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友人達との別離と……
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瑞輝が病室から出た後も、興奮で顔の 火照りと動悸がしばらく止まないまま、それを冷ますかのように涙が両頬を流れ落ちた。
( 恵麻があの時バラしたから……やっぱり矢本君、気にしていたんだ。今日が最後で、キレイさっぱりな気持ちで、ここを去りたかったのに……)
病院の1階の玄関付近で待っていた 凌空と若葉に気付き、階段降りてからも早歩きで向かった 瑞輝。
3人揃って病院を後にしてから、気になっていた疑問を投げつけた若葉。
「ところで、忘れ物って何だったの、 瑞輝?」
「お祭りのお礼を言った」
「なるほど、最後まで行かないって言ってたわりには、随分楽しんでいたからな、 瑞輝は」
お礼だけの用事だったのか疑いつつも、 茶化すように言った 凌空。
「あと、この前の中沢さんの言った事を確かめようとした」
それまで笑っていた 凌空と若葉から笑顔が消えた。
「どうしてそんな事したの、 瑞輝? 何のために?」
瑞輝には自分がいながら、中沢の発言の真相を確かめようとした事が信じられなかった若葉。
「 凌空、ゴメン。気付いたのは、林間学校の時に、 凌空と牧田が付き合い出した頃だったけど、俺も牧田を好きになっていた……」
瑞輝の告白に、耳を疑った2人。
「なに、それ? まさかと思うけど、 瑞輝、今、 詩奈に告りに行ったの?」
お祭りで2人の楽しい時間を過ごした余韻にまだ浸っていただけに、その 瑞輝の発言で、張り裂けそうな気持ちになる若葉。
凌空は何も言わず、 瑞輝の返答を待った。
「まず、中沢さんの言った事が本当なのか確かめようとしたら、牧田に両手振って、思いっきり否定されて、好きなのは 凌空だって言われたから、そのまま戻った」
「……なんだ、良かった~!!」
詩奈の反応をドキドキしながら聞いていたが、胸を撫で下ろした若葉。
凌空は、最初はクックッと声を 潜めて笑っていたが、そのうち大爆笑し出した。
「 凌空?」
不可解そうに見ている 瑞輝と若葉。
「そう言われて、はい分かりました……って退散したの、 瑞輝? 2人とも不器用過ぎて、笑える!」
「 凌空、なんかその態度、ムカつくんだけど!」
瑞輝の代わりに憤慨している若葉。
「牧田さん、僕を好きだって言ってくれたんだ……その言葉が嬉しかったから、これ以上、2人がこじれないようにホントの事言わせてもらうけど、牧田さんは、ずっと 瑞輝の事が好きだよ」
瑞輝が 詩奈の事を好きなら、自分の想いは封じるつもりで 凌空が言った。
俄かには信じられない様子の 瑞輝と若葉。
「それなら、どうして 詩奈は、 凌空と付き合ったりしたの?」
「 瑞輝には若葉がいて、牧田さんは若葉の事も大好きだし、自分では 敵わないと思ったんだ。でも、クラスメイト達のイジメも有るから、足が治っても4人で行動出来るようにと、僕が偽装交際を申し込んだ」
皮肉にも、 凌空との偽装交際が始まった頃、 瑞輝は 詩奈に対する自分の気持ちに気付いた。
人の気持ちには敏感なはずの 凌空も、偽装交際が始まり 詩奈に神経傾ける事が多くなり、その 瑞輝の気持ちには気付けずにいた。
「そうだったのか……仲良かったから、偽装と思えなかったけど」
「僕は最初から牧田さんが好きだったから、僕の方は偽装でも無く、本気で付き合っている気持ちを味わっていたんだけどね。牧田さんも、いつかそうなってくれたらと願いながら」
「あ~ん、なんで、2人とも 詩奈ばっかり!! 私のどこがいけないのか言ってよ!!」
若葉が収拾つかない自分の気持ちを訴えた。
「若葉は、俺の大事な幼馴染みであり、たった1人の初恋の人だから!」
そう照れながら言い、初めて 瑞輝の方から若葉を抱き寄せた。
「初恋……初恋って実らないって言うよね。まあ、初恋は1人しかいないし、それが私だったんだ。結局、 瑞輝にとって、私が一番身近で有る事に変わり無いし、 詩奈の事は大好きだからいいかな!」
瑞輝にとって唯一無二の存在という強みで、自分を納得させた若葉。
翌々日の午前中、速やかに退院手続きを終えた母。
前日からのT字杖を右手に、慎重に歩く 詩奈。
「本当にいいの、これで?」
友人達と対面での最後の挨拶を避けたかった 詩奈には、この日の退院と同時の転居は好都合だった。
「もう、決めた事だから! 行こう、お母さん」
瑞輝達に知らされる前に、この地を去りたいという 詩奈の希望で、数日前、母が学校に連絡し手続きを済ませ、当日の帰りのホームルームまで転居については内密にする事を依頼した。
ここでの思い出は、2-3年後に父の転勤が終わり戻って来るまでの間、心の宝箱に施錠しておくつもりでいたが、母と電車に乗り空港まで向かう途中、見慣れた街並みを見ていると、知らず知らず涙腺が緩んでくる 詩奈。
「今度ここに戻って来る時には、 詩奈はどんな風になっているのかしらね?」
詩奈の沈んだ気分を吹き飛ばそうと、希望に満ちているはずの数年後の姿を想像させようと試みた母。
「ほどよく健康的に焼けて、元気いっぱいに 闊歩している姿」
それは、今の 詩奈の姿からは 程遠く、若葉のイメージに近かった。
