異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,025 / 1,560

1024 十日目

しおりを挟む
冷たい石でできた洞窟の中。
陽の光はほとんど射さず、お互いの顔さえ見えないくらい暗く閉ざされた空間。

闇の大蛇サローンと、その主人バドゥ・バックの追跡を振り切ったレイマート達4人は、この洞窟に身を隠していた。

石壁に背を預けていたレイマートは、閉じていた瞼を静かに開けた。


あれから十日経った。
エクトールが無事にクインズベリーにたどり着いていれば、すでに救援隊を組んでこっちに向かっているはずだ。

スピードが要求される事を考えれば、救援隊は体力型を中心に組んでいるはず。
だとすればこの山に着くまでの日数は、おそらく6~7日・・・。

「・・・今日まで見つからなかった・・・このままいけばなんとか凌げそうだな」

髪と同じ青い瞳で、目の前の石壁をじっと見つめて独り言ちる。

フェリックスとアルベルトの性格を考えれば、2日以内にはクインズベリーを発っているはずだ。
全てがうまくいった場合の計算だが、順調に行けばあと4日、多少遅れても5日で来れるだろう。

全て推測だが、確率は高いと考えている。



「・・・レイマート様」

脇から小さくかけられた声に顔を向けると、青魔法使いのエミリーが心配そうな顔をして立っていた。

「・・・エミリーか、どうした?」

お隣よろしいですか?そう聞いて、エミリーはレイマートの隣に腰を下ろした。


「ずいぶん長く考え事をされていたようなので・・・」

「ああ、大した事じゃない。ここで後4~5日くらい凌げば、何とかなりそうだって考えてただけだ」

なにか心配ごとでもあるのでは?そう目で問いかけるエミリーの気持ちを察してか、レイマートは小さく笑って答えた。

「そうでしたか・・・エクトールなら大丈夫です、きっと救援を呼んでくれますよ」

「ああ、それまでここでじっとしてなきゃならないのは、ちょっと退屈だけどな」

何もない洞窟を見回してレイマートが息を着くと、エミリーは目を伏せて表情に陰を落とした。


「レイマート様・・・申し訳ありませんでした」


突然口にしたエミリーの謝罪に、レイマートはピクリと眉を動かして顔を向けた。
驚きも疑問も無い。何に対しての謝罪かは分かっているからだ。

「・・・まだ気にしてるのか?」

すでに何度も頭を下げられた。
レイマートはまったく気にしていないのだが、エミリーはここにいる時間が長引く程に、気落ちしているのだ。

「あの時私が動ければ、山を降りられたかもしれません。でも私の足は震えて一歩も動けなくて・・・レイマート様がおぶってくださったから、私は生き永らえる事はできましたが、みんなの逃げるチャンスを奪ってしまいました・・・」

「・・・エミリー、何度も言ってるだろ?それは気にしなくていい。それに俺達は全員限界が近かった、どのみち山を降りるだけの体力はなかったんだ。だけど誰一人欠ける事なく逃げられたんだ、それでいいだろ?」

闇の大蛇サローンから逃げる時、闇の瘴気に当てられて腰を抜かしたエミリーを、レイマートがおぶって逃走したのだった。
そしてエミリーは自分を背負っていたがために、逃げ切る事ができなかったと思い胸を痛めていた。

「ですが・・・」

「たまたまだが、この洞窟を見つけられたのは運が良かった。それにあのまま無理に下山しようと走り続けていたら、いずれ追いつかれただろうよ。だからこれが最良の選択だったと思うぜ」

まだ言葉を紡ごうとするエミリーだったが、レイマートが肩にポンと手を乗せると、はい、とだけ返事をして、それからしばらく口を閉じて黙り込んだ。

自分を納得させるために、気持を切り替えるために、時間が必要だったのだろう。
レイマートも特に何か話す事もせず、かと言ってこの場から動く事もせず、二人はそのまま冷たい石壁を背にして、静寂に耳を傾けていた。



「・・・闘気は、完全に戻ったのですか?」

やがてエミリーがぽつりと言葉を口にした。

「ん・・・ああ、まぁ大丈夫みたいだ。これだけ休めば流石に回復するって」

「本当ですか?」

「本当だって、そう心配するな。大丈夫だ」

「・・・レイマート様はしっかりしてそうで、案外てきとうですからね」

軽い調子で話すレイマートを、エミリーはじろりと睨むように見る。

「ひでぇな、けっこう真面目にやってるつもりなんだぜ?」

「そう思ってるのはレイマート様だけです。けっこう大雑把ですよ?」

ズバズバと言われ、レイマートは頭を掻いて苦笑いするしかなかった。

「・・・本当に心配してるんです。この洞窟に逃げ込むまで、さらに二匹の大蛇が現れました。あの二匹は10メートルはなかったようですが、6~7メートルはあったと思います。その二匹もレオンクローで仕留めて、闘気が尽きたじゃないですか?それでも私の事を見捨てずずっとおぶってここまで走って・・・レイマート様、無理し過ぎなんです」

「別にいいじゃねえか、結果的に全員助かったんだしよ」

「よくありません!結局ここに着くと同時に倒れてしまったじゃないですか!本当に心配したんですよ!」

強い言葉だったが、真剣に自分を想っているからこそというのは十分に伝わった。

「・・・分かった・・・うん、分かった。気を付ける」

頭を掻きながら、少しだけバツが悪そうに答えると、エミリーはまたじっとレイマートを見つめる。
数十秒程そうしてレイマートを見つめると、納得できたのか小さく頷いて口を開いた。

「・・・本当に気を付けてくださいね。助けていただいたのは本当に感謝してるんです。でもレイマート様が倒れた時は、心臓が止まるかと思いました。どうかご自分の事も大事にしてください」

分かった、レイマートがもう一度そう答えると、エミリーはやっと安心したように微笑んだ。




「レイマート様、そろそろ飯にしませんか?」

二人の話しに区切りがついたところで、洞窟の奥からフィルとロゼが歩いて来た。

「おうフィル、ロゼ、そうだな、腹も減ってきたしそろそろ飯にするか。今日はなんだ?」

「ふふふ、レイマート様、今日も干し肉に決まってるじゃないですか?分かってて聞いてますよね?」

保存食しか持ってきていない事は全員が知っている。
わざわざ確認する必要もない事を聞いてくるレイマートに、ロゼは口を押えてクスクスと笑った。

四人で輪を作って座ると、それぞれが黙々と干し肉をかじり始める。


・・・節約してあと四日、いや五日は持たせなくてはならない。

残りの食料は僅かだ。一日三食なんてとても食べられない。二食でも五日は持たないだろう。
そうなれば、一日一食、もしくは一食分を朝と夜に分けて食べるか・・・・・

固い肉を奥歯で噛みちぎり、レイマートは救援が来るまでの残りの日数を、どう凌ぐか考えていた。



救援はきっと来る。そう信じているし、信じるしかない。

だが、もし間に合わなかったら・・・・・

エミリー・・・フィル・・・ロゼ・・・・・・・・

自分と一緒の輪の中で、干し肉をかじる三人に目を向けた

こいつら三人だけは何としても帰す

最悪の場合、俺が囮にでもなんにでもなってやる


「・・・レイマート様?あの、どうかしました?」

怖い顔をしていたのかもしれない
エミリーが少し眉を寄せてたずねてきた


「・・・いや、帰ったら何を食べようかなってね・・・」


十日目の夜が更けていった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...