足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

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二日目は楽しい思い出と……

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 消灯時間になっても、凌空りくとの偽装交際や、部屋を訪問した8人の女子達の言葉が心に残り、眠りが浅く何度も目覚める夜を過ごした詩奈しいな

 林間学校の2日目は朝食後から、木工芸の時間となり、彫刻刀や紙やすりを使用し、キーホルダー作りをしていた。

「若葉、それ何?」

 笑いながら尋ねた瑞輝みずき

「見て分からないの? キツツキなんだけど! 瑞輝みずきのだって、何、そのスカンクみたいなの?」

「目、悪いんじゃねーの? リスに決まってる!」

「悪いけど、それ、全然、リスじゃないから! リスはもっと可愛いの! 詩奈しいなのはウサギ、すごく分かりやすい!」

「ありがとう! でも、北岡君のキツネには、全然及ばない」

 褒められて嬉しいが、横で作業中の凌空りくのと比べると、見劣り感が否めない詩奈しいな

「わっ、凌空りく、スゴイ、職人技って感じ!」

 詩奈しいなより上手な出来栄えを期待し覗くと、期待以上の出来映えに感嘆した若葉。

「そんなでも無いよ」

「そこで謙遜するなよ~、売り物になりそうなくらいじゃん!」

 若葉にけなされた自分の作品とは、格が違うと思えた瑞輝みずき

「この後の釣りは苦手だから、ここでポイント稼がないと。釣りは、瑞輝みずきに任せた!」

 木工芸の時間の後は、釣りの時間となり、釣れた魚が、2日目の昼食となる。

「私も、釣りは未経験だから、矢本君よろしく」

詩奈しいなの分は、私が釣るから、大丈夫よ!」

 瑞輝みずきと釣りに行った経験の有る若葉が、先輩風を吹かせた。

「若葉も釣り出来るの? 良かった、これで、昼食は安心!」

 出来上がったキーホルダーをナップザックのファスナー部分などに付けて、川原へとグループで歩いた。
 詩奈しいなの隣には凌空りくが、若葉の隣には瑞輝みずきが一緒に歩いていた。

 釣りの場所は下流域で、ヤマメが釣れるはずだが、詩奈しいな凌空りくは予想通り、なかなか釣れずにいると、既に、8匹釣った瑞輝みずきと若菜が、様子を見に来た。
 
「初心者にはやっぱり難しいよね~。私達の分けてあげるから、そろそろ引き上げよう」

 ヤマメを見るのも初めてな詩奈しいなは、炭火焼きをする前に、包丁を入れて内蔵を取り出したり、串刺しする作業もどうして良いか分からず、足の怪我で触らずにいられ、幸いのように思えた。
 その戸惑っている詩奈しいなの横で、若菜と瑞輝みずきが慣れた手付きで、包丁を扱い、アッと言う間に串刺しまで終え、網に並べて焼き始めた。

「スゴイね~、2人とも、生きている魚に触る事に何の抵抗も無いなんて……」

 2人の手さばきに感心している詩奈しいな凌空りく

「ぬるっとして苦手な感触だし、内臓とか出すの気持ち悪いけど、やっぱり慣れだよね~、瑞輝みずき?」

「確かに慣れだよな~。若葉が、初めて触った時は、ギャーギャーうるさかったの思い出すし」

「どっちがよ~! 瑞輝みずきだって、めちゃうるさかったくせに!」

 瑞輝みずきと若葉の会話を聴いていると、自分と話す時と違って自然体に感じられ羨ましく感じた詩奈しいな

「美味しい~!」

 焼き立ての川魚を初めて食べて、感動した詩奈しいな
 
「でしょ~! それまでの苦労が報われる瞬間なの!」

「今度、牧田の足が治ったら、4人で、釣りとかハイキングとか行こう!」

「賛成!!」

 瑞輝みずきが提案すると、賛成した一同。
 
「あっ、でも、その前に、お祭り!」

 大事な事を思い出したような若葉。

「お祭り、もう1週間後に迫っているんだね!」

 去年のお祭りの時に恵麻えま芽里めりと、来年のお祭りは、親同伴ではなく友達同士で行けるから、それまでに彼氏を作ろうと話していたのを思い出した詩奈しいな

瑞輝みずき凌空りくも、今年もまた御神輿おみこし担ぐでしょ?」

「あれ疲れるんだよな~、なあ、凌空りく

「私と詩奈しいなは浴衣で応援するから、頑張れ~!」

(今年のお祭りは4人で行けるんだ~! 浴衣姿で、一緒に行けるなんて! この先に、そんな楽しみが待っているなら、早く杖を使わない状態まで治さないと!)

