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1305 帝国の戦略
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アーロン・カカーチェは自軍の黒魔法使いが一斉に放った爆発魔法を見て、ニヤリと口の端を持ち上げた。ユナニマス大川の中心、川を挟んでクインズベリーと帝国軍の真ん中辺りでは、着弾によって起こった爆発で炎は水面を焦がし燃え上がり、黒煙は天に届く程に立ち昇っている。
「ユナニマス大川は、水辺の少ない帝国にとって極めて大事な場所じゃ。地形が変わる恐れがあるからあまりやりたくはなかったが、向こう側に爆発魔法を撃ちこむ。単純だがこれが最大の戦術じゃ」
川の保全の理由から、光源爆裂弾は撃たなかった。
だが中級魔法の爆裂空破弾や、初級魔法の爆裂弾であっても、数百人規模の黒魔法使いが揃って撃ち放てば、その威力は凄まじいものだった。
まともに浴びていればクインズベリー軍は今頃焼け死んでいるか、川へと沈んでいる事だろう。
「まぁその最大の戦術も、結局は理想論でしかないがな。まともにくらうほど敵もバカではあるまい」
そう言葉を口にするカカーチェの目は、もう笑ってはいなかった。
先制攻撃の爆発魔法は、川を渡って来るクインズベリー軍に確かに着弾した。
燃え盛る炎は今もクインズベリーを焼いている。だがカカーチェは、おそらくクインズベリー軍にダメージは無いと考えていた。
なぜならクインズベリー軍がこの川を渡るために、何の対策もしていないとは思っていなかったからだ。
川を凍らせて道を作る。そこを渡り切るまで帝国が黙って見ているはずがない。攻撃を受ける事は確実だろう。ならばそれに備えておく事は必須である。
カカーチェの考えている通り、クインズベリーもこうなる事は想定していた。
そしてその答えを教えるように、クインズベリー軍を焼く炎と黒煙が、その内側から発せられる青く強い光によって吹き飛ばされたのだ。
水面には氷の道の上に立つクインズベリー軍が、青く輝く結界によって護られていた。
先頭に立つのは氷の道を作る黒魔法使い。そしてその黒魔法使いと氷の道を護る青魔法使い。
クインズベリー軍は黒と青の混同チームを中心にして、ユナニマス大川を渡って来ていたのだ。
数百人規模で重ね合わせた結界は、帝国の爆発魔法を完璧に防ぎ、その魔力を持って炎と黒煙も吹き飛ばして見せたのだ。
「よし、読み通りだ。全軍このまま進め!今俺達は帝国の攻撃を防いだが油断はするな!青魔法使い達は次弾に備えておく事!」
先頭集団の中心に立ち指示を飛ばすその男は、クインズベリー国治安部隊隊長ヴァン・エストラーダ。
ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンから、このユナニマス大川での指揮官を譲り受けたヴァンは、今先頭に立ちこの戦いに臨んでいる。
「来るなら来やがれ!全部防いでこの川を渡ってやるぜ!」
拳を握り締め、視線鋭く対岸の帝国軍を睨みつけた。
吹き飛ばされて散り散りになった火の粉は、風に吹かれて帝国軍の頭の上を飛んでいく。
その一つがカカーチェの頬を焦がすが、カカーチェはまるで熱を感じていないように目を細め、楽しそうに口の端を持ち上げた。
「くっくっく、やはりな。青魔法使い共が瞬時に結界を張れるよう備えておったか。しかもあの勢いの炎と煙を吹き飛ばすとは敵もなかなかのものじゃな。アンリエールめ、ずいぶんと鍛えてきたじゃないか。おもしろくなってきおったわ」
最初の一斉射撃は防がれるだろう。カカーチェはそう予想しており、そしてその通りクインズベリー軍は帝国の攻撃を防ぎ切った。
しかし防がれる事を予想していた帝国もまた、次の策を用意している。
「だがなぁ、この戦いはどうあってもワシら帝国が優位なんじゃ。クインズベリーよ、果たしてお前達にこの川が渡りきれるかのう?ガルバンよ、分かっているな?」
カカーチェは作戦の指揮を側近であるガルバンに任せ、自分は一歩ひいて全体を見ていた。
それは側近であるガルバンへの期待、そして経験を積ませる意味もあったが、なにより信頼である。
ガルバンならば次に何をするべきか、最適解を出し、例え不測の事態が起こったとしても対処できる。
その信頼があっての任命だった。
「はい、カカーチェ様。所詮ヤツらは川の上、護る事はできても反撃はできません。我らは撃ち続ければいいのです。ヤツらの魔力が尽きるまで」
ガルバンの答えに、カカーチェは満足そうに頷き笑った。
そしてガルバンは再び右腕を前に出すと、視線の先に映るクインズベリー軍を指さして号令をかけた。
