242 / 287
ep242 任務完了
しおりを挟む
「報告してたらすっかり昼になっちまったな」
「ええ。食堂に昼食の残りがあるといいのですが」
バステンとルーナはちょうど真上から陽光が降り注ぐ時刻、リッカリンデン教会でそんな会話をしていた。
最後の最後に特大の試練に見舞われたオボロ傭兵団だったが、なんとか全員五体満足で帰還することができた。
傭兵ギルドにはいったん任務の完了を報告し、証拠品の手を潰された盗賊を引き渡しておいた。一人少なくなってしまったのは残念だが、そっちの死体は黒剣騎士団が回収しているはずだ。
ちなみに付いてきてくれた証人の村人には金を渡し、いったんそこら辺で昼飯でも食べて待ってもらうように伝えている。
「おお、麗しき我が宿舎よ! 俺は帰ってきた!」
「……疲れたな」
「だな。でもマグはミンスク村のあの子のためにも、弱音吐いてはいらんねえよなぁ?」
「……今くらいはいいだろう」
マグ、ドガル、パウロが疲労を感じさせながらも達成感に溢れた笑顔で話している。
「……ねえ、ゼフ」
「んお!? な、なんだ。どうしたナリャ?」
「ごめんね、つっけんどんな態度とっちゃって。あたしたち、どんな顔すればいいのか分かんなくて」
「ゼフを傷つけてしまったかも。ごめんなさい」
「……っ。い、いいんだ。俺がうまくなかったせいなんだ。お前たちは何も悪くねえ。ありがとう、また話しかけてくれて」
「ううん……それでね、あたしたち、もっとゼフを満足させられるように練習することにしたんだ」
「え? れ、練習?」
「うん。もっとずっと一緒にいたいから、頑張るね」
ゼフの心中に一瞬不安がよぎるが、せっかく機嫌が治った幼なじみたちに水を刺さないように笑って応える。
「……おう。よくわかんねえけど、頑張れよ! 中途半端にならないようにな!」
「……うん!」
「俺もよ、そういう知識全然ないからもっと勉強することにしたわ。だから、次は、その」
「……三人で楽しもうね?」
「お、おう!」
(あーやだやだ、初々しいねえ)
(ベラだって老け込む歳じゃないでしょう?)
(まー、そうだけど私みたいな男受けしないガサツな女はね。年々潤いってものが無くなっていくのさ)
(……そういうものですか)
(ティナも気をつけないとだめだよ。あんた処女だろ? 薬草と爆弾が青春の女なんて、なかなか男が寄りつかないだろうからね)
(う、うるさいですね! ……自覚はありますよ)
(ま、まずい。手が震える。早くギャンブルしないと)
リッカリンデン教会に併設された宿舎の前で団員たちがガヤガヤしながは荷解きをしていると、食堂から若く元気な少女が飛び出してくる。
「あーっ! みなさん! 帰ってきたんですね! 無事でよかった……おかえりなさい!」
天真爛漫な笑顔を振りまくのはセラミナ。その明るさに男団員たちの数人は鼻の下が伸びる。質素な奴隷服が逆に似合ってきており、そこから伸びる健康的な生足が庇護欲やら情欲やらいろいろと刺激してくる。
「セラミナちゃん、出迎えてくれてありがとう。用意してくれた弁当、とても美味しかったよ。ほら、お前らもお礼言っとけ!」
「「「ありがとうございます!!!」」」
傭兵たちが声をそろえてセラミナに言うと、彼女は目を白黒させて手をパタパタ振りながらも、笑顔で受け止めた。
「あはは! なんてことないです、これくらい。皆さんが無事に帰ってきてくれるのを毎日祈ってました。本当によかった……」
無垢な好意を振りまく彼女にパウロやドガルの鼻の下が伸びる。
「ぐふふ、本当に可愛くていい子だなぁ。足首がキュッと締まってるのに、尻は人妻のようにでっぷりと大きい……。胸もたぶん着痩せする方だな。素朴な顔立ちだけど笑顔が無邪気、それでいて妙に色気がある。質素な奴隷服のまんまなのもいいではないか……」
「おい。その犯罪者みたいな笑い方と思考は止めろよ。鳥肌が立ってくる。
だがまぁ、可愛いのは間違いない。はぁ、あの子の旦那が羨ましいぜ。あの尻だ。元気な子をたくさん産んでくれるだろう」
