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【342 ペトラ 対 モズリー②】
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「むっ!」
モズリーとペトラ、対峙する二人の距離は数メートル開いている。
その場で剣を振るっても届かせる事はできない。数歩間合いを詰めてやっと剣が届く距離である。
だが、ペトラはその場で剣を走らせ、地面から空へ向かい高々と振り上げた。
地面から抉られた衝撃で、大量の石と土がモズリーに向け飛ばされる。
・・・がっかりさせてくれる。
ワシの兜を叩き割った女だ。それなりの力量の持ち主かと思ったが、そのままの一撃とは・・・
どうやら買いかぶっていたようだ。
モズリーは深紅の鎧の炎をより強く発する。ペトラが放った石と土などまるで気にも留めずに一歩大きく踏み込んだ。
「この石と土ごと、我が槍で粉砕してくれ・・・」
槍を握る両手に力を込め、ペトラの体ごと薙ぎ払おうと腰を捻ったその時、モズリーの経験が本能に訴えた。
躱せ!
無理な体勢だったが本能が命じるまま、モズリーは右足の軸先を正面から左へ変え飛んだ。
正面から受け止めた上で粉砕する。
そう決断したモズリーの判断を覆す事になったが、結果その判断は正しかった。
「むぅッ・・・!?」
無理な体勢で回避したため、完全には躱しきれなかった。
石と土は問題ない。深紅の鎧の炎により完全に防がれた。
しかし、それ以外のなにかが鎧の肩に当たり、左肩の装甲を真っ二つに切断していたのだ。
「これは・・・」
僅かな時間、綺麗に切り落とされた肩当てを目に、モズリーは逡巡する。
攻撃の正体は全く見えなかった。だが、このペトラという女は、石と土以外にも何かを飛ばしたのだ。
それは目に見えないなにか。しかし、この切り口を見るからに、鋭利な刃の類だろう。
それも、この炎すらものともせず切り裂いてくるほどの。
モズリーがその考えに至るまでに、ペトラは距離を詰めていた。
この勢いのまま一気に仕留める!
よほど勘がいいのか、初見でアレを躱された事には驚いた。
だが、向かい合ってディーン・モズリーが私より格上なのは分かっていた。
驚きはしたけど、予想外とまではいかない。
少なくともディーン・モズリーの気を逸らすことはできた。
私が主導権を握っているうちに、実力差が如実に表れる前に、この勢いのままコイツを倒す!
上段からの斬り落とし、打ち下ろしからの脛斬り、そのまま喉元を狙った突きあげ。
ペトラの勢いに乗った連続攻撃だが、モズリーは紙一重で身を翻し躱すと、大きく後ろに飛んで脛斬りを回避し、突き上げを槍で弾き防いだ。
ペトラの奇襲による動揺はすでに無い。
今ペトラは、モズリーとの大きな実力差を、息もつかない連続攻撃でかろうじて埋めている。
だが、選択する連続攻撃、突くか?払うか?振り下ろすか?
頭か?胸か?腕か?足か?
その一手を誤った時、モズリーの槍にその体を貫かれるだろう。
さすがだ、ディーン・モズリー。私はこの五年で自分が強くなったと思っている。
師団長のコバレフとの戦いでも、敗れはしたがそれなりには戦えた。
だが、数十年に渡り帝国を支えた本物の武人である貴様とは、ここまでの差があったのか。
ペトラが何十と繰り出す斬撃もモズリーにかする事すらできない。
だが、この五年、休まず修練に明け暮れたペトラは体力の消耗をまるで見せず、その攻撃は止まる気配が無い。
そして常に最適な一撃を選択しているため、モズリーは反撃しようにも、反撃に移るための一瞬を作る事ができなかった。
まるで当たらない。嫌になってくるよ。
でも、いいさ・・・私は体力には自信があるんだ。
あんたはどうだい?技は健在でも、年齢による衰えはあるんじゃないのか?
私が攻撃の手を誤るか、あんたのスタミナが切れるのが先か・・・勝負だ!
