龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

文字の大きさ
139 / 141
龍王と魔物と冒険者

135話目

しおりを挟む
最高位冒険者ベイビー・フランクリンとエンドのシンドゥラ。互いに剛と剛の戦い。
先手を取ったのは敏捷性で勝るフランクリンだが攻撃を当てた際にそのシンドゥラの堅牢な鎧に戦慄していた。まるで生身で鋼鉄にぶつかる感触。屈強な肉体を持つフランクリンにして骨が軋む。


「ふんっ!」


「攻撃が効いてない!?というかなんでさっきより鎧も強くなってるですか!意味不明ですよ、アナタ」


「ふんっ 簡単なこと。達人は武器を己が手足とする!ならば、防具も肉体にすることができよう」


「???言ってること意味不明よ。武器は武器。防具は防具よ。分かった、じゃあこれならどうね」


すばしっこく攻撃を掻い潜り、フランクリンはシンドゥラの肩に乗る。続いて右手による平手打ち。


「この程度!当て身技など通すものか」


「それはどうでしょ」


強力だがやはりシンドゥラの頭部を守る兜により阻まれる。だが右手が接触してコンマ0.01秒以内に今度は左手で右手とは異なる打撃を与えた。するとどうなるか。衝撃が反響して身体が内部で激しく鎧に打ちつけられる結果となるのだ。


「ぐはっ!いったいこれは」


「わーお!攻撃の振動は通すから、右手で打った振動に反する力を左手で打って増幅させたね。効いたでしょ?」


「鎧通しというやつか!見た目によらず、特殊な技も持っているのだな。なんという名だ?」


「んー。私今の初めてやりました。だから今のに特に名前ないね。ネーミング募集するよ」


「ふ、ならば喰らったオレが名付けよう。悶絶破壊地獄木霊打ち、でどうだ」


「いやダッサッッッ!!!」


「なんかネーミングも長いし!」


「む、そうか。け、結構良いネーミングセンスだと思ったのだが、やはり貴殿は計り知れない女子だな」


オークの脳は比較的小さい。だがフランクリンの攻撃(悶絶以下略)により脳は的確に揺らされており、足元すら覚束ず身に付けている全てが重く感じる。長期戦は不利だ。ならば、と防具を全て脱ぎ捨てて少しでも身体を軽くする


「戦いの最中で男女を持ち出す必要ありますか?あるのは強い弱いだけね」


「……そうだな。非礼を詫びる。ベイビー・フランクリン殿。このシンドゥラ、貴殿と1人の武人として戦えること光栄に思う」


「本当に礼儀正しいね、お前……ところで防具捨てて良いの。もう防げないよ?」


「心配ご無用だ。いくぞ フランクリン殿」


「長いから特別フランで呼ぶの許すね。
いつでも始めていいよ。シンドゥラ」


「「……」」


決着をつけるために凄まじい踏み込みと共に互いの拳が交差する。首が同時に大きく跳ね上がる。だがそれにも怯まずに直ぐに拳打をぶつけ合う。血と肉のぶつかり合い。肘打ち、掌打、飛び膝蹴り、手刀。互いに剛を主体とした似通った戦闘スタイル。その全てが破壊に特化した一撃必殺。そのどれもが小手先ではない全力の一撃であり当たれば絶命しかねないだろう。防いでるわけでも躱しているわけでもないがマトモに攻撃を浴び続けてそれでも2人は立っている。
そこから4分44秒後に決着は着いた。立っていたのは────。






「……ここは」


パチリとマトローナは目を覚ます。誰かの背中におぶられて城の外を歩いている最中に気が付いた様だった。


「目が、サめたんですね、姉御。へ、へへ」


それはフードの背中であった。彼は呼吸も整わず、息も絶え絶えといった様子で火の手が上がる森の中をマトローナを抱えて独りで逃げていたのであった。


「どれくらい寝ていた。他のみんなは」


「わかりません、なんにも。」


「下ろせ!戻らない、ッッッ~!」


痛みが吹き返して、言葉にならない。それをみてフードも言い聞かせるようにぼやいた。


「今更モドってもどうにもなりませんよ……それに今の姉御じゃみすみす死ににいくようなもんだ」


「煩い。離せ、逃げるなんてアーカーシャ様に合わせる顔が!」


「姉御、俺あんたには生きててほしい。それにアーカーシャってひとも姉御が生きてるほうがゼッタイよろこびますよ」


「会ったことも無い、お前なんかが!」


背中で暴れるが離す様子はない。マトローナはそこで漸く気付く。自分の手にベッタリとくっ付く夥しい血の量に。彼女の血ではない。では誰のだ。決まっている。フードの血だ。
その血は赤黒く濁っていた。内臓がやられているのだ、彼自身動くだけでも身が捩れるほどの激痛に襲われているはずだ。
マトローナも直ぐに理解した。これは早く手当てをするべきだと。


「お前、この怪我、早く止血しないと」


「ん?あぁ、へ、へへ、さっき戦ったときにチョっとね。
でも、ちゃーんと姉御がヤラレタ分もきっちりノシ付けて返しときましたからね。ザマーみろってんだ、バイデハンチョー……」


「……そうか。頑張ったんだな、お前も。丁度いい。あっちの木陰で休めそうだぞ」


「それとここまで助けてくれてありがとう。
兄貴の方とはどこかで逸れたの?」


「……ええ、兄貴は先に遠くにイってます。だから今のコトバちゃんとオレのほうからツタえときますよ。アトから逢えるとおもうんで。へ、へへ。よろこびますよ」


「ッッ~!姉御の方こそケガのほうはダイジョーブですかい?」


「こんな時まで。自分の心配をしてろ」


マトローナを下ろしてフードは近くにあった木に寄りかかる。
止血しようと糸を出したマトローナは彼と向かい合ってその姿にギョッとする。背中からだと見えなくて分からなかったが、フードの負っていた傷は重傷という言葉が生温く感じるほどの最早損傷であった。身体の部分部分が抉られて消失していたのだ。応急処置でなんとかなるレベルではない。もうこれは医術に心得が無いマトローナがどう手を付ければ良いのか分からない程のものである。


「っああ!なんだこれ!どうしたら、縫合して、それから」


分からない。分からない。分からない。マトローナには何も。糸で傷口を縫う。それでもポッカリと空いた孔から出血は止まらなかった。手で圧迫して止めようとしても、指の隙間から絶え間なく流れ落ちてゆく。血が。命の残量が。
止まれ止まれ止まれ。そんな彼女の願いも虚しく、血は流れ続けていた。
思わず道を振り返り確認してそして愕然とした。とっくの昔に失血死してもおかしくない血の海が延々と奥まで続いていただけだった。


「姉御、おれ、」


「喋るな。いや、喋ってろ。意識を保たせとけ。
大丈夫だ。腕の良い薬師を知ってる。そいつの魔力を辿る」


「少し、揺れるぞ」


マトローナも十分重傷で死に体だ。少なくとも当分は絶対安静にしなければならない程の怪我を負っているのは間違いない。そんな身体の悲鳴を無視して糸で自分とフードの身体を括り付ける。そこから、糸を木に飛ばしてくっ付け、伸縮させることでスイングしながらの高速移動を行った。


「姉御……にあわないかもしれねーねど…おれジツは料理が好きでさぁ…だから いつか 兄貴といっしょにどこでもいいから…料理のお店をもつのがユメだったんだ……そんでみんなにうめえって言ってもらうんだ……できるかな」


「出来るよ。だって美味かった。私が保証する。丁度いい、バルディアでお店を出すといい。お前ならきっとやれる」


「へ、へへ やったぜ 姉御のおスミツキ……だ」


「お、おい!?目を開けろ!」


「……」


「死ぬな!おいっ!」


揺すっても呼びかけても反応しない。焦るマトローナの背中で無言のフードが不意に笑った


「ビックリ しました? 姉御の 背中で 死ぬわけないじゃないですか」


「おまえっ! 私を驚かせるなんて良い度胸ね。回復したら兄弟共々地獄を見せてあげるから覚悟なさい」


「だってよ 兄貴」


安心してもいられない。マギルゥとの距離はまだ大分先だ。急がないといけない。フードがいつ限界を超えてもおかしくないのだから。



(……なんで私笑っちゃうくらい今こんなに必死なのかしら?)


弱肉強食の世界で生きてきたマトローナにとって死とは特別なものではなく身近なものであった。だから躊躇わずに相手の命を奪えるし大切な仲間が死んでもある種受け入れることが出来た。命とは簡単に終わる必然の理だと理解しているからだ。マトローナだけじゃない。生物は死を受け入れている。
いつの時代もどこの世界でも人だけが死に抗う。死を拒む。
マトローナは昆蟲人に進化して、少しだけ感覚が人に寄ってしまっていた。果たして今の彼女は強くなったのだろうか。弱くなったのだろうか。一概には言えない。
血が抜けて、生気が抜けていく。だというのにフードの体は寧ろどんどん異様に重くなっていく────これが命の重みなのだと今のマトローナは痛感した。


「んがー!ま、マトローナ!?そんな大怪我で動いてお前大丈夫なのか!?」


「わ、私のことはいいから、こいつの治療を早く……フード、着いたぞ!頑張った……な……」


「私、を、バカに、してるのか……?
2回も同じ手をくうわけ、ないだろ。だから早く目をあけろ!」



その問いかけにもう返事は返ってこなかった。
マトローナがマギルゥと合流したのに要した時間は決して短くはない。人は心肺が停止してから何分で救命が可能か。5分か10分か。どちらにせよフードの命は既に溢れ切っていた。


「ごめん。もう彼は……」


マギルゥの呟きにマトローナは無言で呻くだけであった
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...