「うむ。やはり尻だ。尻がいい……。十六歳のくせに、三十路女のように肉の詰まっただらしなさと、年相応のみずみずしいハリが同居している……あれは男を狂わせる尻だ。ぐぬぬぬふぅ……今夜の娼館は人妻系で決定だな」
「おい、変態ども。セラミナちゃんをそんな目で見るんじゃないよ」
「最低」
「キモい」
「死ねハゲ」
「ゴブリン顔」
「犯罪者」
「ゴミハゲ」
「い、言いすぎだろ……」
「独身男には人権ねえのか……あとハゲてねえよ」
女性陣にボロカスに言われて涙目になるパウロとドガルを、マグは横目で見てほっとする。昨日までは自分もあの枠だったのだ。
「各員傾聴!」
バステンが声を張り上げると傭兵たちは雑談を止め整列する。
「初陣をよく生き残った! しかも特大のイレギュラーまであったのに、お前たちはそれすら五体満足でくぐり抜けた! 自分たちの成果を誇れ!」
バステンに褒められて、まんざらでもない見習い傭兵たち。
「初陣を生き残り、激戦を生き残ったお前たちはもう見習いではない! この訓練をよく耐え抜いた! 今から立派な傭兵だ!」
彼らの脳裏に辛くて苦しい記憶が蘇る。バステンとルーナのシゴキは大の大人が音を上げるほど激しいものだったからだ。
「スラムにはまだ傭兵になりたいやつが大勢いる。見どころのありそうなやつは、順次鍛えていくつもりだ! お前らはそいつらの先輩として、オボロ傭兵団第一期生として、模範になるように!」
第一期生。
聞き馴染みのない言葉だが、なんて感じな言葉なのだろうか。
つまりこのあと入ってくるすべてのオボロ傭兵団、団員たちの先輩になるということだ。
胸中に誇りが満ちていく一方で、模範となる立場に対する責任感も芽生え始めていた。
「訓練の再開は三日後とする! 明日明後日はよく休むように!」
「っしゃぁ!」
「ギャンボォ!」
ゼフとロスカがガッツポーズをして喜ぶ。
「ただし、報告書を今日の夕飯前までに提出するように!」
「うげぇ……」
「ぎゃ、ギャンボォ……」
そして見るからに気落ちする二人。
「う、うっす。団長。おれ、報告書とかよくわかんなくて……何をかけばいいっすか?」
「難しく考える必要はない。①うまくいったこと、②うまくいかなかったこと、③次がんばりたいこと。この三つを書けばいい」
ゼフ向けに噛み砕いて説明する。
「そ、それならわかると思いまっす!」
「あ、そんなんでいいの? なら楽勝だね。賭場行こっと」
「ふむ。ロスカは余裕そうだな。みんな、書き方は奴に訊け。ロスカ、逃げるなよ」
「ギャンボォォォォ!」
ロスカのむなしい悲鳴が響き渡る。
「あと、まだ今日は仕事をしている認識でいろよ。任務後に行う三つの『せ・い・か』、教えたはずだな。ゼフ、言ってみろ」
「う、うぇっ!? えっと、えっと……あ、『整備』っす!」
突然、抜き打ちテストされてゼフがしどろもどろになりながらも、なんとか答える。
「よし、その通りだ。
武具・装備の整備。血や泥を落とす、刃を研ぐ、破損箇所の修繕依頼。矢・弾・道具など消耗品の補充チェック。忘れないようにしろよ」
「う、うっす」
「次、『い』だ。ドガル、分かるか?」
「い、『医療』……だったはずだ」
冷や汗を垂らしながら答えるドガルに、バステンは頷く。
「そうだ。
任務のあとは医療・治療・休養が大事だ。傷がある者は『治癒師』に……っと、ここにはいないんだったな。治療係に報告しろ。今回はティナが担当だな。情報がまとまったら俺に報告。そして、疲労回復のため食事・水分・睡眠を優先してしっかり休養するんだ。ドガル、今日は酒も娼館も止めてさっさと寝ろ。いいな?」
「ぐ、ぐぬぬぬ……了解だ。団長……」
「では最後の『か』。ナリャ、分かるか?」
「『確認』だよね、団長? 戦果の確認はもちろん、任務を通して得た経験とかの確認」
「その通りだ。自分が何を得て何が足らなかったのか。よく確認しろ。常に考える癖をつけろ。そうすれば一流の傭兵になれる。なにもこれは傭兵に限ったことじゃない。この先、仕事をしていく上で、基本となる考え方だ」
「りょーかい、団長。ちゃんと確認しておくね」
「ナリャは優秀だな。隣の幼なじみが分からなかったら教えてやれ」
「はーい!」
