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7章
アンタは俺の母ちゃんも同然なんだからもっとしっかりしてくれ
しおりを挟む空の母ちゃんっぽい人がヨロヨロしてたから声を掛けようと近付いた時、急に俯いたと思ったら、壁にもたれながら崩れ落ちそうになった。
俺はすかさず駆け寄って体を支えてやる。骨しかねぇんじゃねぇのって細くてか弱い肩だった。
「あっぶねぇ、そんな体で何出歩いてんだよっ」
「す、少し歩きたかったのっ」
空の母ちゃんはおでこら辺を押さえてゆっくり俺を見上げて来た。あ、目開いてる顔初めて見たけど、やっぱり空に似てるわ。長いまつ毛とか綺麗な形の二重とか、目が特に。さっきよりは顔色良くなってるみてぇだな。
俺と目が合うと、空の母ちゃんはニコッと笑った。おお、笑顔まで似てるじゃん。
「あら、良い男ね♡良かったらベッドまで運んでくれない?」
「いいけど、息子の友達口説いてんじゃねぇよ」
呆れてついいつものように返してしまった。
そして、空の母ちゃんは俺のセリフにピクッと反応した。
「え、私に息子がいるってどうして知ってるの?友達って、どっちの?」
「空だよ」
「もしかして空が来てるの?」
そっか、母ちゃんは寝てたから空が来てる事知らねぇのか。最初に会うのが俺とか何だか悪い気もするな。
とりあえず俺はそのまま空の母ちゃんを倒れないように支えて元いたベッドまで運んでやった。
体も今にも折れそうな程にガリガリで、俺でも心配になるぐらいやつれていた。
「来てるよ。今外してるけどその内ここに来るよ。それまで大人しく寝てろって」
「そう、空が……ねぇ、空って私の事何か言ってる?」
母ちゃんは少し聞きづらそうにしながら聞いて来た。ふーん。やっぱり息子の事気になるんじゃん。俺は正直に話す事にした。
「言ってるよ。いつも男連れ込んでる男好きだって。子供の頃なんかほっとかれて育ったって」
「あちゃ~、やっぱり空も私の事嫌ってたか~」
空の母ちゃんは、ベロをベーッと出してまるでお転婆少女のように困った顔して笑っていた。
「あちゃ~じゃねぇだろ!普通息子にそんな事言われたらショックだろ!」
「ショックだけど、事実だしね~。君にこんな話していいのか分からないけど、私あの子達とどう向き合えばいいのか分からないの。あ、あの子達って言うのは空にはお兄ちゃんがいてね……」
「は?なんだよそれ」
「怒らないでよ。自分でも母親失格だって分かってるんだから。でもね、本当に分からないのよ。あの子達を引き取る事になって、私なんかでいいのかなって、私一人であの子達を大きく育てていけるのかなって、凄く不安だったんだから。お兄ちゃんが出て行っちゃって、空だけが残ってくれたけど、その空も出て行っちゃって、もう連絡も返してくれなくなっちゃって、そりゃそうよね。こんな女、母親だなんて思いたくないよね。だからね、今でもあの子達とどう接したらいいか分からないの」
大人しく聞いてたけど、空の母ちゃんが言う事はまるで子供みてぇだなって思った。
じゃあ何で空達を産んだんだよ。何で空達を引き取ったんだよ。何でそんな無責任な考えのままあの二人の母親続けようとしてんだよ。
少しイラッとしたけど、目の前にいる弱った姿を見たらいつもみてぇに言えなかった。
「元々私の浮気が原因で旦那に離婚突き付けられちゃったんだけどね、言い訳してもいいなら拠り所が欲しかったの。家では二人の子供の育児、旦那にはキチンとしないと叱られる。泣き喚く子供達に怒鳴る旦那。私何の為に生きてるんだろうって思っちゃったの」
「それで育児放棄したって訳?」
「そうなるね」
「ふざけんじゃねぇよ!空がどんな思いでいたか知らねぇくせにっ空は、あいつはそんな母親でも俺の母さんなんだよっていつも心配してんだぞ!」
「ちょっと、あまり大きな声は……」
「正直、アンタがどんな母親でもいい。でも、空から目を背けるのだけは辞めろ。ちゃんとアンタの言葉でアンタの想いを伝えてやってくれ。頼むよ」
じゃないと空は勘違いしたままだ。
ただ単に自分に興味がなくて、ほっとかれてた可哀想な子供。そうじゃねぇって、分からせてやりたい。お前の母ちゃんは母ちゃんなりに悩んでたんだぞって。
だってさ、このままじゃ可哀想過ぎるだろ。空も、空の母ちゃんも。
「アンタが苦労したのは十分分かったから。俺んちも初めは母ちゃん一人だったから大変そうだったの見て知ってっから。アンタの想いをぶつけて空が文句言うなら俺が空を叱ってやる。でも、アンタがまだ空から目を背けるってんならアンタを叱るからなっ」
俺が思ってる事を言うと、驚いた後にふふと笑い出した。優しい笑顔。その目は潤んでるようにも見えた。
「君って面白い子だね。分かったよ。空に話聞いてもらうよ。ねぇ、君の名前教えて?」
「秋山貴哉だ!アンタは俺の母ちゃんも同然なんだからもっとしっかりしてくれ」
「貴哉くんね。空も君みたいに素直に話してくれればいいな~」
えへへと笑う空の母ちゃんは、笑うと本当に空とそっくりだった。
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