異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1306 突撃部隊

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一瞬たりとも止む事の無い爆撃は、青く輝く結界を激しく揺さぶった。

クインズベリー軍の青魔法使い達は、青く輝く結界を幾重にも合わせて帝国の猛攻を防ぎ続けた。
しかし連続して撃ち込まれる爆発の衝撃は、足場の氷にも負荷をかけ徐々に亀裂を作っていった。


「・・・帝国のヤツら、このまま結界を破壊するまで撃つつもりだな」

帝国軍の爆発魔法の連射が始まって数分が経過した頃、背は高いが少し頬のこけた痩せ気味の男が、状況を分析して言葉にした。治安部隊隊長補佐のモルグ・フェンテスである。

ひょろりとした体付きのせいで、フェンテスを知らない人には一見すると頼りなく見られてしまう事もある。
だが困難な状況下でも常に冷静さを失わず、マルコス・ゴンサレスとの戦いでも勇敢に戦う姿を見せた事から、隊員の信頼は厚い。

そしてもう一人。

「ヴァン隊長、どうしますか?黒魔法使いは氷の道を維持するために魔力を注いでますし、動けるのはオレ達体力型と白魔法使いだけです」

治安部隊隊員エルウィン・レブロンは、フェンテスの見解を聞くとヴァンへ指示を仰いだ。

まだ若いが隊長であるヴァンに素質を見込まれ、日々厳しい訓練をこなしているエルウィンは、すっかり逞しい体付きになっていた。
この戦争への参加を認められた証として、治安部隊隊員のダークブラウンのアーマーを身につけ、腰には大振りのナイフを差している。


「・・・このままだとまずいな・・・」

エルウィンを始めとする同行の治安部隊隊員、待機している軍の兵士達からも視線を向けられると、ヴァンは周囲を観察するようにぐるりと見回した。

総大将のバーナード・ロブギンス、そしてゴールド騎士のフェリックス・ダラキアン、闇の巫女のルナはまだユナニマス大川には入っていない。
ロブギンスは総大将であるがゆえに、ルナは闇に対抗するための重要人物として、フェリックスはルナの護衛として、対岸までの氷の道を確実に繋げるまではうかつに動けないのだ。

そのため現在のクインズベリー軍のトップは、ヴァン・エストラーダが担っている。
そして今ヴァンは、この戦いにおける一つの大きな分岐点で判断を求められていた。


帝国のヤツら、まさかこんな攻撃手段をとってくるとは思わなかった。
撃ち続けて削り倒す。単純だが確実だ。攻める側の帝国は、魔力配分を調整しながら交代で撃ち続ければいい。だが防衛側のこっちはそうはいかない。爆裂空破弾は中級魔法だが手を抜いて防げるものではないし、あまい防御では衝撃で足元の氷が割れてしまう可能性もある。

護る方は常に全力で防御する必要がある。しかもこっちからは攻撃ができない。
これだけ不利な状況下では、正攻法で打開できるとは思えない。思い切った手段が必要だろう。


「・・・体力型を中心に突撃部隊を編成する。エルウィン、後方にいるレイジェスを呼んで来てくれ」

「っ、はい!分かりました!」

覚悟を決めたように表情を引き締めて指示を出すヴァン。
名前を呼ばれたエルウィンは、圧を感じさせるヴァンの本気を感じながら、急ぎレイジェスの元へと足を急がせた。


そして数分の後、エルウィンを先頭にしたレイジェスのメンバー達が、ヴァンの元へと来た。

ユナニマス大川に参戦しているレイジェスのメンバーは、アラタ、カチュア、ジャレット、シルヴィア、ジーン、そして新たに加入したラクエルの六人である。

「ヴァン、呼ばれて来たけど、突撃部隊を編成するんだって?」

顔を合わせて最初に口を開いたのはアラタである。
突撃部隊という名称からして、作戦の内容にはおおよその想像はつく。体力型を中心という事だし、呼ばれた以上おそらくヴァンは、自分の事もすでに数に入れているだろうと考えた。

「ああ、このままじゃいずれ魔力も尽きて結界は破壊される。そうなる前に敵陣に突っ込んで黒魔法使い達を倒す。ただ敵陣に突っ込むにしても、敵の爆発魔法をかいくぐって行けるだけの力が必要だ。それと向こうに渡っても師団長を倒す必要はない、まず黒魔法使い達を倒してこの爆発魔法を止める事が最優先だ。師団長シャンテル・ガードナーの首は、軍の本体が合流してから取ればいい」

少数精鋭だ。そう言って言葉を締めくくったヴァンに。ジャレットが手を向けて問いかけた。

「なるほど、作戦の趣旨は理解した。けどよ、まだ向こう岸まで数百メートルはあるぜ?そこまではどうやって行くんだ?」

当然の疑問だった。ここで足止めをくらっているのに、どうやって向こう岸まで渡るのか?
しかしヴァンは、分かっている、と言うように頷くと、シルヴィアに顔を向けた。

「ああ、それは考えてある。まぁ、これがこの作戦を成功させる上での肝(きも)なんだが、シルヴィアさん、あなたの力を貸して欲しい」

「あら、私?もちろん、できる事なら力になるけど、なにをすればいいのかしら?」

まさか名前を呼ばれるとは思っていなかったシルヴィアは、自分の顔に指先を向けると、きょとんとした顔で役目を訊ねた。


「竜氷縛だ。氷の上級魔法竜氷縛を、向こう岸に撃ってくれ。突撃部隊は竜が通った後の凍った道、竜の背中を駆け抜ける」

ヴァンの作戦を聞いて、アラタもジャレットも、誰もがすぐには言葉を返せなかった。

言っている事は分かる。だがここはユナニマス大川のちょうど真ん中辺り、向こう岸まではまだ700~800メートルはあるだろう。そこまで竜氷縛を届かせる事ができるだろうか?

いや、飛距離は問題ないだろう。このユナニマス大川の端から端までというなら厳しいだろうが、およそ半分の距離だ。敵の爆発魔法もここまで届いているのだから、シルヴィアの竜氷瀑が届かないはずがない。

だが問題は無事に届かせる事ができるかどうかという事だ。
上級魔法が向けられれば、帝国は当然迎撃してくるはずだ。今結界を打ち付けている爆発魔法を、そっくりそのまま向けられたとして、果たして氷の竜が耐えきれるだろうか?
いや、おそらく不可能だ。とうてい持つとは思えない。

ヴァンはさらっと竜が凍らせた道を駆け抜けると言ったが、そううまくいくだろうか?

当然ヴァンもそれは分かっているはずだ。だがヴァンは迷う事なくシルヴィアを説得する。

「どうだいシルヴィアさん、やってくれないか?俺もさ、適当に言ってるわけじゃねぇんだ。シルヴィアさん氷魔法が得意だろ?四勇士のルーシーも氷漬けにしたって聞いてるぜ。シルヴィアさんの氷魔法はクインズベリーで一番だと思ったからこそ頼んでるんだ」

ヴァンの言葉に嘘はなかった。おだてるつもりではない。本心でそう思っている。
それが伝わったから、シルヴィアもそれに応えたいと思い決心した。

「分かったわ、やってみる。そこまで言われたら頑張ってみなきゃね。竜氷瀑、必ず向こう岸へ繋げてみせるわ」

厳しい事は分かっている。けれどここまで自分を信じてくれるのだ。
力を尽くしてみよう。

「ああ、ありがとう。期待してるぜ」

シルヴィアが了承すると、ヴァンは感謝の言葉を口にしてアラタ達へと向き直った。


「じゃあ突撃部隊のメンバーだが、俺とフェンテス、そしてアラタ、ジャレット、この四人で行く。シルヴィアさんが竜氷瀑を撃ったらそれに続いて飛び出す。向こう岸についたら黒魔法使いを倒していく。目的は攻撃魔法を止める事だ」

「あー、ちょっと待って待って!アタシは?アタシはハブられる感じ?お呼びでない?」

ヴァンが作戦に組む者の名前を読み上げると、異を唱える声が上がった。
魔道剣士のラクエル・エンリケスである。左手を上げ、右手の指先で自分を指している。

「ん?ああ、確かラクエルって言ったよな?新しくレイジェスに入ったっては聞いてるよ。ただな、俺はあんたの力を知らないんだよなぁ・・・」

ヴァンはラクエルの戦いを直接見た事はなかった。
セドコン村で活躍したという事は聞いていたが、それだけの情報でこの突撃部隊に組み込む事はできない。並みの実力では結界から出た瞬間に、帝国の爆発魔法の餌食になるだけだからだ。

この作戦には力不足だろう。それがヴァンから見たラクエルだった。


「はぁ?あんたアタシの事舐めてない?そりゃ話すの初めてなんだから、アタシの事知らなくて当然だよね?でもさ、あんたもここを仕切ってんなら、人を見る目っての無いの?ぶっちゃけアタシ、あんたより強いと思うよ?」

「あぁ!?今なんて言った!?お前が俺より強いだと!?」

ラクエルが向ける視線には、明らかにヴァンを見下すような色が含まれていた。
それを受けてカチンと来たヴァンが声を荒げると、シルヴィアが手を伸ばして二人の間に割って入った。

「はい、そこまでにしましょうね。ヴァンさん、こういう状況だからピリピリしてるのかもしれないけど、もう少し言い方を考えてくださいね?あの言い方じゃ、彼女なくても嫌な気持ちになるわ」

口元には笑みを浮かべているが、冷たい視線を向けられたヴァンは口を噤んだ。

「ラクエル、あなたもムカっとするのは分かるけど、わざわざ挑発して喧嘩する事はしないでね?聞き流す事も時には必要よ?」

やはり口元はニコリと笑っていても、その目は笑っていない。
静かな圧力を向けられたラクエルは、バツが悪そうに後ろ手に頭をかいて謝った。

「あ~・・・シルヴィア、そんな怖い顔しないでよ?ごめんごめん、分かったからさ」

「しかたないわね・・・ヴァンさん、ラクエルはね、レイチェルが自分と互角だって言ってたわよ。レイチェルと同レベルの実力者でも力不足かしら?」

チラリとヴァンに視線を向けるシルヴィア。

「な、レイチェルと互角?・・・いや、それだったら何も文句はない」

「そう、じゃあラクエルも突撃部隊という事で決まりね?良かったわね、ラクエル」


ニッコリ微笑むシルヴィアを見て、ラクエルはシルヴィアには逆らわないでおこうと思った。
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