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【341 ペトラ 対 モズリー①】
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モズリーの槍を止めたのは、フローラの魔道具、エロールからもらったばかりの反作用の糸だった。
九死に一生、正にギリギリのタイミングだった。
駆け付けたフローラは、モズリーがエリンに向け炎の槍を構えた瞬間、咄嗟に反作用の糸を投げた。
間に合うかどうかは分からない。だが、フローラは反射的にマフラーに魔力を込めエリンに向け投げていた。
結果的にマフラーは、エリンの体に触れると同時に強力な結界を張り、エリンをモズリーの槍から護ったのだ。
そして、漆黒のマントで闇夜に紛れ、砦の上から飛び降りてきたペトラは、勢いそのままに大剣をモズリーの頭に叩きつけた。
「・・・チッ、兜ごと頭を叩き割るつもりだったんだが・・・さすがはディーン・モズリーという事か」
モズリーの深紅の兜は真っ二つに割られ、炎と共に欠片が舞い散った。
だが、剣が当たる瞬間に頭を振った事で、ペトラの剣は軌道をずらされていた。
兜の下の頭にまでは刃が達しなかったという事を瞬時に察すると、ペトラは大きく一歩飛び退きモズリーから距離をとった。
「た、隊長!・・・も、申し訳、ありません・・・」
「エリン、コイツは私がやる。あんたは隊の立て直しだ、急げ!」
距離を取ってはいるが、ペトラはモズリーから視線は切らない。
たった今エリンを追い詰めたスピードを見て、一瞬でも視線を外す事の危険を感じ取っていたからだ。
前方のモズリーを見据えたまま指示を出すペトラを見て、エリンも立ち上がった。
モズリーにただの一太刀も浴びせる事なく敗れたままこの場を退く事は、エリンにとって耐えがたい思いだった。だが、力の差は嫌という程思い知った。自分はモズリーの足元にも及ばない。
この場に留まってもペトラの足を引っ張るだけだ。
「分かりました!隊長、ご武運を!」
なによりも優先すべき事はこの戦争に勝つ事。個人の感情など些末な問題だ。
エリンはペトラに一礼をし、その場を後にした。
「・・・ふぅむ」
モズリーは自分に背を向けこの場を離れていくエリンを目で追っていた。
その背中に、腰に備えたナイフを投げつけようと構えるが、目の前に立つ、自分の兜を叩き割った金髪の女の眼光がそれを許さなかった。
「・・・投げないのか?」
モズリーがその手に持つナイフを下げたのを見て、ペトラがその内心を探るように目を細める。
「フッ、今投げたとて、貴様が叩き落としていただろう。なるほど、貴様がこの砦の総大将だな?」
「その通りだ。私はペトラ。ペトラ・ディサイア。ディーン・モズリー、貴様は私がここで斬り倒す」
両手で持つ大剣を下げ、左脇に構える。その刃は地面に軽く触れていた。
右足を前に出し、やや前傾の姿勢になる。
「ほぅ、その若さでワシを知っておるか?よかろう。娘、少しは楽しませてくれよ」
・・・地面を抉ってくるか?
ペトラの構えを目にし、モズリーは経験から攻撃を読んだ。
地面スレスレ、もしくは突き刺した場合、多くの場合は土をぶつける攻撃手段を講じて来る。
悪い手ではない。
範囲攻撃であり、複数の敵を相手にできるし、目つぶしとして決まれば有効である。
だが、今回モズリーは炎を纏っている。土など通すはずがない。
このペトラという女は、それが理解できないのだろうか?
いいや、そんなはずはない。
そんな頭で一軍の指揮官が務まるはずがない。自分の兜を叩き割った剣の腕と、ナイフ投げを止めた睨み。この場を引き受け、エリンを行かせた度胸と判断力。
並大抵の指揮官ではない。
おそらく地面を抉る攻撃は間違いないだろう。
だが、それは土をぶつける事を目的としていない。
それ以外の攻撃手段があるという事だな?
・・・・・よかろう。
このワシに真っ向勝負を挑んでくるその勇気に敬意を表し、貴様のその一撃、ワシも真正面から受け止めてやろう。
だが・・・つまらん一撃だったならば・・・その首、落とさせてもらおう!
