足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

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手紙と……

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  詩奈しいなと母が北海道の新千歳空港に到着した頃、1年1組では、帰りのホームルームで、神妙な面持ちの浜田が生徒達を前にしていた。

「今日は、皆に知らせる事が有る。突然だが、牧田が父親の転勤で北海道に移った」

 浜口が、『移った』と過去形で言ったのを聞き漏らさなかった 瑞輝みずき、 凌空りく、若葉。

「えっ、うそ! そんな事、聞いてない……!」

「いきなり引っ越すって、何かの間違いだろ?」

 若葉と 瑞輝みずきは信じられない口調で浜口に投げかけたが、 凌空りくは、数日前からの 詩奈しいなの様子で思い当たる節がいくつか有ったのを思い出した。

「矢本、北岡、有川には話が有る。ホームルーム後、職員室に来るように」

 職員室に行くまで、 詩奈しいなの転居というのが、3人ともエイプリルフールか何かの悪い冗談のように思えてならなかった。
 が、浜口から、3人宛ての 詩奈しいなの直筆の手紙を一通手渡され、それが紛れも無く真実なのだと受け入れざるを得なくなった。

「俺も3日前、牧田の母親から事情を知らされて、初めて知ったんだ。牧田は、お前達と面と向かって言う勇気が無かったから、今日まで知らせずにいる事を望んでいた。この手紙は、今朝早く、牧田から預かった」

 今朝早くという言葉に、3人はビクッとなった。
 朝練が有る日だったら、サッカー部顧問である浜口と行動している3人は 詩奈しいなが来校している事に気付けたはずだったが、今朝に限って朝練は無かった。

 複雑な心境で手紙を広げると、 詩奈しいなの少し丸みを帯びた柔らかい書体が3人の目に飛び込んできた。


   大好きな3人へ

 引っ越しの事を手紙で伝える手段を選んで
 事後報告という形になってしまってごめんなさい。

 面と向かって話すと上手く言えなくなって
  口籠くちごもったり、泣いてしまうかも知れなかったから……

 私は今まで3人に沢山助けてもらって
 手伝ってもらっていた
 本当にありがとう!

 こんな足手まといにしかならない厄介者の私と
 友達として仲良くしてくれたのが
 何より嬉しかった!

 嬉し過ぎて居心地がすごく良過ぎたせいで
 いつまでも4人で居たくて
 北岡君の好意を利用するような形になって
 本当にごめんなさい。

 あっ、この前、矢本君にも言ったけど
 私が好きなのは
 本当に北岡君だから!

 でも
 それが自分に負い目が有るからなのか
 優しくされて舞い上がっているだけなのか
 本心なのかどうか分からなくて……

 矢本君にはあんな風に言い切ったけど……

 友達なのに
 若菜にも話せなくて
 申し訳無かったけど……

 私が小学生の時から
 ずっと好きだったのは
 矢本君で

 若菜がいるから無理と
 自分に言い聞かせていても
 やっぱり矢本君の事も気になって

 だから私は
  恵麻えまや 芽里めりが言うように
 足の怪我というハンデを利用して
 みんなを 足枷あしかせで繋いでいた
 サイテー人間なんだと思う!!

 でも裏を返すと……

 北岡君だって
 私に対する同情を勘違いしているのかも知れない

 早く足を治したいのに
 治った途端
 友情を失うのも怖かったり

 3人の友情に甘えっぱなしの
 こんな情けない自分に
 嫌気が差してしまっていた

 かと言って......

 3人から離れて
 孤独なまま1組で頑張るって勇気も無くて

 だから
 私の事を誰1人知らない新天地で
 やり直す道を選ぶしかなかった

 そこで
 私は知らない人達の中で
 頑張ってみる!

 上手く出来たら
 その事を私の自信にして

 父の転勤が終わる
 2-3年後に

 怪我というハンデも無くして
 私は生まれ変わって
 必ずみんなの所に戻るから!

 その時
 3人が笑顔で迎えてくれたら
 それほど嬉しい事は無いって

 そんなのホントに
 自分勝手だって分かっているけど

 それを期待しながら
 北の大地での新生活を頑張ります!

 今まで
 本当に本当に本当にありがとう!

 生まれて来てから一番幸せと思える時間を
 沢山与えてくれた大切な友人達へ

  牧田 詩奈


  詩奈しいなからの手紙を3人で読み、笑う箇所も有ったが、最後に涙無しに読めなくなっていた。
 それでも、その手紙に記された内容によって、これが 詩奈しいなとの最後の別れではなく、再会への通過点のように思え、3人の顔に笑顔が戻った。

「 瑞輝みずき、告るチャンス無くなって、残念だったね!  詩奈しいながいない間に、私に心変わりしてもいいよ~!」

 男泣きしていた 瑞輝みずきにバックハグする若葉。

「んな事あるか!」

 若葉を振り払った 瑞輝みずき

「2-3年か、まずはその間、 瑞輝みずきに見劣りしないように鍛えなければ!」

  凌空りくが、 瑞輝みずきを挑発するように言った。

「あっ、そうか。俺は勉強を頑張るんだった!」

「私は、勉強はもちろん、 瑞輝みずきを振り向かせるように女磨く事にする!」

 寂しさを感じつつも、3人はそれぞれ、 詩奈しいなに語った夢に向かって前進を試みる事にした。
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