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3章 恋人失格
30.まさかのラブホテル
しおりを挟む泣き続ける俺に伊吹さんは慌ただしく手を引いて、再び歩き出した。
初めから行く宛があるような雰囲気だけど、一体どこへ行く気なんだろう?目的地が分からないけど、伊吹さんとならどこへでも行ける気がした。
駅から少し離れて、人通りの少ない路地へ進んで行く。そして次第に危ない雰囲気のエリアになっていく。
「あの、伊吹さんどこへ?」
「もう少しで着く!」
聞いてもそればかり。伊吹さんと一緒とは言え不安にもなるよ。だってここってホテル街じゃないか?
若い男女のカップルや、露出の多い女の子、派手な髪型をした男の人なんかもフラフラしていて、こんな所で男同士が手を繋いで歩いていたら絶対怪しまれるだろ。
「ここ!」
「伊吹さん!」
到着したのは一件のラブホテルだった。普通のビジネスホテルかと思う外観だけど、看板はちょっとどうなの?って言う名前が書かれていた。
「ここね、男同士で入ってもOKなんだよ。休憩でいいよなー?」
「待って下さいっ!伊吹さんは何を考えているんですか?」
「何って、尚輝くんと落ち着いて過ごしたいと思ってるよ。外じゃ目立つし、俺んちまで帰るのも時間勿体ないなって」
「でも、ここは……」
「あ、もしかしてエッチな事考えてる~?安心してよ。本当に二人きりになって話聞くだけだから」
違いますよ!俺が我慢出来なくなるかも知れないんですよ!
そんな事は言えずに、俺はただ伊吹さんの後を付いていくしか出来なかった。
伊吹さんは慣れたように部屋を選んで小さいエレベーターに乗り選んだ部屋に入って行く。
は、初めて入るけど、入ってすぐに部屋があって大きなベッドがある事に驚いた。そして薄暗くて狭い。こ、こんな部屋に伊吹さんといたら俺、どうかしちゃうよ!
「なんか飲む~?俺アイスコーヒー頼む~」
「…………」
部屋に入るなりベッドに座って冊子を見てる伊吹さん。俺は緊張して何もする事が出来なかった。
そんな俺に気付いた伊吹さんが、立ち上がって俺を迎えに来てくれる。
そして手を握られてニコッと笑ってくれた。
「尚輝くん、寛ご?ほらこっち」
「はい……」
手を繋がれたまま誘導されてベッドに隣同士で座る。とんでもないシチュエーションに、俺の心臓は破裂寸前だった。
「さて、話を聞こうか?」
「あ、さっき話したのが大体そうなので」
「ふーん。あとは?」
「あと?」
「タイガーとの話は分かったよ。他にもあるんだろ?全部教えてよ。ちゃんと聞くから」
「……全部ですか」
「そう!全部だよ。じゃなきゃ今日は帰しません!」
「それって俺にとって良い事なんですけど」
「うるさいっいいから早く話せっての!」
ずっと伊吹さんといられるならあえて話さないのもいいなとか思ってしまう。
それでもせっかく伊吹さんが用意してくれた話をするのに最適な場所にいるんだから、少し話してしまおうかと思えた。
これは大我くんとの事に限らず自分自身の悩みだ。
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