モズリーは両手で槍を持つと、深紅の鎧から発する炎をより強く放出させた。
この男、ディーン・モズリーの事は以前ドミニク隊長から聞いた事がある。
数十年に渡り帝国を支え、数多の戦場で武勲を成した生粋の武人だ。
若い頃は師団長のまとめ役として立っていたらしいが、難のある性格のためその座を退く事になったという。
難のある性格とは、戦場であろうと対話で解決しようとする事。
さっき、エリンに降伏を進めていた事がいい例だ。
降伏を進めるにしても、あの場で指揮官のエリンの首を取ってからの方が、他の兵の士気を削ぐ意味でも効果的だっただろう。
だが、モズリーは多少痛めつけてくらいで降伏を提案してきた。
敵であろうと人命を重んじる事は美徳とも言えよう。モズリーという男の人物像もよく分かる。
しかし、帝国では反発が大きかったのだろう。
信念とも言える対話を貫いた事により、モズリーは師団長の座も降りる事になった。
私はこういう一本筋の通った男は嫌いじゃない。むしろ好感すら覚える。
こういう人格者には、できれば敵として会いたくなかった。
だが、現実として今この男は敵だ。
敵の信条、内面、余計な事を考えて情をかける事などもってのほかだ。
そして、この男は確実に私より格上の戦士。
ならば、全身全霊をもって剣をぶつけるのみ。
「・・・参る!」
ペトラの初撃はモズリーの読み通り、剣先を地面に突き刺し走らせ、頭上高く振り上げるものだった。
九死に一生、正にギリギリのタイミングだった。
駆け付けたフローラは、モズリーがエリンに向け炎の槍を構えた瞬間、咄嗟に反作用の糸を投げた。
間に合うかどうかは分からない。だが、フローラは反射的にマフラーに魔力を込めエリンに向け投げていた。
結果的にマフラーは、エリンの体に触れると同時に強力な結界を張り、エリンをモズリーの槍から護ったのだ。
そして、漆黒のマントで闇夜に紛れ、砦の上から飛び降りてきたペトラは、勢いそのままに大剣をモズリーの頭に叩きつけた。
「・・・チッ、兜ごと頭を叩き割るつもりだったんだが・・・さすがはディーン・モズリーという事か」
モズリーの深紅の兜は真っ二つに割られ、炎と共に欠片が舞い散った。
だが、剣が当たる瞬間に頭を振った事で、ペトラの剣は軌道をずらされていた。
兜の下の頭にまでは刃が達しなかったという事を瞬時に察すると、ペトラは大きく一歩飛び退きモズリーから距離をとった。
「た、隊長!・・・も、申し訳、ありません・・・」
「エリン、コイツは私がやる。あんたは隊の立て直しだ、急げ!」
距離を取ってはいるが、ペトラはモズリーから視線は切らない。
たった今エリンを追い詰めたスピードを見て、一瞬でも視線を外す事の危険を感じ取っていたからだ。
前方のモズリーを見据えたまま指示を出すペトラを見て、エリンも立ち上がった。
モズリーにただの一太刀も浴びせる事なく敗れたままこの場を退く事は、エリンにとって耐えがたい思いだった。だが、力の差は嫌という程思い知った。自分はモズリーの足元にも及ばない。
この場に留まってもペトラの足を引っ張るだけだ。
「分かりました!隊長、ご武運を!」
なによりも優先すべき事はこの戦争に勝つ事。個人の感情など些末な問題だ。
エリンはペトラに一礼をし、その場を後にした。
「・・・ふぅむ」
モズリーは自分に背を向けこの場を離れていくエリンを目で追っていた。
その背中に、腰に備えたナイフを投げつけようと構えるが、目の前に立つ、自分の兜を叩き割った金髪の女の眼光がそれを許さなかった。
「・・・投げないのか?」
モズリーがその手に持つナイフを下げたのを見て、ペトラがその内心を探るように目を細める。
「フッ、今投げたとて、貴様が叩き落としていただろう。なるほど、貴様がこの砦の総大将だな?」
「その通りだ。私はペトラ。ペトラ・ディサイア。ディーン・モズリー、貴様は私がここで斬り倒す」
両手で持つ大剣を下げ、左脇に構える。その刃は地面に軽く触れていた。
右足を前に出し、やや前傾の姿勢になる。
「ほぅ、その若さでワシを知っておるか?よかろう。娘、少しは楽しませてくれよ」
・・・地面を抉ってくるか?
ペトラの構えを目にし、モズリーは経験から攻撃を読んだ。
地面スレスレ、もしくは突き刺した場合、多くの場合は土をぶつける攻撃手段を講じて来る。
悪い手ではない。
範囲攻撃であり、複数の敵を相手にできるし、目つぶしとして決まれば有効である。
だが、今回モズリーは炎を纏っている。土など通すはずがない。
このペトラという女は、それが理解できないのだろうか?
いいや、そんなはずはない。
そんな頭で一軍の指揮官が務まるはずがない。自分の兜を叩き割った剣の腕と、ナイフ投げを止めた睨み。この場を引き受け、エリンを行かせた度胸と判断力。
並大抵の指揮官ではない。
おそらく地面を抉る攻撃は間違いないだろう。
だが、それは土をぶつける事を目的としていない。
それ以外の攻撃手段があるという事だな?
・・・・・よかろう。
このワシに真っ向勝負を挑んでくるその勇気に敬意を表し、貴様のその一撃、ワシも真正面から受け止めてやろう。
だが・・・つまらん一撃だったならば・・・その首、落とさせてもらおう!
モズリーは両手で槍を持つと、深紅の鎧から発する炎をより強く放出させた。
この男、ディーン・モズリーの事は以前ドミニク隊長から聞いた事がある。
数十年に渡り帝国を支え、数多の戦場で武勲を成した生粋の武人だ。
若い頃は師団長のまとめ役として立っていたらしいが、難のある性格のためその座を退く事になったという。
難のある性格とは、戦場であろうと対話で解決しようとする事。
さっき、エリンに降伏を進めていた事がいい例だ。
降伏を進めるにしても、あの場で指揮官のエリンの首を取ってからの方が、他の兵の士気を削ぐ意味でも効果的だっただろう。
だが、モズリーは多少痛めつけてくらいで降伏を提案してきた。
敵であろうと人命を重んじる事は美徳とも言えよう。モズリーという男の人物像もよく分かる。
しかし、帝国では反発が大きかったのだろう。
信念とも言える対話を貫いた事により、モズリーは師団長の座も降りる事になった。
私はこういう一本筋の通った男は嫌いじゃない。むしろ好感すら覚える。
こういう人格者には、できれば敵として会いたくなかった。
だが、現実として今この男は敵だ。
敵の信条、内面、余計な事を考えて情をかける事などもってのほかだ。
そして、この男は確実に私より格上の戦士。
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「・・・参る!」
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