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1章 大切な人
8.一安心
しおりを挟む伊吹さんと公園でひまわりを見て歩いた後、ランチをする為に予約しておいたお店を目指す。
美波から聞いたデートに持ってこいのイタリアンカフェらしいけど、駅から少し離れた裏路地にあるとか。貰ったお店のホームページの地図を見ながら行くと、少し古い雑居ビルに辿り着く。
少し躊躇うぐらいの風貌だったけど、ここの三階にあるらしい。
「多分ここの三階なんですけど……」
「ん、なんか良い匂いする♪行ってみようぜ♪」
俺が間違えたかと思って地図を見直してると、伊吹さんは匂いを嗅ぎながら雑居ビルの奥へ向かった。すると小さいエレベーターがあって、そこで上に上がれるようになっていた。
エレベーターの中は狭く、俺と伊吹さんとあと一人ぐらい入れる広さだった。
ここで俺は不安になる。せっかく伊吹さんの為にデートにちょうどよく、高級過ぎずに美味しく楽しめるようなお店を友達に聞いて予約をしたのに、もしも酷く汚れたお店で、美味しくも無く、それでいて高くついたら……いや、金額は別にいいんだけど、高いお店よりも良心的な金額のお店を好む伊吹さんにとってはマイナスでしかないだろう。
そんな俺の不安を知ってか知らずか、何故か伊吹さんはノリノリで楽しそうにしていた。
ああ、こんな小さくて汚いエレベーターに乗せてごめんなさい。
次はもっと下調べしますので嫌いにならないで下さい。
俺は祈りながら三階に到着したエレベーターから降りて、驚いた。
そこには、この汚い雑居ビルにいる事を忘れるかのようなお洒落な飾りが施された扉があった。入口であろうドアの横には観葉植物と、おすすめが書かれたコルクボード、窓から店内がチラッと見えるけど、一見普通のカフェのように見える。
そして店の看板には「イタリアン料理パプリカ」と書かれていた。ここだ。
「あったー♪朝食べてないからペコペコ~♪尚輝くん中入ろ?」
「あ、はい。行きましょう」
ちゃんとあったお店に驚いていると、喜ぶ伊吹さんの顔があって気持ちが和らいだ。
良かった。失敗じゃなかったんだ。
美波の言う話だと、夫婦で経営しているお店らしくて、雰囲気や味は抜群だと言う。
先程までの落胆した気分は一転、期待が一気に増した。
中に入って扉を開けると、カランカランと音が鳴った。そしてカウンター席の所にいたエプロン姿の女性がニッコリ笑って対応してくれた。
「いらっしゃいませ~。谷岡様ですか?お席ご用意しておりますよ~♪」
とても愛想の良い、優しそうなお姉さんだった。
案内された席は店の奥のテーブル席で、伊吹さんを奥に、自分は手前の椅子に座る。
店の中は汚い入口を掻い潜って来たとは思えない程お洒落な作りになっていて、壁には絵画、テーブルには可愛い猫の置物、床には入口にもあった観葉植物が置かれていた。
まるで女の子達が好きそうな可愛いカフェ。
確かに雰囲気は抜群だ。
そして店内に広がる美味しそうな匂い。
既にいた一組の男女のカップルが食事をしていたけど、とても楽しそうに食べていた。料理も期待出来そうだ。
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