだ。
だからちゃんとした人と巡り合って幸せになってもらいたいって思ったんだ。
思考がジジイかな?
尚輝くんを傷付けるかも知れないけど、早めに伝えた方がいいと思う。
まだ若いし、未来があるんだから尚更ね。
「……分かりました。伊吹さんの迷惑になる事はしたくないです。今まですみませんでした」
「だから謝らなくていいって!もー、尚輝くん真面目過ぎ~」
見て分かるぐらいに元気を失くした尚輝くんに、俺はどうしたらいいのか分からなかった。
俺からそう言う話しをした以上変な事言って気を持たせてもなぁ。
大きな体をしょんぼり丸めて肩を落とす男に、俺は隣でどうしたもんかと少し複雑な気持ちでいた。
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