 食事を終えたグループから、帰りのバスまでの時間は、仕度をして自由行動となっていた。
 早めに釣って食べ終えた4人は、往路と同様に、詩奈しいな凌空りく、その後ろに瑞輝みずきと若葉で、ゆっくりと来た道を散策していた。

「どういう事、詩奈しいな?」

 昼食後、普通に歩いていた芽里めり達のグループが追い抜こうとした時に、凌空りくの隣に歩いている詩奈しいなを見かけ、刺々しく言った。

芽里めり……」

 凌空りくを好きな芽里めりに詰問されても当然の状況だった。

「小畑さん、放っておいてくれない? 詩奈しいな凌空りくと付き合っているんだから、お生憎様でした!」

 若葉が芽里めりのように険の有る口調で返した。

「それって、私に対する嫌がらせのつもり、詩奈しいな?」

 逆上した様子で詩奈しいなに迫ろうとしていたのを、凌空りくが止めた。

「牧田さんは、悪くない。僕が口説いたから」

 自分をかばう北岡の背中に鼓動が高鳴る詩奈しいな

「北岡君は、同情を好きって気持ちと錯覚しているだけなんでしょ? 歩けない詩奈しいなが可哀想に思えて」

 負け惜しみのように言い続けた芽里めり

「お前、牧田に対して、逆恨みし過ぎなんだよ~! もう、いい加減にしろよ!」

 瑞輝みずきが怒鳴って、芽里めりとそのグループの女子達は、先に走って行った。

(矢本君……かばってくれた! 嬉しい!)

 歩き過ぎたのと寝不足のせいか、バスに辿り着いた時には、右足首が痛くなり、頭が朦朧もうろうとしてきた詩奈しいな
 バスの座席は、芽里めりが前の方のグループの女子達に席を変えてもらったのも虚しく、詩奈しいな凌空りく瑞輝みずきと若葉が隣り合って座った。
 人数の確認の時に、それを見た浜口が冷やかすよう顔つきになった。

「グループ外でも、車酔いで席移動が有るくらいだから、グループ内での席の移動は良しとしますか。青春だな~、くそ~っ!」

 通路挟んで斜め後ろの席に座った芽里めりの突き刺すような視線よりも、体が熱いのが気になる詩奈しいな
 バスに揺られながら、眠りたくない詩奈しいなだが、右足首の痛さが有っても、まぶたが何度も落ちて来るのを必死で防ごうとした。
 
「牧田さん、大丈夫? 眠いというより、具合悪そうだけど」

「大丈夫なんだけど、寝不足が続いているせいかな……?」

 凌空りくが、詩奈しいなの手を触ると、熱いくらいに感じ、慌てて浜口を呼んだ。

 浜口は、詩奈しいなの額に手を当て、明らかに高い事をバスガイドに伝え、救急箱から体温計を借りた。

「38.1度、高熱じゃないか! 大丈夫か、牧田?」

「大丈夫です……ただフラフラして、足が……」

 右足首が痛い事を瑞輝みずきに聞かれたくなくて、ずっと我慢していたが、睡魔で頭が回らず、うっかり口が滑ってしまった詩奈しいな

「足……? 右足首か? ちょっと見せろ」

 浜口に言われ、白靴下を下げると、右足首の骨折した辺りがいつもより腫れ手術痕がんでいた。
 んでいる状態もだったが、初めてその10㎝弱の手術痕を直視した凌空りく瑞輝みずきや若葉の衝撃は大きかった。
 何も言わずとも、彼らの表情からその気持ちは詩奈しいなに伝わった。
 
 「うわっ、きっも~!!」

 座席から立って、詩奈しいなの手術痕を盗み見していた芽里めりの声が、バス中に響いた。

(出来ることなら、矢本君や北岡君に、この手術痕、見られたくなかった……)

「小畑、うるさいぞ!! おそらくは、細菌感染しているのかも知れない。帰りは中央市民病院で下ろしてもらおう。病院と牧田の家にも連絡しておく」

 それほど大ごとになるとは思わなかった詩奈しいなは、驚いて眠気も吹っ飛んだ。
 凌空りくはもちろん、瑞輝みずきも若葉も心配そうに詩奈しいなを見ている。

「大丈夫、そんなに痛くないし……」

 慌てて安心させようとしたが、眠気が飛んでも、熱っぽい赤らんだ顔は隠せなかった。

(どうしても参加したくて、反対押し切って林間学校に参加したのに、最後に、こんな事になるなんて……)

 参加する事をあまり快く思ってなかった母の事や、怪我が悪化した事で瑞輝みずきがまた気に病む事を思うと、ただ楽しみたくて林間学校に参加したがっていた自己本位さが悔やまれた詩奈しいな
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