足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

文字の大きさ
39 / 45
39.

罪意識と……

しおりを挟む
「牧田さん......」

 やっと到着したエレベーターに憤りながら足を踏み入れかけていた若葉が、 凌空りくの声で驚き振り返った。
 エレベーターは、誰も乗せないまま扉を閉めて下に移動した。

「ごめんなさい、立ち聞きするつもりは無かったんだけど、北岡君が忘れたノートを届けようとして……」

  詩奈しいなの耳に会話内容が届いていたと知り、焦った若葉。

「ゴメンね、 詩奈しいな。私、 詩奈しいなの事は大好きだけど、お祭りは別問題だから、行かせてもらう!」

  詩奈しいなに対し気まずく思いながらも、自分の要求を通す若葉。

「うん……若葉の言う通りだよ。矢本君が、少し前、友達に、映画に誘われた時に断ってくれたのは嬉しかった。今回も、そうやって楽しめないからって言ってくれたのは嬉しい。でも罪拭いとして言っているなら、もう十分だから! 私は、これ以上、みんなの重荷になるつもり無い! ホントにお願いだから、3人でお祭りを楽しんで来て!」

「牧田……分かったよ」

 自分の言葉では断固として動かなかった 瑞輝みずきが、気持ちの昂っている 詩奈しいなにより説得させられた事が予想外だった若葉。

「北岡君、ノートありがとう。私は1人でリハビリ時間増やして頑張るから、北岡君もお祭り楽しんで来てね」

  凌空りくに対して話す時には、何事も無かったかのように、いつもの口調と笑顔になった 詩奈しいな
 再び呼んだエレベーターで降りていく友人達を見送った後は、声を押し殺し涙を廊下に こぼしながら、両松葉杖で病室まで戻った 詩奈しいな

(私って、疫病神みたいだ……私がいると、誰も幸せになれない気がする。いつの間にか、私、大切な友達に対して、見えない 足枷あしかせを繋いでしまっていたみたい。このままでは、本当にダメになりそう、私だけじゃなく、みんなも……)

 エレベーターから降りた後、しばらく沈黙して歩いていた3人。
 歩いているうちに気持ちを抑え切れず、今回も口を割った若葉だった。

「ねえ、私、 詩奈しいなに言い過ぎた?」

 まだ黙りこくる 瑞輝みずきと 凌空りく

「暗黙の了解って事? だって、 瑞輝みずきが悪いんだから! お見舞いの時点では、行くって言っておきながら……」

「もう行く事に決まったんだから、黙ってくれよ」

 エレベーター前での会話を聴いていた時の 詩奈しいなの事を考えると、気持ちが晴れないままの 瑞輝みずきと 凌空りく

「僕らもこんなに心苦しくしているくらいだから、牧田さんは、もっと辛いかも知れない。昨日は修羅場で、今日も最後にこんな思いをさせてしまって。一緒にいてあげたいけど、面会時間も終わったし……」

 沈んだ調子の 凌空りくの言葉で、罪意識に苛まれた若葉。

「 詩奈しいなを傷付けるつもりは無かったの、ホントに……でも、私達、毎年恒例のお祭り行事なのに、最近になって加わった 詩奈しいなのせいで、それが実現出来なくなったら、私達ももちろん不満だけど、 詩奈しいなだって、ずっと後ろめたく感じると思って……」

「分かってくれているよ、牧田さんは。ただ、若葉は、発言する場所をよく考えよう」

 若葉と 凌空りくのやり取りが素通りしていくように感じる 瑞輝みずきには、昨日と今日の 詩奈しいなの表情が頭から離れずにいた。

「 瑞輝みずきも何とか言ってよ~! なんだか、私だけが悪者になってるんだから!  詩奈しいなばかりじゃなく、私の事も少しくらいかばってくれてもいいのに……」

  詩奈しいなを傷付けた後悔と、冷たい 瑞輝みずきの態度で、明るさが取り柄の若葉もさすがに気落ちし、 瑞輝みずきからの優しい言葉が欲しかった。

「俺は……牧田に、怪我のせいで辛い目ばかり遭わせているのに、何もしてあげられてなくて、傷付ける事しか出来てないのが辛いんだよ!」

 そんな時でも、 瑞輝みずきの口から出て来たのは、自分ではなく 詩奈しいなの名前だけだったのが、心に突き刺さった若葉。

「また、 詩奈しいな……?  瑞輝みずきも 凌空りくも 、いつだって詩奈しいなの事ばかり! 私にはあんなに反論していたのに、 詩奈しいなが説得したら、すんなりOKしたし、 瑞輝みずきのバカ!」

  瑞輝みずきの発言で激怒し、1人足早に先頭を切って歩き出した若葉。
 
「若葉も 瑞輝みずきも、僕らは揃ってお祭りに行く事になったんだから、もうその 経緯いきさつは気にしないで楽しもうよ」

  凌空りくの発言で、若葉と 瑞輝みずきは無言で頷いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

処理中です...