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2章 大切な友達
18.眠れる虎
しおりを挟む月曜日、俺はいつも通りに電車に乗って学校まで向かう。今日から学校の前に大我くんを起こしに行くんだけど、少し緊張していた。
友達の家に朝から行くなんてした事がないからなぁ。
伊吹さんからは昨日の昼前に「昨日はごめん!俺酔って寝ちゃったみたい?」とメッセージが来て、それからは普通にやり取りをしていた。
そして伊吹さんは仕事へ行った。夜まで連絡が来なくて不安になったけど、仕事だから仕方がない。俺はそう自分に言い聞かせてこの時間まで過ごしていた。
昨日伊吹さんが何人の人と疑似デートをしたのかは分からない。どんな人と、どんなデートを、どれだけの時間を一緒に過ごしたのか……
考えると胸が痛くなった。
いけないな。伊吹さんも生活の為に頑張ってるのに、応援しなきゃいけないのに、俺は行かないでと思ってしまう。
だけどそんな事を言える筈もなく俺は「行ってらっしゃい。体には気を付けて下さいね」といつも通りのメッセージを送るだけだった。
電車を降りてしばらく歩いて大我くんのアパートを目指す。
今日は大我くんに伊吹さんとの事を打ち明けようと思っているんだ。どんな反応をするのかは分からない。
大我くんはいつも陽気にしてて、どんな事でも明るく振る舞うけど、時々怖くなる瞬間がある。多分本気で怒ってる時だ。でもそんな大我くんを見たのは俺はまだ一度だけだ。
もし打ち明けた時に、またあの大我くんになったら俺はちゃんと対応が出来るのだろうか。怯えて自分の意見が言えなくなっちゃうんじゃないかとそこも不安だった。
アパートが見えて来て、大我くんの部屋がある二階へ上がる。鍵は掛けてないって言ってたけど、そんな不用心な事をする人がいるのかと驚いた。一応合鍵は預かってるけど、先にインターフォンを鳴らしてみる事にした。
「…………」
応答無し。次にドアノブを回してみる。
ガチャ。
開いた!本当に鍵が掛かってない!
信じられない事実に俺は少し狼狽えながらも、時間も無いのでそっと中へ入る。
「大我くん?入るよー?」
「…………」
返事はない。
だけど、短い廊下の先の部屋に大我くんが寝ているのがここからでも確認出来た。
土曜日に来た時には少し片付いていた部屋も今日来たらまた散らかっていた。
「お邪魔します」
一応声を掛けながら中へ入る。
大我くんは敷いてある布団の端の方で、左半身をはみ出しながら気持ち良さそうに寝ていた。
自慢の青い髪は全部持ち上がり、顔が全て出ていて良く見える。目を閉じているけど、大我くんは男らしくてかっこいい。開いている時の目は垂れていて、話す相手を嫌な気にさせないような愛嬌のある顔をしている。
そして上半身裸と言う目のやり場に困るような野生的な格好で寝ていた。
一応俺はゲイだから、男である大我くんの裸を見るとドキドキはしてしまう。これが伊吹さんだったらと考えると……まず部屋に入れないだろう。
俺は寝ている大我くんの横に座って、タトゥーの無い左肩を触って体を揺らして起こしてみる。
「大我くん、朝だよ」
「……ガー」
いびきだ。
いや、それよりもコレ起きるのか?
俺は睡眠には結構神経質で、きっと熟睡してなければ誰かが入って来ただけでも起きてしまうだろう。大我くんのように体を触られたり、声を掛けられても起きないのには本当に驚いた。
今度は少し強く揺らしてみる。
体全体が揺れるぐらいに揺らすと、大我くんの顔がピクッと反応したように見えた。もう少しか?
「起きて!学校だよ!」
「ンガァ~」
「わっ!!」
大我くんは眉間に皺を寄せて苦しんでるような顔をした後、左に寝返りを打つのと同時に右腕を思い切り俺に目掛けて振り下ろして来た。
危ない!俺は咄嗟に身を引いて間一髪避けられた!
全く起きる気配が無いけど、これどうやって起こしたらいいの?
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