【完結】取り柄は真面目な事だけです

pino

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1章 大切な人

6.改めましての告白

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 少し気持ちを整理しよう。
 落ち着くんだ谷岡尚輝。
 今までどんな試験にだって落ち着いて挑んで思い通りの結果を残して来たじゃないか。
 大丈夫。今回も落ち着いて挑めば必ず成功する。

 
「おーい?尚輝くん?」

「はっはいっ!?」


 ダメだ!隣にいる天使が落ち着かせてくれない!
 どんな課題やテストよりも俺を不安にさせたり喜ばせたりするのが上手いんだもん、落ち着ける訳がないよ。

 俺がぎこちなく返事をすると、伊吹さんは訝しげな顔をして見て来た。


「あのさ、その反応を見ると不安になるんだけど、俺達って付き合ってるんだよね?」

「ごめんなさい……俺は変わらず伊吹さんの事は好きなのですが、両想いになっていたのは気付きませんでした……」

「はぁ!?何それ!?」


 伊吹さんはとても驚いていた。
 まるで怒っているような、困っているような、とても爽やかとは言えない表情で俺を見て言った。

 大変だ。伊吹さんを怒らせてしまった。
 でも、本当に心当たりが無いんだ。確かに最後に会った時に「大好き」とは言われたけど、でもそれは社交辞令だとばかり……てか他の客にもしてるんじゃないのかとか疑ってたよ。

 もしかして伊吹さんは本気で俺の事を?
 だとしたら俺はとんでもない失礼な事を言った事になる!!


「あの、本当にすみませんでした!謝って済む事じゃないのは分かってます。けど、もう一度ちゃんと話をしてもらえませんか?」

「いや、待ってよ……それじゃ俺一人で付き合ってるって勘違いして舞い上がってたって事?うわ、めちゃくちゃ恥ずいんだけど……」


 見て分かるぐらいに肩を落としてガッカリしている伊吹さん。
 俺の不注意で楽しいデートがまさかの展開になっちゃった!
 
 嫌われたくないっ!
 俺は何としてでも許して貰わないとと、混乱する頭をフル回転させて考えた。

 落ち着いて考えろ。
 伊吹さんといつ付き合うような会話をしたのか。
 やっぱり最後に会った日が一番それっぽいな。
 あれから数日間、毎日電話やメッセージのやり取りをしてるし、伊吹さんもすごく俺に好意を寄せてくれていると感じていた。

 あの日、伊吹さんに言われた言葉を思い出す。
 とても嬉しかった「大好き」の他にも色々言われた言葉達。
 目の前にいるのにふざけながら俺に電話を掛けた伊吹さんは何て言っていた?
 「本命とデートする」とか「好きな子が出来た」とか言っていた。
 慌てた俺に意地悪をして電話をして今日のデートに誘われたんだけど……もしかしてあれが告白だったのか!?

 もしそうだとしたら知らない間に告白されて、付き合う事になって、それまで伊吹さんはずっと俺の事を恋人だと思ってくれていたとしたら……


「い、伊吹さん!失礼な事を聞いてもいいですか!?」

「え……今はちょっと優しくして欲しいかも……」


 顔をふいっと逸らしてボソボソ喋る伊吹さん。
 まるで元気を無くしている。
 でも俺もこれは聞いて確認しておきたいんだ。
 じゃないとまた勘違いして伊吹さんを傷付けてしまうから。
 俺が確認したいのは他の客にも同じ事をしたり言ったりしているんじゃないかって事だ。


「分かりました。目一杯優しく聞きますね?」

「……ん」


 俺は一度気持ちを落ち着けてから、隣に座る伊吹さんを覗き込んで優しく語りかける。
 伊吹さんは不安そうな顔のまま俺をチラッと見て来た。
 本当に可愛いな。
 伊吹さんの事は年上とは思えないぐらいに可愛いと思う。普段は綺麗で落ち着いて見えるけど、本当の伊吹さんは元気で明るくて結構好き嫌いがハッキリしている性格なんだ。

 そんな伊吹さんをこれ以上傷付けないように、俺は大切に声を掛けた。


「伊吹さんの好きな人は俺だけですか?だとしたらとても嬉しいです。改めてお付き合いさせて下さい」

「……尚輝くんだけだよ」


 頬を赤く染めて小さな声で言う伊吹さんに、俺は心の中で飛んで跳ねて喜んだ。
 たった一言だけだったけど、それでも俺は嬉しくて泣きそうになった。
 

「ありがとうございます♡俺も伊吹さんが好きです。あの、改めて俺と付き合ってくれますか?」

「どうしようかな~?尚輝くんて俺の告白に気付かないぐらい鈍感だからな~」

「そんな事言わないで下さい。これからはもっとしっかり気持ちを汲み取りますから♪」

「本当か?俺騙されてないか?」

「騙したりなんかしませんよ。それを言うなら伊吹さん……いえ、何でもないです」


 仕事柄伊吹さんの方が得意なのでは?
 うっかり傷付けるような事を言いそうになって辞めるけど、伊吹さんは見逃してはくれなかった。

 軽く睨まれてまた怒ってるような顔をした。

 俺はまた怒らせるような事を!
 元々対人能力は低い方なのは自覚していたけど、まさか好きな人を傷付ける程に愚鈍だったなんて、反省してもし切れない。


「あのっ!ごめんなさいっ今のは間違えて……」

 
 慌てて肯定しようと試みると、伊吹さんは表情をフワッと緩めて笑った。

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