「俺からは以上だが、ルーナは何があるか?」
「いえ、団に関することは何もないです。ただセラミナに一つ確認したいことが」
「え、わ、私ですか?」
傭兵たちのやりとりを劇の一幕でも見るように、興味深く見ていたセラミナが慌てて立ち上がる。
「急で申し訳ないのですが、昼食はまだ余っていますか? 帰ってきたばかりで傭兵たちは疲れています。なるべく手近なところて済ませたいのですが」
「あ、ああっ。そういうことですね。はい。大丈夫ですよ。たくさんあるので安心してください。今日は……新鮮な朝採れ野菜のサラダと、ダイオークのタルテッラ、焼きたて自家製パン、シャイバードの骨スープですよ」
「うおおおおっ、肉ぅぅぅ!!!」
「やった! お野菜!」
「焼き立てパァァァン!」
食べ盛りのゼフ、ナリャ、セリンから歓声が上がった。そしてすぐにセリンは我に返って恥ずかしそうに顔を伏せた。
「ありがとうございます。急だったので、私たちの分は無いかと思っていましたが」
「ふふーん。それはですね、御主人様からたっぷり予算を貰っているから、たっぷりご飯を用意することができるのです! だから、お礼は御主人様にお願いします!」
「……さすがは御主人様。感謝申し上げます」
なぜか自分のことのように胸を張るセラミナと、その場で跪くルーナ。
「……なあ、パウロ。俺はまだその御主人様とやらに会ったことないんだがどんな人なんだ?」
「私も気になるねえ」
「俺も」
「私たちも」
「あーん? お前ら……あぁ、そうか。傭兵団の募集と訓練はずっとスラムの方でやってたからか。じゃあ亜人様とも会ったことねえのか」
「おう。そうなんだよ」
「うーん、そうだなあ……タネズの旦那は……うーん、やばい人だよ」
「やばい人って何さ」
「もっと具体的にお願いします」
「そうだな……。改めて言われるとなんて言えばいいのか」
パウロはポリポリと頭を書いて今までの彼とのやり取りを思い出す。
「見た目は世間知らずそうなあんちゃんなんだが、気付いたらギョッとすることをしでかしている。それで周りがあたふたしてる間に、いつの間にか何もかもが一変してる……そんな人だよ」
「ええ。食堂に昼食の残りがあるといいのですが」
バステンとルーナはちょうど真上から陽光が降り注ぐ時刻、リッカリンデン教会でそんな会話をしていた。
最後の最後に特大の試練に見舞われたオボロ傭兵団だったが、なんとか全員五体満足で帰還することができた。
傭兵ギルドにはいったん任務の完了を報告し、証拠品の手を潰された盗賊を引き渡しておいた。一人少なくなってしまったのは残念だが、そっちの死体は黒剣騎士団が回収しているはずだ。
ちなみに付いてきてくれた証人の村人には金を渡し、いったんそこら辺で昼飯でも食べて待ってもらうように伝えている。
「おお、麗しき我が宿舎よ! 俺は帰ってきた!」
「……疲れたな」
「だな。でもマグはミンスク村のあの子のためにも、弱音吐いてはいらんねえよなぁ?」
「……今くらいはいいだろう」
マグ、ドガル、パウロが疲労を感じさせながらも達成感に溢れた笑顔で話している。
「……ねえ、ゼフ」
「んお!? な、なんだ。どうしたナリャ?」
「ごめんね、つっけんどんな態度とっちゃって。あたしたち、どんな顔すればいいのか分かんなくて」
「ゼフを傷つけてしまったかも。ごめんなさい」
「……っ。い、いいんだ。俺がうまくなかったせいなんだ。お前たちは何も悪くねえ。ありがとう、また話しかけてくれて」
「ううん……それでね、あたしたち、もっとゼフを満足させられるように練習することにしたんだ」
「え? れ、練習?」
「うん。もっとずっと一緒にいたいから、頑張るね」
ゼフの心中に一瞬不安がよぎるが、せっかく機嫌が治った幼なじみたちに水を刺さないように笑って応える。
「……おう。よくわかんねえけど、頑張れよ! 中途半端にならないようにな!」
「……うん!」
「俺もよ、そういう知識全然ないからもっと勉強することにしたわ。だから、次は、その」
「……三人で楽しもうね?」
「お、おう!」
(あーやだやだ、初々しいねえ)
(ベラだって老け込む歳じゃないでしょう?)
