【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

文字の大きさ
113 / 156
7章

アンタは俺の母ちゃんも同然なんだからもっとしっかりしてくれ

しおりを挟む

 空の母ちゃんっぽい人がヨロヨロしてたから声を掛けようと近付いた時、急に俯いたと思ったら、壁にもたれながら崩れ落ちそうになった。
 俺はすかさず駆け寄って体を支えてやる。骨しかねぇんじゃねぇのって細くてか弱い肩だった。


「あっぶねぇ、そんな体で何出歩いてんだよっ」

「す、少し歩きたかったのっ」


 空の母ちゃんはおでこら辺を押さえてゆっくり俺を見上げて来た。あ、目開いてる顔初めて見たけど、やっぱり空に似てるわ。長いまつ毛とか綺麗な形の二重とか、目が特に。さっきよりは顔色良くなってるみてぇだな。
 俺と目が合うと、空の母ちゃんはニコッと笑った。おお、笑顔まで似てるじゃん。


「あら、良い男ね♡良かったらベッドまで運んでくれない?」

「いいけど、息子の友達口説いてんじゃねぇよ」


 呆れてついいつものように返してしまった。
 そして、空の母ちゃんは俺のセリフにピクッと反応した。


「え、私に息子がいるってどうして知ってるの?友達って、どっちの?」

「空だよ」

「もしかして空が来てるの?」


 そっか、母ちゃんは寝てたから空が来てる事知らねぇのか。最初に会うのが俺とか何だか悪い気もするな。
 とりあえず俺はそのまま空の母ちゃんを倒れないように支えて元いたベッドまで運んでやった。
 体も今にも折れそうな程にガリガリで、俺でも心配になるぐらいやつれていた。


「来てるよ。今外してるけどその内ここに来るよ。それまで大人しく寝てろって」

「そう、空が……ねぇ、空って私の事何か言ってる?」


 母ちゃんは少し聞きづらそうにしながら聞いて来た。ふーん。やっぱり息子の事気になるんじゃん。俺は正直に話す事にした。


「言ってるよ。いつも男連れ込んでる男好きだって。子供の頃なんかほっとかれて育ったって」

「あちゃ~、やっぱり空も私の事嫌ってたか~」


 空の母ちゃんは、ベロをベーッと出してまるでお転婆少女のように困った顔して笑っていた。


「あちゃ~じゃねぇだろ!普通息子にそんな事言われたらショックだろ!」

「ショックだけど、事実だしね~。君にこんな話していいのか分からないけど、私あの子達とどう向き合えばいいのか分からないの。あ、あの子達って言うのは空にはお兄ちゃんがいてね……」

「は?なんだよそれ」

「怒らないでよ。自分でも母親失格だって分かってるんだから。でもね、本当に分からないのよ。あの子達を引き取る事になって、私なんかでいいのかなって、私一人であの子達を大きく育てていけるのかなって、凄く不安だったんだから。お兄ちゃんが出て行っちゃって、空だけが残ってくれたけど、その空も出て行っちゃって、もう連絡も返してくれなくなっちゃって、そりゃそうよね。こんな女、母親だなんて思いたくないよね。だからね、今でもあの子達とどう接したらいいか分からないの」


 大人しく聞いてたけど、空の母ちゃんが言う事はまるで子供みてぇだなって思った。
 じゃあ何で空達を産んだんだよ。何で空達を引き取ったんだよ。何でそんな無責任な考えのままあの二人の母親続けようとしてんだよ。
 少しイラッとしたけど、目の前にいる弱った姿を見たらいつもみてぇに言えなかった。


「元々私の浮気が原因で旦那に離婚突き付けられちゃったんだけどね、言い訳してもいいなら拠り所が欲しかったの。家では二人の子供の育児、旦那にはキチンとしないと叱られる。泣き喚く子供達に怒鳴る旦那。私何の為に生きてるんだろうって思っちゃったの」

「それで育児放棄したって訳?」

「そうなるね」

「ふざけんじゃねぇよ!空がどんな思いでいたか知らねぇくせにっ空は、あいつはそんな母親でも俺の母さんなんだよっていつも心配してんだぞ!」

「ちょっと、あまり大きな声は……」

「正直、アンタがどんな母親でもいい。でも、空から目を背けるのだけは辞めろ。ちゃんとアンタの言葉でアンタの想いを伝えてやってくれ。頼むよ」


 じゃないと空は勘違いしたままだ。
 ただ単に自分に興味がなくて、ほっとかれてた可哀想な子供。そうじゃねぇって、分からせてやりたい。お前の母ちゃんは母ちゃんなりに悩んでたんだぞって。
 だってさ、このままじゃ可哀想過ぎるだろ。空も、空の母ちゃんも。


「アンタが苦労したのは十分分かったから。俺んちも初めは母ちゃん一人だったから大変そうだったの見て知ってっから。アンタの想いをぶつけて空が文句言うなら俺が空を叱ってやる。でも、アンタがまだ空から目を背けるってんならアンタを叱るからなっ」


 俺が思ってる事を言うと、驚いた後にふふと笑い出した。優しい笑顔。その目は潤んでるようにも見えた。


「君って面白い子だね。分かったよ。空に話聞いてもらうよ。ねぇ、君の名前教えて?」

「秋山貴哉だ!アンタは俺の母ちゃんも同然なんだからもっとしっかりしてくれ」

「貴哉くんね。空も君みたいに素直に話してくれればいいな~」


 えへへと笑う空の母ちゃんは、笑うと本当に空とそっくりだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

どうしょういむ

田原摩耶
BL
苦手な性格正反対の難あり双子の幼馴染と一週間ひとつ屋根の下で過ごす羽目になる受けの話。 穏やか優男風過保護双子の兄+粗暴口悪サディスト遊び人双子の弟×内弁慶いじめられっ子体質の卑屈平凡受け←親友攻め 学生/執着攻め/三角関係/幼馴染/親友攻め/受けが可哀想な目に遭いがち 美甘遠(みかもとおい) 受け。幼い頃から双子たちに玩具にされてきたため、双子が嫌い。でも逆らえないので渋々言うこと聞いてる。内弁慶。 慈光宋都(じこうさんと) 双子の弟。いい加減で大雑把で自己中で乱暴者。美甘のことは可愛がってるつもりだが雑。 慈光燕斗(じこうえんと) 双子の兄。優しくて穏やかだが性格が捩れてる。美甘に甘いようで甘くない。 君完(きみさだ) 通称サダ。同じ中学校。高校にあがってから美甘と仲良くなった親友。美甘に同情してる。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...