足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

文字の大きさ
38 / 45
38.

エレベーター前での会話と……

しおりを挟む
 翌日も午後から、母が帰宅していた。
 昨日の今日で、もしも3人揃って面会に来たとしても、どう対応してよいものか分からず困惑しながら、長い時間を1人で待っていた 詩奈しいな

 16時半を回ったあたりから、そろそろ来ると予想していたが、 瑞輝みずき達3人は、部活後の18時近くに面会に来た。

「遅くなって、ごめんね~、 詩奈しいな

 今まで通りの若葉の口調に、ホッとした 詩奈しいな

「ううん、部活で疲れているのに、来てくれてありがとう!」

「そこまで疲れてないから大丈夫だよ」

 若葉と 凌空りくは自然に話していたが、 瑞輝みずきは話に加わらないのが気になる 詩奈しいな

(矢本君、話しかけてもくれないし、目を合わせてもくれない……やっぱり、嫌われたのかも知れない)

「牧田さん、今度の入院はどれくらいになるの?」

  凌空りくが、今日の授業分のノートのコピーを出した。

「多分、あと10日くらいかな」

 その言葉に、3人が一瞬固まり、最初は不思議そうに感じた 詩奈しいなだったが、お祭りの日程を思い出し、ハッとなった。

「あっ、お祭り有るんだったね。私は行けなくなって残念だけど、3人で行って楽しんでね。後から、御神輿おみこしの話とか聞かせて」

 行けなくなったショックが大きかったが、それを3人に気付かれないように隠し、明るい声で言った。

「俺も疲れるから、行かない」

 思いがけない 瑞輝みずきの言葉に、 詩奈しいなはもちろん、若葉も 凌空りくも驚かずにいられなかった。

(矢本君……まさか、昨日の事で私に遠慮しているの……?)

  瑞輝みずきに対し、申し訳無く思う反面、嫌われてないのを確認が出来たような喜びに包まれる 詩奈しいな

「何言ってるの?  瑞輝みずきが行かないなんて、おかしい!」

「人混み苦手だから、僕が牧田さんと残る。 瑞輝みずきは若葉と行けよ」

  瑞輝みずきと若葉には偽装という事は隠し、2人の前では交際宣言のしている 凌空りくは、 詩奈しいなと一緒にいるのは自分という事を暗に主張した。

「俺は、楽しめる気分じゃね~から行かない」

「 凌空りくは仕方ないかも知れないけど、 瑞輝みずきは行こう!  詩奈しいなだって、自分のせいで 瑞輝みずきが楽しめなくなっていると勘違いしたら困るでしょ?」

 若葉の言葉に、一瞬でも 瑞輝みずきの言動に喜んでしまった自分の浅はかさを感じた 詩奈しいな

「私は……せっかくずっと楽しみにしていたお祭りなんだから、私の事は構わないで、3人で楽しんで来て欲しい!」

 彼らが毎年、 御神輿おみこしを担ぐのは恒例の事であるなら、その年に1度しかない行事を自分のせいで台無しにして欲しくなかった。

「ほら、 詩奈しいなもこう言ってくれてるし、いつも通り参加しようよ!」

  瑞輝みずきも 凌空りくも、 詩奈しいなを困惑させたくなかったのと、病室で騒ぎ立てる事で昨日の修羅場や、前回の入院時の 詩奈しいなの友人達との惨事を 彷彿ほうふつさせてしまいそうで、その場は、若葉の要求通りに丸く収めようとした。
 
 3人が去った後、ノートのコピーと一緒に 凌空りく自身のノートも重なっている事に気付いた 詩奈しいな
  両松葉杖で身体を支え、右手の親指と人差し指の間にノートを持ち、もしかするとエレベーター待ちで、まだ彼らがいるかも知れないと思い慌てて追いかけた。

 やはり、エレベーターがまだ来てない状態で、3人の後ろ姿が有り、声をかけようとした時、若葉の苛立ったような大きな声が響いた。

「どうして行かないの、 瑞輝みずき?  詩奈しいなだって、3人で行くように勧めてくれたのに! 去年までは親同伴だったけど、今年は、 御神輿おみこしの後、 瑞輝みずきと浴衣で歩くの楽しみにしていたんだから!」

「俺は、牧田が入院している時に、自分達だけで楽しみたくない!」

「まさか、 瑞輝みずきは、昨日、中沢さんが言っていた事を気にしてるの?  瑞輝みずきにとって、 詩奈しいなって何? 親友の 凌空りくの彼女でしょ?  瑞輝みずきが怪我させた負い目を感じているのは分かるけど、私達、別に 詩奈しいなの付き人でも奴隷でも無いんだから、運命共同体のように、お祭りまで行かないとかって、どうかと思う!」

 そう言い切った若葉の声が大きく、 詩奈しいなの病室まで届くのではと、病室の方に移した 凌空りくの視線の先には、立ち止まって近付けないでいる 詩奈しいながいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

処理中です...