(まー、そうだけど私みたいな男受けしないガサツな女はね。年々潤いってものが無くなっていくのさ)
(……そういうものですか)
(ティナも気をつけないとだめだよ。あんた処女だろ? 薬草と爆弾が青春の女なんて、なかなか男が寄りつかないだろうからね)
(う、うるさいですね! ……自覚はありますよ)
(ま、まずい。手が震える。早くギャンブルしないと)
リッカリンデン教会に併設された宿舎の前で団員たちがガヤガヤしながは荷解きをしていると、食堂から若く元気な少女が飛び出してくる。
「あーっ! みなさん! 帰ってきたんですね! 無事でよかった……おかえりなさい!」
天真爛漫な笑顔を振りまくのはセラミナ。その明るさに男団員たちの数人は鼻の下が伸びる。質素な奴隷服が逆に似合ってきており、そこから伸びる健康的な生足が庇護欲やら情欲やらいろいろと刺激してくる。
「セラミナちゃん、出迎えてくれてありがとう。用意してくれた弁当、とても美味しかったよ。ほら、お前らもお礼言っとけ!」
「「「ありがとうございます!!!」」」
傭兵たちが声をそろえてセラミナに言うと、彼女は目を白黒させて手をパタパタ振りながらも、笑顔で受け止めた。
「あはは! なんてことないです、これくらい。皆さんが無事に帰ってきてくれるのを毎日祈ってました。本当によかった……」
無垢な好意を振りまく彼女にパウロやドガルの鼻の下が伸びる。
「ぐふふ、本当に可愛くていい子だなぁ。足首がキュッと締まってるのに、尻は人妻のようにでっぷりと大きい……。胸もたぶん着痩せする方だな。素朴な顔立ちだけど笑顔が無邪気、それでいて妙に色気がある。質素な奴隷服のまんまなのもいいではないか……」
「おい。その犯罪者みたいな笑い方と思考は止めろよ。鳥肌が立ってくる。
だがまぁ、可愛いのは間違いない。はぁ、あの子の旦那が羨ましいぜ。あの尻だ。元気な子をたくさん産んでくれるだろう」
「うむ。やはり尻だ。尻がいい……。十六歳のくせに、三十路女のように肉の詰まっただらしなさと、年相応のみずみずしいハリが同居している……あれは男を狂わせる尻だ。ぐぬぬぬふぅ……今夜の娼館は人妻系で決定だな」
「おい、変態ども。セラミナちゃんをそんな目で見るんじゃないよ」
「最低」
「キモい」
「死ねハゲ」
「ゴブリン顔」
「犯罪者」
「ゴミハゲ」
「い、言いすぎだろ……」
「独身男には人権ねえのか……あとハゲてねえよ」
女性陣にボロカスに言われて涙目になるパウロとドガルを、マグは横目で見てほっとする。昨日までは自分もあの枠だったのだ。
「各員傾聴!」
バステンが声を張り上げると傭兵たちは雑談を止め整列する。
「初陣をよく生き残った! しかも特大のイレギュラーまであったのに、お前たちはそれすら五体満足でくぐり抜けた! 自分たちの成果を誇れ!」
バステンに褒められて、まんざらでもない見習い傭兵たち。
「初陣を生き残り、激戦を生き残ったお前たちはもう見習いではない! この訓練をよく耐え抜いた! 今から立派な傭兵だ!」
彼らの脳裏に辛くて苦しい記憶が蘇る。バステンとルーナのシゴキは大の大人が音を上げるほど激しいものだったからだ。
「スラムにはまだ傭兵になりたいやつが大勢いる。見どころのありそうなやつは、順次鍛えていくつもりだ! お前らはそいつらの先輩として、オボロ傭兵団第一期生として、模範になるように!」
第一期生。
聞き馴染みのない言葉だが、なんて感じな言葉なのだろうか。
つまりこのあと入ってくるすべてのオボロ傭兵団、団員たちの先輩になるということだ。
胸中に誇りが満ちていく一方で、模範となる立場に対する責任感も芽生え始めていた。
「訓練の再開は三日後とする! 明日明後日はよく休むように!」
「っしゃぁ!」
「ギャンボォ!」
ゼフとロスカがガッツポーズをして喜ぶ。
「ただし、報告書を今日の夕飯前までに提出するように!」
「うげぇ……」
「ぎゃ、ギャンボォ……」
そして見るからに気落ちする二人。
「う、うっす。団長。おれ、報告書とかよくわかんなくて……何をかけばいいっすか?」
「難しく考える必要はない。①うまくいったこと、②うまくいかなかったこと、③次がんばりたいこと。この三つを書けばいい」
