足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

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個室での女子バナと……

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「さてと、詩奈しいな~!」

 男子2人が去った後、早速、探りを入れようと、肘で詩奈しいなをつつく若葉。

「えっ、何、若葉?」

「しらばっくれないで、凌空りくとは、どうなったのか、教えて~!」

 ニヤニヤしながら、詩奈しいなに尋ねる若葉。
 
「北岡君とは……お付き合いする事になった」

 少し躊躇ためらいいがちな口調で伝えた詩奈しいな

「えっ、マジで? そうなったんだ?」

「うん……」

 若葉を騙している後ろめたさと、偽装だと見破られないか心配しながら答えた詩奈しいな

凌空りく詩奈しいなが!! なんか、身近な2人過ぎて、急に言われても信じられないけど……おめでとう、詩奈しいな!! 凌空りくは、ホントにイイ奴だから、詩奈しいなの相手が凌空りくで良かった~!!」

 感激で泣きそうな勢いの若葉。

「あ、ありがとう! うん、北岡君は、私なんかにはモッタイナイくらいのイイ人だよね、ホントに!」

詩奈しいなだって、私の自慢の友達なんだから! 今まで、気付かなかったけど、凌空りく詩奈しいなって、すごく似合っている、良かった~!」

 詩奈しいな自身よりも、ずっと衝撃の大きそうな若葉を見ていると、自分の為に喜んでくれているのが伝わり、偽装交際という事に良心の呵責かしゃくを感じずにいられない詩奈しいな

「ありがとう。若葉は、どうなの? 矢本君と付き合っているの……?」

 自身の交際の件がきっかけで、やっと若葉に瑞輝みずきとの関係を尋ねる事が出来た。

瑞輝みずきとは幼馴染みで、ずっと家にも出入りして家事とか手伝っているし、私が一番身近な女子だって事は自負しているんだけどね……なんかそれ以上、進めないと言うのか、じれったくなってしまう!」

 若葉のような人気者の美少女が、瑞輝みずきといつも一緒に行動していながら、そんな悩みを抱えている事が信じられなかった詩奈しいな

「そうだったんだ……小学生の頃から、よく矢本君と若葉が一緒にいるの見かけていたから、てっきり2人は付き合っていると思っていた。2人が並んでいると、ホントお似合いに見えているし」

「ありがとう! 私、瑞輝みずきとばっか一緒にいるから、女友達とか出来にくくて、ほら、ああ見えて、瑞輝みずきってわりと人気者のようだから、一緒にいると反感買われやすいのかも」

 そこは若葉がかなり勘違いしてるようだから、訂正しなくてはと思った詩奈しいな

「違うよ、若葉。反感買われているのは、私の方で……若菜と矢本君と北岡君で、周りからは『三貴神』って呼ばれているくらいだから、どちらかというと若菜は、神々しくて近寄り難いんだと思う」

「えっ、『三貴神』って、何それ? 初めて聞いた!」

 三貴神は、天照大御神アマテラスオオミカミ月読命ツキヨミノミコト建速須佐之男命タケハヤスサノオノミコトだが、若葉、凌空りく瑞輝りくへの敬愛を込めて呼んでいるのだと伝えた詩奈しいな

瑞輝みずき凌空りくはともかく、私は、当てはまらないよ。多分、ついで程度の扱いじゃない?」

 若葉は、自身の美しさや人気には気付いてない様子。

「そんな事無いよ~。若葉みたいに、キレイで、活発で優しい子だったら、私が男子だとしても、好きになってると思う!」

「スゴイ褒め言葉をありがとう! あ~、瑞輝みずきも、そう思ってくれるといいのに、なんか邪険に扱われてムカつく~!」

 自分の感情に素直になれる若葉が、羨ましく感じられる詩奈しいな

「矢本君って、ツンデレな感じだから、好きとかって事を上手く表現出来ないのかも」

「そうなんだよね~。その点、凌空りくは、予想外に積極的過ぎて、マジで驚かされた!!」

 若葉が驚くのも無理は無く、詩奈しいなですら、まだ信じられない気持ちが続いていた。
 そして、クラスメイト達のイジメから守り、若葉や瑞輝みずきとずっといられるように、偽装交際まで申し出てくれた。
 それほどまで詩奈しいなの事を考えて言動してくれる凌空りくに対し、瑞輝みずきとはまた違った感情を抱き始めている自分が理解出来ずにいた。

「私も、自分の事なのに、なんか信じられないから……」

凌空りくは頭も良いし優しいからね~。詩奈しいな凌空りくのそういうところが好きになったの?」

 改めて尋ねられて、返答に困る詩奈しいな
 偽装の件を悟られないよう、自然な感じで話したかった。

「北岡君、入院中も、ずっと授業内容の分かりやすいノートを届けてくれていて、色々気付いてくれるし、話しやすいところかな。クラスメイト達を敵に回しても、かばってくれたし、一緒にいると、気持ちが和らぐようなところも……」

 いつの間にか、思っていたよりも口から理由が出て来て、詩奈しいな自身、驚かされた。

「そんなに凌空りくって、詩奈しいなに色々尽くしていたんだ~、知らなかった! そうだね、そんなに親身になってくれたら、好きになっちゃうよね~! なんか、ホント嬉しいな~、こんな身近で大好きな2人がくっ付くのは!」

 自分の事のように喜ぶ若葉。
 偽装のはずなのに、献身的な凌空りくに対し、自分の気持ちが動揺している状態に気付き、内心うろたえた。

(私、どうしたんだろう? 矢本君の事がずっと好きなはずなのに、北岡君に優しくされて、気持ちが揺れ動いている……? 好きなのは、矢本君だってことくらい、北岡君も分かっていたから、断る事だって、いくらでも出来たはずなのに。矢本君や若葉と一緒にいたいとか、クラスメイト達の嫌がらせから逃げたいとか、それだけじゃなくて、北岡君が偽装交際まで申し出てくれた事が、本当に嬉しかった……いつもよくしてもらっているからとか、その恩返し的な気持ちも有るのかも知れないけど……自分で自分が分かんない……自分が、こんな気が多い人間だなんて思わなかった……)

 その時、再びドアをノックする音がして、瑞輝みずき凌空りくが何か忘れて戻ったのかと思いドキドキした詩奈しいな
 ドアの向こうには、1組であまり目立たず大人しい感じの2グループの女子8人が立っていた。

「牧田さん、あのね、私達は小畑さんが怖くて、自分達がターゲットにされたら困るから、つい見て見ぬふりしか出来てなかったけど……本当は、こんなのおかしいと思っているから!」

「小畑さんが杖を折った頃から、クラスの男子達も、やり過ぎだと思っているようだし、矢本君や有川さんもいるから、もう小畑さんサイドに付く事はしないと思う」

「小畑さんの味方は、今は彼女のグループと、矢本君や北岡君を好きな女子のいるもう1つの女子グループの計8人だけだから。私達もいざとなったら、盾となるし。もう心配しないで」

「私達が無力なせいで、1組に応援に来てくれた有川さんとも仲良くしたいし」

「今まで、黙っているだけで何も出来なくてゴメンね」

 8人の女子が訪れ、発した言葉の数々により、若葉以外の女子には閉ざしていた心が、氷解したような温かい気持ちになれた詩奈しいな
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