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1540 レイチェル 対 ジャック
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背後からの殺気を感じ取ったレイチェルは、反射的に頭を下げた。
直後に頭を掠めた熱く鋭い斬撃は、瞬き程の差でレイチェルの首を斬り落とすところだった。
刃に触れた一つまみ程の赤い髪は切り取られ、燃えながら宙にまき散らされる。
レイチェルはそのまま前方に地面を蹴ると、後ろの男から大きく距離を取った。
「ほぅ・・・」
ジャック・フレイジャーは交差させた両腕をゆっくり下すと、赤毛の女戦士に観察するような目を向けた。
「まさかこれを躱すとはな・・・勘が良いだけじゃない、そうとうな数の死線を潜り抜けているようだな」
煙の如く姿を消して背後から刺す。初見でこれを躱された事は初めてだった。
ここまでのレイチェルの戦いぶりは見ていた。力量は把握していたつもりだったが、レイチェルの実力は自分の想定を大きく上回っていると認識を改めた。
「ふん・・・お前といい、レイ・ランデルといい、帝国の連中は後ろから襲うのが好きなんだな?悪趣味な事だ」
一つ大きく息をつくと、レイチェルは牽制するように左拳を前に、右の拳を顔の横で構えた。
「あまい事を言うんだな?殺し合いだぞ?楽に仕留める方法があるならそうするだけだ」
レイチェルに何を言われようが意に介する事はない。ジャック・フレイジャーは表情を変える事もなく、
再び上体を揺らしながら、ザックザックと砂を踏みながら歩きだした。深紅の鎧からは炎が激しく立ち上り、熱波がレイチェルを襲う。闘気で身を護っていなければ、とても対峙できなかっただろう。
来る!
表情には出さないようにしていたが、その頬を一筋の汗が伝っていた。
まさかここまであっさりと、背後を取られるとは思わなかった。
レイ・ランデルは空間転移でレイチェルの背後をとってきた。それはある種の魔法のようなものだったが、この男は違う。姿を消すという意味では同じでも、内容はまるで別物だ。
右の拳で殴った時の手応え、あれは霧の中に手を突っ込んだような・・・まるで何の手応えも無かった。
そしていつの間に後ろを取られたのか?
まるで動きが見えなかった。
・・・どうする?
今ので一発だけで決めつけるのは早計だが、おそらくこいつは霧や煙のように消える事ができる。
だから私の拳が貫通したかのようにすり抜けたんだ。この推測通りならば打撃は一切効かないだろう。
ザックザックと足を進めてくるジャック・フレイジャーに対して、レイチェルは拳を構えたまま後ろに下がった。
「下がるのか?威勢が良い女だと思ったが、案外臆病なんだな?貴様を少々過大評価していたようだ」
「ふん、なんとでも言えばいい」
期待外れだったと言わんばかりの言葉だが、レイチェルは煽りに乗らずに流した。
突破口が見つからないまま無暗に攻撃をしても、同じ轍を踏むだけだ。
ただでさえ、ここまでの連戦で体力を消耗しており、愛用の二本のダガーナイフまで落としてしまった。今の自分にはこの肉体しか武器が残っていない。だからこそ慎重に見極めて戦っていかなければならない。
・・・・・切り札は残してあるが、これは本当に最後の手段だからな
腰の後ろに差した、視認できない程に薄く透明なナイフに意識を置いた。
ジャックが前に出れば、レイチェルはその分だけ下がる。
二人の間には数メートルの距離があり、これは両者の間合いギリギリだった。
有効な打開策を見つけられないレイチェルは下がるしかなく、現状優位に立っているジャックとしては距離を詰めたい。
両者の考えは真逆であり、いつまでも続く睨み合いに、ついにジャックが痺れを切らした。
「・・・逃げるばかりか、もういい。貴様はここで死ね」
失望したように言葉を吐き捨てると、ジャック・フレイジャーの体がブレて霞み出した。
ジャックの体はまるで煙のようにその形を不安定なものに変え、雲が千切れるように分裂して周囲に広がっていった。
「ッ!」
これは!?
ソレは煙そのものだった。ジャック・フレイジャーの実体は消え去り、かろうじて人の面影が残る煙となって、レイチェルに迫り来る。
「・・・やっかいな野郎だ」
まだ有効な打開策は見つからない。だが敵が攻めに入った以上、考えがまとまらなくとも戦うしかない。
スッと目を細める。レイチェルの腹は決まった。
やってやる!
ぐっと左足で地面を踏みしめると、腰を回して右足を高く蹴り上げる!
鋭くも重い蹴りがジャックの顔面を蹴りぬいた。人の顔をした灰色の煙が、レイチェルの蹴りで霧散する。
お前のやり方は想像がつく、煙を盾に相手の死角に回り込む。相手を惑わすヤツらの常套手段だ。
そしてお前は・・・・・
「ここだ!」
蹴り抜いた勢いを生かして体を左に回転させる、そして左の裏拳を自分の背後に立つ影に叩き込む!
「っ!」
だが実体だと思ったソレもレイチェルの拳で散り散りと消えていく。これもまた煙だった。
その時、頭にかかった影にレイチェルは空を見た。太陽の光を遮り、二刀のナイフを握り降って来るのは炎の塊ジャック・フレイジャー!
深紅の鎧が発する炎を帯びて降り落ちてくる姿は、小規模の太陽と見紛う程のものだった。
「深紅の刃で切り刻んでやろう」
「くっ、上か!」
やはり厳しい、煙と熱に気流を乱されて空気の動きが読めない。どうする?凄まじい熱気だ、闘気で炎を防げてもあのナイフを拳で捌けるか?
くそ、ダガーナイフさえあれば・・・!
「フン!」
振り降ろされる深紅のナイフ!圧倒的な火力!燃え上がる炎を帯びたその刃は、刀身を何倍にも大きく見せる!
「まずい!」
受けきれない!瞬時に理解したレイチェルは、地面を後ろに蹴って飛び退いた。
灼熱のナイフは地面を抉り、焼けた砂が空高く噴き上がる!
たった一撃で圧倒的な火力を見せつけた、そしてジャックの攻撃はこれで終わりではない!
ぐっと右足に力を込めると、足場の砂を爆発させて飛び出した!
「っ!速い!」
「煙が遅いと誰が決めた?」
一瞬にしてレイチェルに距離を詰めると、ジャックの二刀のナイフがレイチェルを襲う!
首を狙う左のナイフを間一髪で顔を後ろに反らして躱す。振り抜かれたナイフから発せられた炎がレイチェルを襲う。闘気で身を護っていても、強烈な熱波にキツく眉を寄せて、ギリっと歯を食いしばった。
続けざまに右のナイフがレイチェルの腹部に突き出される!
身を捻って躱すと、躱される事を読んでいたかのように、ジャックの左の上段蹴りがレイチェルの顔面に繰り出される!
文句無しのタイミングだったが、レイチェルの動体視力もずば抜けている。腰を落として蹴りを躱すと、そのまま両手を地面について軸にし、ジャックの足を刈り取るように右足で蹴りつけた!
「っ!?」
だがレイチェルの右足には、ジャックの足を打ち付けた衝撃がなかった。蹴りつけたはずのジャックの足が消え去る。
しまっ・・・!
「ぬるいな」
ソレがジャックの形をした煙だと理解したその時、体一つ分ずれた左脇から、炎を纏った蹴りがレイチェルの体を蹴り飛ばした!
「ぐぅッ!」
読み合いでレイチェルの上を行っても、ジャックの表情に変化はなかった。
砂の上に転がされたレイチェルを見ても、ただ冷たい眼差しを向けるだけだった。
「煙を捕まえる事は不可能、ゆえに俺と戦うと決めた時、貴様はすでに敗北しているんだ」
直後に頭を掠めた熱く鋭い斬撃は、瞬き程の差でレイチェルの首を斬り落とすところだった。
刃に触れた一つまみ程の赤い髪は切り取られ、燃えながら宙にまき散らされる。
レイチェルはそのまま前方に地面を蹴ると、後ろの男から大きく距離を取った。
「ほぅ・・・」
ジャック・フレイジャーは交差させた両腕をゆっくり下すと、赤毛の女戦士に観察するような目を向けた。
「まさかこれを躱すとはな・・・勘が良いだけじゃない、そうとうな数の死線を潜り抜けているようだな」
煙の如く姿を消して背後から刺す。初見でこれを躱された事は初めてだった。
ここまでのレイチェルの戦いぶりは見ていた。力量は把握していたつもりだったが、レイチェルの実力は自分の想定を大きく上回っていると認識を改めた。
「ふん・・・お前といい、レイ・ランデルといい、帝国の連中は後ろから襲うのが好きなんだな?悪趣味な事だ」
一つ大きく息をつくと、レイチェルは牽制するように左拳を前に、右の拳を顔の横で構えた。
「あまい事を言うんだな?殺し合いだぞ?楽に仕留める方法があるならそうするだけだ」
レイチェルに何を言われようが意に介する事はない。ジャック・フレイジャーは表情を変える事もなく、
再び上体を揺らしながら、ザックザックと砂を踏みながら歩きだした。深紅の鎧からは炎が激しく立ち上り、熱波がレイチェルを襲う。闘気で身を護っていなければ、とても対峙できなかっただろう。
来る!
表情には出さないようにしていたが、その頬を一筋の汗が伝っていた。
まさかここまであっさりと、背後を取られるとは思わなかった。
レイ・ランデルは空間転移でレイチェルの背後をとってきた。それはある種の魔法のようなものだったが、この男は違う。姿を消すという意味では同じでも、内容はまるで別物だ。
右の拳で殴った時の手応え、あれは霧の中に手を突っ込んだような・・・まるで何の手応えも無かった。
そしていつの間に後ろを取られたのか?
まるで動きが見えなかった。
・・・どうする?
今ので一発だけで決めつけるのは早計だが、おそらくこいつは霧や煙のように消える事ができる。
だから私の拳が貫通したかのようにすり抜けたんだ。この推測通りならば打撃は一切効かないだろう。
ザックザックと足を進めてくるジャック・フレイジャーに対して、レイチェルは拳を構えたまま後ろに下がった。
「下がるのか?威勢が良い女だと思ったが、案外臆病なんだな?貴様を少々過大評価していたようだ」
「ふん、なんとでも言えばいい」
期待外れだったと言わんばかりの言葉だが、レイチェルは煽りに乗らずに流した。
突破口が見つからないまま無暗に攻撃をしても、同じ轍を踏むだけだ。
ただでさえ、ここまでの連戦で体力を消耗しており、愛用の二本のダガーナイフまで落としてしまった。今の自分にはこの肉体しか武器が残っていない。だからこそ慎重に見極めて戦っていかなければならない。
・・・・・切り札は残してあるが、これは本当に最後の手段だからな
腰の後ろに差した、視認できない程に薄く透明なナイフに意識を置いた。
ジャックが前に出れば、レイチェルはその分だけ下がる。
二人の間には数メートルの距離があり、これは両者の間合いギリギリだった。
有効な打開策を見つけられないレイチェルは下がるしかなく、現状優位に立っているジャックとしては距離を詰めたい。
両者の考えは真逆であり、いつまでも続く睨み合いに、ついにジャックが痺れを切らした。
「・・・逃げるばかりか、もういい。貴様はここで死ね」
失望したように言葉を吐き捨てると、ジャック・フレイジャーの体がブレて霞み出した。
ジャックの体はまるで煙のようにその形を不安定なものに変え、雲が千切れるように分裂して周囲に広がっていった。
「ッ!」
これは!?
ソレは煙そのものだった。ジャック・フレイジャーの実体は消え去り、かろうじて人の面影が残る煙となって、レイチェルに迫り来る。
「・・・やっかいな野郎だ」
まだ有効な打開策は見つからない。だが敵が攻めに入った以上、考えがまとまらなくとも戦うしかない。
スッと目を細める。レイチェルの腹は決まった。
やってやる!
ぐっと左足で地面を踏みしめると、腰を回して右足を高く蹴り上げる!
鋭くも重い蹴りがジャックの顔面を蹴りぬいた。人の顔をした灰色の煙が、レイチェルの蹴りで霧散する。
お前のやり方は想像がつく、煙を盾に相手の死角に回り込む。相手を惑わすヤツらの常套手段だ。
そしてお前は・・・・・
「ここだ!」
蹴り抜いた勢いを生かして体を左に回転させる、そして左の裏拳を自分の背後に立つ影に叩き込む!
「っ!」
だが実体だと思ったソレもレイチェルの拳で散り散りと消えていく。これもまた煙だった。
その時、頭にかかった影にレイチェルは空を見た。太陽の光を遮り、二刀のナイフを握り降って来るのは炎の塊ジャック・フレイジャー!
深紅の鎧が発する炎を帯びて降り落ちてくる姿は、小規模の太陽と見紛う程のものだった。
「深紅の刃で切り刻んでやろう」
「くっ、上か!」
やはり厳しい、煙と熱に気流を乱されて空気の動きが読めない。どうする?凄まじい熱気だ、闘気で炎を防げてもあのナイフを拳で捌けるか?
くそ、ダガーナイフさえあれば・・・!
「フン!」
振り降ろされる深紅のナイフ!圧倒的な火力!燃え上がる炎を帯びたその刃は、刀身を何倍にも大きく見せる!
「まずい!」
受けきれない!瞬時に理解したレイチェルは、地面を後ろに蹴って飛び退いた。
灼熱のナイフは地面を抉り、焼けた砂が空高く噴き上がる!
たった一撃で圧倒的な火力を見せつけた、そしてジャックの攻撃はこれで終わりではない!
ぐっと右足に力を込めると、足場の砂を爆発させて飛び出した!
「っ!速い!」
「煙が遅いと誰が決めた?」
一瞬にしてレイチェルに距離を詰めると、ジャックの二刀のナイフがレイチェルを襲う!
首を狙う左のナイフを間一髪で顔を後ろに反らして躱す。振り抜かれたナイフから発せられた炎がレイチェルを襲う。闘気で身を護っていても、強烈な熱波にキツく眉を寄せて、ギリっと歯を食いしばった。
続けざまに右のナイフがレイチェルの腹部に突き出される!
身を捻って躱すと、躱される事を読んでいたかのように、ジャックの左の上段蹴りがレイチェルの顔面に繰り出される!
文句無しのタイミングだったが、レイチェルの動体視力もずば抜けている。腰を落として蹴りを躱すと、そのまま両手を地面について軸にし、ジャックの足を刈り取るように右足で蹴りつけた!
「っ!?」
だがレイチェルの右足には、ジャックの足を打ち付けた衝撃がなかった。蹴りつけたはずのジャックの足が消え去る。
しまっ・・・!
「ぬるいな」
ソレがジャックの形をした煙だと理解したその時、体一つ分ずれた左脇から、炎を纏った蹴りがレイチェルの体を蹴り飛ばした!
「ぐぅッ!」
読み合いでレイチェルの上を行っても、ジャックの表情に変化はなかった。
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