ゼフ向けに噛み砕いて説明する。
「そ、それならわかると思いまっす!」
「あ、そんなんでいいの? なら楽勝だね。賭場行こっと」
「ふむ。ロスカは余裕そうだな。みんな、書き方は奴に訊け。ロスカ、逃げるなよ」
「ギャンボォォォォ!」
ロスカのむなしい悲鳴が響き渡る。
「あと、まだ今日は仕事をしている認識でいろよ。任務後に行う三つの『せ・い・か』、教えたはずだな。ゼフ、言ってみろ」
「う、うぇっ!? えっと、えっと……あ、『整備』っす!」
突然、抜き打ちテストされてゼフがしどろもどろになりながらも、なんとか答える。
「よし、その通りだ。
武具・装備の整備。血や泥を落とす、刃を研ぐ、破損箇所の修繕依頼。矢・弾・道具など消耗品の補充チェック。忘れないようにしろよ」
「う、うっす」
「次、『い』だ。ドガル、分かるか?」
「い、『医療』……だったはずだ」
冷や汗を垂らしながら答えるドガルに、バステンは頷く。
「そうだ。
任務のあとは医療・治療・休養が大事だ。傷がある者は『治癒師』に……っと、ここにはいないんだったな。治療係に報告しろ。今回はティナが担当だな。情報がまとまったら俺に報告。そして、疲労回復のため食事・水分・睡眠を優先してしっかり休養するんだ。ドガル、今日は酒も娼館も止めてさっさと寝ろ。いいな?」
「ぐ、ぐぬぬぬ……了解だ。団長……」
「では最後の『か』。ナリャ、分かるか?」
「『確認』だよね、団長? 戦果の確認はもちろん、任務を通して得た経験とかの確認」
「その通りだ。自分が何を得て何が足らなかったのか。よく確認しろ。常に考える癖をつけろ。そうすれば一流の傭兵になれる。なにもこれは傭兵に限ったことじゃない。この先、仕事をしていく上で、基本となる考え方だ」
「りょーかい、団長。ちゃんと確認しておくね」
「ナリャは優秀だな。隣の幼なじみが分からなかったら教えてやれ」
「はーい!」
「俺からは以上だが、ルーナは何があるか?」
「いえ、団に関することは何もないです。ただセラミナに一つ確認したいことが」
「え、わ、私ですか?」
傭兵たちのやりとりを劇の一幕でも見るように、興味深く見ていたセラミナが慌てて立ち上がる。
「急で申し訳ないのですが、昼食はまだ余っていますか? 帰ってきたばかりで傭兵たちは疲れています。なるべく手近なところて済ませたいのですが」
「あ、ああっ。そういうことですね。はい。大丈夫ですよ。たくさんあるので安心してください。今日は……新鮮な朝採れ野菜のサラダと、ダイオークのタルテッラ、焼きたて自家製パン、シャイバードの骨スープですよ」
「うおおおおっ、肉ぅぅぅ!!!」
「やった! お野菜!」
「焼き立てパァァァン!」
食べ盛りのゼフ、ナリャ、セリンから歓声が上がった。そしてすぐにセリンは我に返って恥ずかしそうに顔を伏せた。
「ありがとうございます。急だったので、私たちの分は無いかと思っていましたが」
「ふふーん。それはですね、御主人様からたっぷり予算を貰っているから、たっぷりご飯を用意することができるのです! だから、お礼は御主人様にお願いします!」
「……さすがは御主人様。感謝申し上げます」
なぜか自分のことのように胸を張るセラミナと、その場で跪くルーナ。
「……なあ、パウロ。俺はまだその御主人様とやらに会ったことないんだがどんな人なんだ?」
「私も気になるねえ」
「俺も」
「私たちも」
「あーん? お前ら……あぁ、そうか。傭兵団の募集と訓練はずっとスラムの方でやってたからか。じゃあ亜人様とも会ったことねえのか」
「おう。そうなんだよ」
「うーん、そうだなあ……タネズの旦那は……うーん、やばい人だよ」
「やばい人って何さ」
「もっと具体的にお願いします」
「そうだな……。改めて言われるとなんて言えばいいのか」
パウロはポリポリと頭を書いて今までの彼とのやり取りを思い出す。
「見た目は世間知らずそうなあんちゃんなんだが、気付いたらギョッとすることをしでかしている。それで周りがあたふたしてる間に、いつの間にか何もかもが一変してる……そんな人だよ」
13
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる