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2章 2回戦目
19.年下に励まされる
しおりを挟む帰りの電車で俺達は特に会話を交わす事なく過ごしていた。
こんな事、普通のデートでしたら絶対アカンやつやん。どんなに話が盛り上がらなくても、どんなにムカつく奴でも金をもらってる以上は俺は頑張って会話を作るタイプだ。
でも今はそんな気すら起きなかった。
ただ尚輝くんの横に立って電車に揺られてるだけ。
時々体勢を変えるついでに尚輝くんの顔を見てみるけど、長いまつ毛を伏せて下を向いているようだった。
俺の事そんなけ本気だったって事だよな。
お揃いで買ったペンギンのキーホルダーが目に入って胸がチクッとした。
ん?今のチクッて何だ?
「あの、伊吹さん」
「は、はい!?」
自分の胸に手を当てて一人芝居をしていたら、尚輝くんが俺を見て名前を呼んだ。
真っ直ぐに俺を見る尚輝くんの顔は、優しい笑顔で俺はホッとしていた。
「伊吹さんはこれからたくさんの人とデートをするでしょうけど、くれぐれもお身体だけは大事にして下さいね。みんな伊吹さんに会えるのを楽しみにしていると思うので、いつまでもお元気でいて下さい」
「……尚輝くん」
めっちゃくちゃ良い子ーーー!!
この子はどこまでも良い子なのね!
もう孫に欲しいぐらいだわ!
てかさ、デートの最中に拒絶するような事言った俺に対して優し過ぎない?
普通の客なら金返せとか言ってんじゃね?
「うん♪ありがとう!尚輝くんも元気でな。きっと尚輝くんなら良い人と巡り逢えるから、そんでその人を幸せにしてやって?」
「あの、1つワガママ聞いてもらえないでしょうか?」
「なになにー?」
「俺、好きな人に告白をしてみたいんです。電車を降りたらしてもいいでしょうか?」
「えっ!別にいいけど、そう言うのって宣言するモノだっけ!?」
「あはは、だって伊吹さんからの答えは分かってますから、先に言っても変わらないじゃないですか~」
「そうだけどさぁ~」
「俺、いいなと思う人はいつも同性だったので、自分はおかしいんだと思って、好きになる事も告白もしないで生きて来ました。でも大学に入って、同性のカップルの友達が出来たんです。2人共男で、いつも仲良くしていてとても羨ましいんです。俺もいつかその友達みたいに恋人と仲良くしたいなと思って、今回伊吹さんを見つけました」
「そうなんだ……」
「伊吹さんを見つけた時は藁にもすがる思いですぐに登録して予約を入れました。何もかも初めてだったので、夢中でしたね。会ってみて更に夢中になりました。伊吹さんは想像以上に素敵な方でしたから」
「はは、ヤメロよ~、年上をからかうんじゃないって~」
「からかってなんかいませんよ。伊吹さん、貴方といると元気が貰えます♪初めて会った日から今日までの俺、今までで一番楽しい一週間でした。本当に素敵な思い出をありがとうございました」
あ、あれ?これって口説かれてるのか?
でも語尾とか過去形だし、別に変に意識しなくても大丈夫だよな?
でも何だろうな、この気持ち。
素直な尚輝くんに言われると胸がくすぐったくなって、上手く言葉が……あ、これって……
「嬉しいかも!」
「え?」
やべっ!つい声に出して言っちゃった。
でも分かったんだ。
俺は今まで外見だけで判断されて、話したらガッカリされるのが殆どだったんだけど、尚輝くんみたいに見た目で気に入って素の俺を知ってもこんな風に言ってくれるのが、俺はとても嬉しいんだ。
そりゃ綺麗とかかっこいいとか言われるのは嬉しいよ。でも、中身をちゃんと見て褒めてくれるのはもっと嬉しい!
「尚輝くんありがとう!俺、本当はいつでもニコニコ笑ったりお世辞言ったりするの嫌だったんだ。だから初回の予約は入っても次に予約入れてもらえるのはあまりなくてさ、本当この顔がなかったら俺なんてこの仕事だけじゃ食っていけなかったんだ」
「そんな、伊吹さんは他にも魅力的な所はたくさんありますよ?皆さんの見る目が無いんですよ!」
「だよな!尚輝くんにそう言ってもらえて良かったよ。ちょっと自信出て来たわ!俺、これからもこのままで頑張るわ!」
「はい♪応援してます」
いやぁ、まさか年下に励まされるとは思ってなかったな。
俺も年齢的に客を選んでられないし、ちょっとでも媚び売らないととか考えてたけど、そんな事どうでも良くなったわ。
仕事でも楽しくないと嫌なもんは嫌!
俺の性格が嫌だってんならこっちからお断りだぜ♪
って今だから言えるのかもだけど~?
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