「ヤツらはあそこから動く事はできん!撃って撃って撃ちまくれ!」
クインズベリーよ、我らの一斉射撃を防いだ事は誉めてやろう。
だが貴様らが立っているのは氷の上だ。黒魔法による反撃は、その衝撃で己の足場さえ破壊してしまう。
つまりそこで貴様らができる事は、その場で結界による防御一択だ。
そして結界を張っている間、貴様らは動く事ができん。
「時間はかかる。だがいずれ我らに勝利が訪れる。このユナニマス大川に貴様らの骨を流してやろう」
「ユナニマス大川は、水辺の少ない帝国にとって極めて大事な場所じゃ。地形が変わる恐れがあるからあまりやりたくはなかったが、向こう側に爆発魔法を撃ちこむ。単純だがこれが最大の戦術じゃ」
川の保全の理由から、光源爆裂弾は撃たなかった。
だが中級魔法の爆裂空破弾や、初級魔法の爆裂弾であっても、数百人規模の黒魔法使いが揃って撃ち放てば、その威力は凄まじいものだった。
まともに浴びていればクインズベリー軍は今頃焼け死んでいるか、川へと沈んでいる事だろう。
「まぁその最大の戦術も、結局は理想論でしかないがな。まともにくらうほど敵もバカではあるまい」
そう言葉を口にするカカーチェの目は、もう笑ってはいなかった。
先制攻撃の爆発魔法は、川を渡って来るクインズベリー軍に確かに着弾した。
燃え盛る炎は今もクインズベリーを焼いている。だがカカーチェは、おそらくクインズベリー軍にダメージは無いと考えていた。
なぜならクインズベリー軍がこの川を渡るために、何の対策もしていないとは思っていなかったからだ。
川を凍らせて道を作る。そこを渡り切るまで帝国が黙って見ているはずがない。攻撃を受ける事は確実だろう。ならばそれに備えておく事は必須である。
カカーチェの考えている通り、クインズベリーもこうなる事は想定していた。
そしてその答えを教えるように、クインズベリー軍を焼く炎と黒煙が、その内側から発せられる青く強い光によって吹き飛ばされたのだ。
水面には氷の道の上に立つクインズベリー軍が、青く輝く結界によって護られていた。
先頭に立つのは氷の道を作る黒魔法使い。そしてその黒魔法使いと氷の道を護る青魔法使い。
クインズベリー軍は黒と青の混同チームを中心にして、ユナニマス大川を渡って来ていたのだ。
数百人規模で重ね合わせた結界は、帝国の爆発魔法を完璧に防ぎ、その魔力を持って炎と黒煙も吹き飛ばして見せたのだ。
「よし、読み通りだ。全軍このまま進め!今俺達は帝国の攻撃を防いだが油断はするな!青魔法使い達は次弾に備えておく事!」
先頭集団の中心に立ち指示を飛ばすその男は、クインズベリー国治安部隊隊長ヴァン・エストラーダ。
ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンから、このユナニマス大川での指揮官を譲り受けたヴァンは、今先頭に立ちこの戦いに臨んでいる。
「来るなら来やがれ!全部防いでこの川を渡ってやるぜ!」
拳を握り締め、視線鋭く対岸の帝国軍を睨みつけた。
吹き飛ばされて散り散りになった火の粉は、風に吹かれて帝国軍の頭の上を飛んでいく。
その一つがカカーチェの頬を焦がすが、カカーチェはまるで熱を感じていないように目を細め、楽しそうに口の端を持ち上げた。
「くっくっく、やはりな。青魔法使い共が瞬時に結界を張れるよう備えておったか。しかもあの勢いの炎と煙を吹き飛ばすとは敵もなかなかのものじゃな。アンリエールめ、ずいぶんと鍛えてきたじゃないか。おもしろくなってきおったわ」
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「だがなぁ、この戦いはどうあってもワシら帝国が優位なんじゃ。クインズベリーよ、果たしてお前達にこの川が渡りきれるかのう?ガルバンよ、分かっているな?」
カカーチェは作戦の指揮を側近であるガルバンに任せ、自分は一歩ひいて全体を見ていた。
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その信頼があっての任命だった。
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ガルバンの答えに、カカーチェは満足そうに頷き笑った。
そしてガルバンは再び右腕を前に出すと、視線の先に映るクインズベリー軍を指さして号令をかけた。
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だが貴様らが立っているのは氷の上だ。黒魔法による反撃は、その衝撃で己の足場さえ破壊してしまう。
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