異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1407 覚悟を決めた強い声

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「・・・ふぅ、なかなか良いおとりだったぜ、お前。大したもんだよ、やるじゃねぇか?」

シーサケットを斬り捨て、地上に降り立ったラミール・カーンは、フェムケに目を向けるとニヤリと口の端を持ち上げた。
カーンはシーサケットに攻撃を仕掛ける前に、フェムケに注意を引きつけるよう指示を出していたのだが、考えていた以上の成果に満足したらしく饒舌じょうぜつになっていた。

「あ、いえいえ・・・ははは、お役に立てたなら良かったです」

カーンに褒められると、フェムケは引きつった笑みを浮かべて、当たり障りのない返事をする。

そう、フェムケがサイレント・バブルでシーサケットを攻撃したのは、カーンに強要されたからである。
最初にフェムケのサイレント・バブルを目にした時、カーンはその有用性を高く評価していた。音も無く見え難く、さらに指先でも触れれば、水しぶきのように弾けて飛びかかるのだ。
この泡玉は人を拘束する事に関して、これ以上ないと言える程優れた魔道具だった。


「狙い通り、お前の泡玉でヤツは俊敏に動けなくなっていた。一発で仕留められなかった場合も考えてたが、完璧だったな。見て見ろよ」

そう言ってカーンは数メートル程離れた場所で、地面に仰向けに倒れている深紅のローブの男を顎で指した。

「え・・・うわっ!」

促されるままフェムケは一歩二歩と近づき、ソレを見ると顔をしかめて両手で口を押えた。

「なんだ?あっちこっち死体だらけなのに、まだ慣れてねぇのか?」

「わ、分かってますけど、できるだけ見ないようにしてたので・・・それに、これはちょっと、他より酷くないですか?」

フェムケが後ずさりながら困ったように目を向けると、カーンは少し首を傾げながら息をついた。

フェムケの反応は無理もないものだった。彼女が見た倒れている男は、カーンに斬られ空中から地上に落下した帝国軍のシーサケット・ヴァサイだったのだが、それは見るも無残なものだった。

カーンの持つ大剣、反響の剣は刃をぶつけた時の音で攻撃をするため、剣とは言っても斬る事を目的として作られていない。そのため最初から刃は潰されているのだ。

つまりカーンはシーサケットを斬ったと言うよりも、叩き潰したと言う方が正確な表現だろう。

「そうか?こんなの普通だと思うけどな」

そう言ってカーンはもう一度シーサケットに目を向けた。

左肩から右の脇腹にかけて、ベッコリと深く大きく抉るように潰された跡があり、砕けた骨が肉を突き破って飛び出していた。確認するまでもなく、肩も胸もぐしゃぐしゃだ。よほどの力をぶつけられなければ、とてもこうはならない。

この一撃でシーサケットは絶命したと思われるが、上空から無防備に落下し地面に叩きつけられた衝撃で、頭は砕け、手足も本来の関節の可動域とは逆の方向に折れ曲がっている。
この姿を見て、わずか13歳のフェムケが気を失ったり、吐き出さなかっただけでも強い心臓を持っていると褒めていい場面だが、戦いに生きて来たカーンにとっては見慣れた光景の一つに過ぎなかった。


「まぁいい、それよりもニールの野郎はどこだ?」

シーサケットの遺体から目を離すと、カーンは当たりを見回した。
まだ光源爆裂弾による被害は治まっておらず、地面を焼く炎も、黒煙も立ち昇っている。
視界が悪く、カーンはニールを見つけられずにいた。

「あ、えっと・・・あ!カーンさん、あれじゃないですか?」

フェムケも眉の上に手を当てながら首を回してみる。すると視線の先、少し離れているが、それらしい顔を見つけた。炎と煙で視界は悪いが、立ってこっちに向かって歩いているように見える。どうやら無事だったらしい。

「あ~・・・そうみてぇだな、あの野郎フラついてんな・・・しかたねぇ、行くぞ」

「え、あ、はい!」

ラミール・カーンも目を細めてニールの姿を認めると、大剣を肩に乗せて歩き出した。行くぞと言われれば付いて行くしかない。フェムケは慌ててカーンの後ろに付いて行った。




「う・・・痛ってぇ・・・はぁ、はぁ・・・」

全身がズキズキと痛む。両足で立つ事はできるし、頭から流れ落ちる血をぬぐえるから、手も指も折れてはいないようだ。

強烈な爆発だった。直撃ではなかったが近距離の爆発だったため、地面は抉られ結界のふんばりがきかずに吹き飛ばされてしまった。氷壁にしたたかに打ち付けられ、地面に転がされてしまったが、光源爆裂弾に巻き込まれて、この程度で済んだのは幸いだった。

「まったく・・・ひでぇ目にあったぜ・・・・・」

フラつく足を前に出しながら、ニールは苦笑いを浮かべた。

「よぉ、ボロボロじゃねぇか?」

視線の先に影が落ち、聞き覚えのある声に顔を上げると、長身で浅黒い肌の男が腰に手を当て立っていた。そしてその一歩後ろには、フェムケが心配そうな顔をしてニールを見つめていた。

「・・・カーン、それにフェムケ・・・やったじゃないか。お手柄だぞ」

ニールは自分が吹き飛ばされた後、フェムケがサイレント・バブルでシーサケットの動きを止め、カーンが大剣で叩き伏せた場面を見ていたのだ。
自分は最後まで立っている事ができなかったが、仲間達が決着をつけた。そう、ロンズデールは勝ったのだ。

「あ、ありがとうございます・・・えっと、ニールさん大丈夫ですか?私、治療しますよ」

お手柄だと褒められて、フェムケが少し嬉しそうな顔で前に出て来た。

「あ、そう言えばお前白魔法使いだったよな?・・・じゃあ、頼もうか。骨まではいってないみたいなんだけど・・・全身が痛くてよ」

まだ帝国軍も僅かに生き残りはいるが、もはや指揮をとれる将は残っていない。ロンズデールの勝利が決定的になった事、そしてカーンとフェムケの顔を見て、少し気が緩んだのかもしれない。ニールは肩の力が抜けたように笑って見せた。

「え~、忘れないでくださいよ。て言うか、私のローブ見れば分かりますよね?まぁ、いいですけど、はい、そこに座ってください」

ニールの軽口に、フェムケも軽口を返しながら、すぐそばの岩を指す。
言われるがままにニールが腰を下ろすと、フェムケが両手を向けて癒しの魔力を流し込んだ。

「・・・ニール、帝国軍の半分は撤退したようだし、残ったヤツらも大半はさっきの光源爆裂弾でやられたようだな。俺らの勝ちと見ていいだろう、これからどうする?」

カーンは大剣を地面に突き刺すと、柄に体重を預けるように右手を乗せ、治療を受けているニールに言葉をかけた。


「・・・・・マレスは、見つけたか?」

ニールはゆっくりとカーンに顔を向けた。薄々察してはいたが、認めたくないという気持ちが言葉になり、カーンに問いかけた。

「俺が最後に見たのは、師団長カシレロに向かって行ったところまでだ。そこから先は知らねぇが、カシレロもいねぇみたいだしな・・・・・相打ちになったんじゃねぇのか?」

おそらくニールは希望を持ちたかったはずだ。そしてカーン以外の誰かであれば、ニールの聞きたかった言葉を返しただろう。しかしラミール・カーンにはそんな気遣いなど無い。

国のために共闘しているが、ニールとは友人でもなんでもないのだ。
したがってカーンは考えられる中で、最も可能性の高い答えをそのまま口にしたのだった。

「ちょっ!?カーンさん、そんな・・・」

ハッキリとした言い方にフェムケは驚いた顔をカーンに向けた。だがニールは静かに目を閉じ、自分を納得させるように何度か頷いた。


「・・・そう、か・・・・・そうだよな・・・・・」

「マレスがいねぇんなら、次はお前が司令官だろ?これからどうすんだ?」

これもカーンの言葉通りだった。マレスがいなくなったのなら、副指令という立場のニールが、決定権を持つ司令官になる。

「・・・まずは、自軍の被害状況、残った戦力を確認する」


ここからは自分が司令官だ。
ニール・グラテノールは、覚悟を決めた強い声で言葉を発した。
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