娘、いや剣士ペトラよ。なかなかの腕前だ。
このワシに反撃の間を与えぬ連続性、そしてここまで何十と剣を振るいながら、技の選択を誤らぬのは称賛に値する。
僅かでも甘い剣を撃つならば、即座にその首を落としてやるところだが、この局面で限界を見極め振るってくる気迫も大したものだ。
そして、ここまでの連撃の中で、初撃以外まだあの技を出していない。
その不気味さが、ワシに更なる警戒を与え、慎重にさせている。
おそらく勝負所にとっておくつもりだろうが、ここまで出さぬ事で牽制になっている。
剣だけでなく頭も切れる。総大将に相応しい器を持っているか。
いいだろう。目を見れば分かる。これだけ剣を出しても当たらないのに、貴様の目は諦めていない。
力の差に絶望していない。それどころか勝機有りと見ている。
剣を振り続ければいつか当たると思っているのか?いや、そんな願望ではないな。
確実に当てるつもりだ。根競べか?
貴様がワシに反撃の一手の与えぬまま、ワシの体力が尽きるその時まで剣を振るい続けるというのか?
・・・・・クックック・・・面白い・・・実に面白い!
久しく忘れていたぞ、この感覚!
力が周知されていくと、誰もが挑んでこなくなった。
ルシアンとて、ワシには敵わんと分かっているから、鍛錬はしても勝負は挑んでこない。
いつしかワシも、ただ若手に指導をつけるだけのぬるま湯にどっぷり浸かっていたようだ。
剣士ペトラよ!感謝する!
貴様のような命を懸けて挑んでくる強者を待っていた!
ワシと貴様の意地、そして命を懸けたこの勝負!全力を持って応えよう!
モズリーの身に纏う空気が変わった事を、ペトラは敏感に感じ取った。
・・・へぇ、どうやら本気になったみたいだね。
ディーン・モズリー、あんた今、自分がどんな顔してるか分かってる?
嬉しそうに笑ってんじゃん?
私を認めてくれたんだね?
なら・・・剣士として私もその期待に応えないとね!
「ハァァァァァッツ!」
ペトラの剣圧が増した。
気合と共に繰り出される剣は、先程までより速く鋭い。
炎も斬り裂くペトラの剣が、とうとうモズリーの頬をかすめた。
振り抜いた剣の切っ先から、その赤い血が飛ばされる。
「ぬぅっ!」
ここに来て、ペトラの剣がついにモズリーを捉え始めた。
モズリーは頬に感じる微かな痛みに片眉を上げた。
ワシの気に対抗するように、気を入れ直したようだが、それだけではない。
タイミングが合ってきている。
そして、最小限の動きで躱しているが、こやつ!ワシの動きを読んでいるのか?
この戦いの中で成長しているというのか!?
・・・フハハハ・・・剣士ペトラよ!素晴らしいぞ!
やってみせろ!その体力が尽きる前に見事ワシを斬ってみせろ!
ギラギラとした闘争心剥きだしの目、強敵に出会えた隠しきれない喜び・・・指揮官としてではない。
一戦士としてのディーン・モズリーがその顔を見せた。
モズリーのプレッシャーが増した・・・!
ここからはもっと速く・・・もっと正確に・・・より厳しい技が求められる・・・
すでに百を軽く超える剣を振っている。
私の剣もモズリーに届くようになってきた。だが、モズリーの動きも速くなった。
剣を振り終わるか終わらないかの間で、モズリーは反撃の体勢に入っている。
そこで打たせずに、かろうじて私が攻撃の主導権を握れているのは、初撃からの連続攻撃、流れを手離していないからだ。
これまでで一番深い斬撃がモズリーの右肩に入り、モズリーの肩の装甲を斬り飛ばした。
いける!ここで刃を横に寝かせ薙ぎ払う!
振り下ろした剣をモズリーの左脇腹に目掛けて、振り抜く!
「剣士ペトラ・・・焦ったか?」
ペトラの刃がモズリーの腹に食い込むかと思われた時、ペトラは確かにモズリーの声を聞いた。
まるで時が圧縮されたかのように、一瞬一瞬がハッキリと見える。
数百という剣撃の選択を誤る事なくこれまで振るってきた。
だが、深い一撃が入り、勝機が見えた事で、ペトラの剣に、ここで勝てるという僅かな焦りが出る。
モズリーの炎の槍がペトラの胸元目掛け突き出される。
それはペトラの後から放った一撃だが、それでもペトラより速い一撃だった。
槍の穂先が迫る。
ペトラは両手で握っている剣の柄から左手を離し、迫りくる槍に向けその腕を付ける盾を向けた。
「笑止!我が一撃!そんな盾もろとも貫いてくれるわ!」
炎の槍がペトラの盾にぶつかった。
その一撃は盾を砕き、ペトラの胸を貫くはずだった。
だが、槍はまるで氷の上を滑らされるかのように、盾にその力を受け流される。
「なにっ!?」
仮に盾を砕けなかったとしても、それはまだ予想できる事態だ。
だが、砕くどころかまるで衝撃を感じず受け流される事に、モズリーの体勢は崩され前のめりになる。
流水の盾
それは前剣士隊隊長・ドミニク・ボーセルが使用していた全てを受け流す盾。
両手持ちの大剣を使うペトラは、左腕にはめれるようにベルトを付け装着していた。
槍を受け流したペトラは、素早く剣を持ち直すと、体が右に流れた事をそのまま生かし、右足で地面を踏みしめ、腰を左に捻り、渾身の一撃を放った。
「ヤァァァァーッツ!」
剣士ペトラよ!
こんな奥の手を持っていたか!
だが、ワシがこれまでどれほどの死線を潜り抜けてきたと思う!
まだっ・・・間に合う!槍を犠牲にすれば躱せるぞ!
ペトラの大剣がモズリーの喉元目掛け、右から左へ振り斬られる。
モズリーは後ろへ飛び退きながら、槍の腹を前に出し防御に入る。
防がれる事をいとわず、ペトラの剣はそのままモズリーの槍を真っ二つに斬り裂いた。
二つに分かれた槍のうち、穂先が付いた方を振り被り、モズリーはそのままペトラに投げつけようとする・・・
だが・・・・
「ぐ、カッ、ハァッ・・・・」
突如モズリーの首が半分に斬り裂かれ、真っ赤な血が噴水のように吹き出した。
「な・・・ぜ・・・・」
血を吐き出し、歯を食いしばり、震えながらペトラを睨み付ける。
「斬空閃・・・風の刃だ」
肩で息をし、両目はしっかりとモズリーの視線を受け止める。
「ぐぅ・・・く、はは・・・み、みごと・・・だ」
最後にニヤリと笑うと、モズリーはそのまま後ろに倒れた。
モズリーとペトラ、対峙する二人の距離は数メートル開いている。
その場で剣を振るっても届かせる事はできない。数歩間合いを詰めてやっと剣が届く距離である。
だが、ペトラはその場で剣を走らせ、地面から空へ向かい高々と振り上げた。
地面から抉られた衝撃で、大量の石と土がモズリーに向け飛ばされる。
・・・がっかりさせてくれる。
ワシの兜を叩き割った女だ。それなりの力量の持ち主かと思ったが、そのままの一撃とは・・・
どうやら買いかぶっていたようだ。
モズリーは深紅の鎧の炎をより強く発する。ペトラが放った石と土などまるで気にも留めずに一歩大きく踏み込んだ。
「この石と土ごと、我が槍で粉砕してくれ・・・」
槍を握る両手に力を込め、ペトラの体ごと薙ぎ払おうと腰を捻ったその時、モズリーの経験が本能に訴えた。
躱せ!
無理な体勢だったが本能が命じるまま、モズリーは右足の軸先を正面から左へ変え飛んだ。
正面から受け止めた上で粉砕する。
そう決断したモズリーの判断を覆す事になったが、結果その判断は正しかった。
「むぅッ・・・!?」
無理な体勢で回避したため、完全には躱しきれなかった。
石と土は問題ない。深紅の鎧の炎により完全に防がれた。
しかし、それ以外のなにかが鎧の肩に当たり、左肩の装甲を真っ二つに切断していたのだ。
「これは・・・」
僅かな時間、綺麗に切り落とされた肩当てを目に、モズリーは逡巡する。
攻撃の正体は全く見えなかった。だが、このペトラという女は、石と土以外にも何かを飛ばしたのだ。
それは目に見えないなにか。しかし、この切り口を見るからに、鋭利な刃の類だろう。
それも、この炎すらものともせず切り裂いてくるほどの。
モズリーがその考えに至るまでに、ペトラは距離を詰めていた。
この勢いのまま一気に仕留める!
よほど勘がいいのか、初見でアレを躱された事には驚いた。
だが、向かい合ってディーン・モズリーが私より格上なのは分かっていた。
驚きはしたけど、予想外とまではいかない。
少なくともディーン・モズリーの気を逸らすことはできた。
私が主導権を握っているうちに、実力差が如実に表れる前に、この勢いのままコイツを倒す!
上段からの斬り落とし、打ち下ろしからの脛斬り、そのまま喉元を狙った突きあげ。
ペトラの勢いに乗った連続攻撃だが、モズリーは紙一重で身を翻し躱すと、大きく後ろに飛んで脛斬りを回避し、突き上げを槍で弾き防いだ。
ペトラの奇襲による動揺はすでに無い。
今ペトラは、モズリーとの大きな実力差を、息もつかない連続攻撃でかろうじて埋めている。
だが、選択する連続攻撃、突くか?払うか?振り下ろすか?
頭か?胸か?腕か?足か?
その一手を誤った時、モズリーの槍にその体を貫かれるだろう。
さすがだ、ディーン・モズリー。私はこの五年で自分が強くなったと思っている。
師団長のコバレフとの戦いでも、敗れはしたがそれなりには戦えた。
だが、数十年に渡り帝国を支えた本物の武人である貴様とは、ここまでの差があったのか。
ペトラが何十と繰り出す斬撃もモズリーにかする事すらできない。
だが、この五年、休まず修練に明け暮れたペトラは体力の消耗をまるで見せず、その攻撃は止まる気配が無い。
そして常に最適な一撃を選択しているため、モズリーは反撃しようにも、反撃に移るための一瞬を作る事ができなかった。
まるで当たらない。嫌になってくるよ。
でも、いいさ・・・私は体力には自信があるんだ。
あんたはどうだい?技は健在でも、年齢による衰えはあるんじゃないのか?
私が攻撃の手を誤るか、あんたのスタミナが切れるのが先か・・・勝負だ!
娘、いや剣士ペトラよ。なかなかの腕前だ。
このワシに反撃の間を与えぬ連続性、そしてここまで何十と剣を振るいながら、技の選択を誤らぬのは称賛に値する。
僅かでも甘い剣を撃つならば、即座にその首を落としてやるところだが、この局面で限界を見極め振るってくる気迫も大したものだ。
そして、ここまでの連撃の中で、初撃以外まだあの技を出していない。
その不気味さが、ワシに更なる警戒を与え、慎重にさせている。
おそらく勝負所にとっておくつもりだろうが、ここまで出さぬ事で牽制になっている。
剣だけでなく頭も切れる。総大将に相応しい器を持っているか。
いいだろう。目を見れば分かる。これだけ剣を出しても当たらないのに、貴様の目は諦めていない。
力の差に絶望していない。それどころか勝機有りと見ている。
剣を振り続ければいつか当たると思っているのか?いや、そんな願望ではないな。
確実に当てるつもりだ。根競べか?
貴様がワシに反撃の一手の与えぬまま、ワシの体力が尽きるその時まで剣を振るい続けるというのか?
・・・・・クックック・・・面白い・・・実に面白い!
久しく忘れていたぞ、この感覚!
力が周知されていくと、誰もが挑んでこなくなった。
ルシアンとて、ワシには敵わんと分かっているから、鍛錬はしても勝負は挑んでこない。
いつしかワシも、ただ若手に指導をつけるだけのぬるま湯にどっぷり浸かっていたようだ。
剣士ペトラよ!感謝する!
貴様のような命を懸けて挑んでくる強者を待っていた!
ワシと貴様の意地、そして命を懸けたこの勝負!全力を持って応えよう!
モズリーの身に纏う空気が変わった事を、ペトラは敏感に感じ取った。
・・・へぇ、どうやら本気になったみたいだね。
ディーン・モズリー、あんた今、自分がどんな顔してるか分かってる?
嬉しそうに笑ってんじゃん?
私を認めてくれたんだね?
なら・・・剣士として私もその期待に応えないとね!
「ハァァァァァッツ!」
ペトラの剣圧が増した。
気合と共に繰り出される剣は、先程までより速く鋭い。
炎も斬り裂くペトラの剣が、とうとうモズリーの頬をかすめた。
振り抜いた剣の切っ先から、その赤い血が飛ばされる。
「ぬぅっ!」
ここに来て、ペトラの剣がついにモズリーを捉え始めた。
モズリーは頬に感じる微かな痛みに片眉を上げた。
ワシの気に対抗するように、気を入れ直したようだが、それだけではない。
タイミングが合ってきている。
そして、最小限の動きで躱しているが、こやつ!ワシの動きを読んでいるのか?
この戦いの中で成長しているというのか!?
・・・フハハハ・・・剣士ペトラよ!素晴らしいぞ!
やってみせろ!その体力が尽きる前に見事ワシを斬ってみせろ!
ギラギラとした闘争心剥きだしの目、強敵に出会えた隠しきれない喜び・・・指揮官としてではない。
一戦士としてのディーン・モズリーがその顔を見せた。
モズリーのプレッシャーが増した・・・!
ここからはもっと速く・・・もっと正確に・・・より厳しい技が求められる・・・
すでに百を軽く超える剣を振っている。
私の剣もモズリーに届くようになってきた。だが、モズリーの動きも速くなった。
剣を振り終わるか終わらないかの間で、モズリーは反撃の体勢に入っている。
そこで打たせずに、かろうじて私が攻撃の主導権を握れているのは、初撃からの連続攻撃、流れを手離していないからだ。
これまでで一番深い斬撃がモズリーの右肩に入り、モズリーの肩の装甲を斬り飛ばした。
いける!ここで刃を横に寝かせ薙ぎ払う!
振り下ろした剣をモズリーの左脇腹に目掛けて、振り抜く!
「剣士ペトラ・・・焦ったか?」
ペトラの刃がモズリーの腹に食い込むかと思われた時、ペトラは確かにモズリーの声を聞いた。
まるで時が圧縮されたかのように、一瞬一瞬がハッキリと見える。
数百という剣撃の選択を誤る事なくこれまで振るってきた。
だが、深い一撃が入り、勝機が見えた事で、ペトラの剣に、ここで勝てるという僅かな焦りが出る。
モズリーの炎の槍がペトラの胸元目掛け突き出される。
それはペトラの後から放った一撃だが、それでもペトラより速い一撃だった。
槍の穂先が迫る。
ペトラは両手で握っている剣の柄から左手を離し、迫りくる槍に向けその腕を付ける盾を向けた。
「笑止!我が一撃!そんな盾もろとも貫いてくれるわ!」
炎の槍がペトラの盾にぶつかった。
その一撃は盾を砕き、ペトラの胸を貫くはずだった。
だが、槍はまるで氷の上を滑らされるかのように、盾にその力を受け流される。
「なにっ!?」
仮に盾を砕けなかったとしても、それはまだ予想できる事態だ。
だが、砕くどころかまるで衝撃を感じず受け流される事に、モズリーの体勢は崩され前のめりになる。
流水の盾
それは前剣士隊隊長・ドミニク・ボーセルが使用していた全てを受け流す盾。
両手持ちの大剣を使うペトラは、左腕にはめれるようにベルトを付け装着していた。
槍を受け流したペトラは、素早く剣を持ち直すと、体が右に流れた事をそのまま生かし、右足で地面を踏みしめ、腰を左に捻り、渾身の一撃を放った。
「ヤァァァァーッツ!」
剣士ペトラよ!
こんな奥の手を持っていたか!
だが、ワシがこれまでどれほどの死線を潜り抜けてきたと思う!
まだっ・・・間に合う!槍を犠牲にすれば躱せるぞ!
ペトラの大剣がモズリーの喉元目掛け、右から左へ振り斬られる。
モズリーは後ろへ飛び退きながら、槍の腹を前に出し防御に入る。
防がれる事をいとわず、ペトラの剣はそのままモズリーの槍を真っ二つに斬り裂いた。
二つに分かれた槍のうち、穂先が付いた方を振り被り、モズリーはそのままペトラに投げつけようとする・・・
だが・・・・
「ぐ、カッ、ハァッ・・・・」
突如モズリーの首が半分に斬り裂かれ、真っ赤な血が噴水のように吹き出した。
「な・・・ぜ・・・・」
血を吐き出し、歯を食いしばり、震えながらペトラを睨み付ける。
「斬空閃・・・風の刃だ」
肩で息をし、両目はしっかりとモズリーの視線を受け止める。
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