「それじゃあ、皆、 詩奈だと気付けないかもね!」
車窓に目を向けながら、2人で笑い合った。
電車が空港に到着し、飛行機も遅延無く、先に到着している父の待つ北の大地へと2人をその翼で運んだ。
( 恵麻があの時バラしたから……やっぱり矢本君、気にしていたんだ。今日が最後で、キレイさっぱりな気持ちで、ここを去りたかったのに……)
病院の1階の玄関付近で待っていた 凌空と若葉に気付き、階段降りてからも早歩きで向かった 瑞輝。
3人揃って病院を後にしてから、気になっていた疑問を投げつけた若葉。
「ところで、忘れ物って何だったの、 瑞輝?」
「お祭りのお礼を言った」
「なるほど、最後まで行かないって言ってたわりには、随分楽しんでいたからな、 瑞輝は」
お礼だけの用事だったのか疑いつつも、 茶化すように言った 凌空。
「あと、この前の中沢さんの言った事を確かめようとした」
それまで笑っていた 凌空と若葉から笑顔が消えた。
「どうしてそんな事したの、 瑞輝? 何のために?」
瑞輝には自分がいながら、中沢の発言の真相を確かめようとした事が信じられなかった若葉。
「 凌空、ゴメン。気付いたのは、林間学校の時に、 凌空と牧田が付き合い出した頃だったけど、俺も牧田を好きになっていた……」
瑞輝の告白に、耳を疑った2人。
「なに、それ? まさかと思うけど、 瑞輝、今、 詩奈に告りに行ったの?」
お祭りで2人の楽しい時間を過ごした余韻にまだ浸っていただけに、その 瑞輝の発言で、張り裂けそうな気持ちになる若葉。
凌空は何も言わず、 瑞輝の返答を待った。
「まず、中沢さんの言った事が本当なのか確かめようとしたら、牧田に両手振って、思いっきり否定されて、好きなのは 凌空だって言われたから、そのまま戻った」
「……なんだ、良かった~!!」
詩奈の反応をドキドキしながら聞いていたが、胸を撫で下ろした若葉。
凌空は、最初はクックッと声を 潜めて笑っていたが、そのうち大爆笑し出した。
「 凌空?」
不可解そうに見ている 瑞輝と若葉。
「そう言われて、はい分かりました……って退散したの、 瑞輝? 2人とも不器用過ぎて、笑える!」
「 凌空、なんかその態度、ムカつくんだけど!」
瑞輝の代わりに憤慨している若葉。
「牧田さん、僕を好きだって言ってくれたんだ……その言葉が嬉しかったから、これ以上、2人がこじれないようにホントの事言わせてもらうけど、牧田さんは、ずっと 瑞輝の事が好きだよ」
瑞輝が 詩奈の事を好きなら、自分の想いは封じるつもりで 凌空が言った。
俄かには信じられない様子の 瑞輝と若葉。
「それなら、どうして 詩奈は、 凌空と付き合ったりしたの?」
「 瑞輝には若葉がいて、牧田さんは若葉の事も大好きだし、自分では 敵わないと思ったんだ。でも、クラスメイト達のイジメも有るから、足が治っても4人で行動出来るようにと、僕が偽装交際を申し込んだ」
皮肉にも、 凌空との偽装交際が始まった頃、 瑞輝は 詩奈に対する自分の気持ちに気付いた。
人の気持ちには敏感なはずの 凌空も、偽装交際が始まり 詩奈に神経傾ける事が多くなり、その 瑞輝の気持ちには気付けずにいた。
「そうだったのか……仲良かったから、偽装と思えなかったけど」
「僕は最初から牧田さんが好きだったから、僕の方は偽装でも無く、本気で付き合っている気持ちを味わっていたんだけどね。牧田さんも、いつかそうなってくれたらと願いながら」
「あ~ん、なんで、2人とも 詩奈ばっかり!! 私のどこがいけないのか言ってよ!!」
若葉が収拾つかない自分の気持ちを訴えた。
「若葉は、俺の大事な幼馴染みであり、たった1人の初恋の人だから!」
そう照れながら言い、初めて 瑞輝の方から若葉を抱き寄せた。
「初恋……初恋って実らないって言うよね。まあ、初恋は1人しかいないし、それが私だったんだ。結局、 瑞輝にとって、私が一番身近で有る事に変わり無いし、 詩奈の事は大好きだからいいかな!」
瑞輝にとって唯一無二の存在という強みで、自分を納得させた若葉。
翌々日の午前中、速やかに退院手続きを終えた母。
前日からのT字杖を右手に、慎重に歩く 詩奈。
「本当にいいの、これで?」
友人達と対面での最後の挨拶を避けたかった 詩奈には、この日の退院と同時の転居は好都合だった。
「もう、決めた事だから! 行こう、お母さん」
瑞輝達に知らされる前に、この地を去りたいという 詩奈の希望で、数日前、母が学校に連絡し手続きを済ませ、当日の帰りのホームルームまで転居については内密にする事を依頼した。
ここでの思い出は、2-3年後に父の転勤が終わり戻って来るまでの間、心の宝箱に施錠しておくつもりでいたが、母と電車に乗り空港まで向かう途中、見慣れた街並みを見ていると、知らず知らず涙腺が緩んでくる 詩奈。
「今度ここに戻って来る時には、 詩奈はどんな風になっているのかしらね?」
詩奈の沈んだ気分を吹き飛ばそうと、希望に満ちているはずの数年後の姿を想像させようと試みた母。
「ほどよく健康的に焼けて、元気いっぱいに 闊歩している姿」
それは、今の 詩奈の姿からは 程遠く、若葉のイメージに近かった。
「それじゃあ、皆、 詩奈だと気付けないかもね!」
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