足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

文字の大きさ
42 / 45
42.

否定と……

しおりを挟む
「……でね、この時、 瑞輝みずきがコケちゃって、 御神輿おみこし担いでいた人達がバランス崩しそうになって大変だったの!」

  詩奈しいなの前で若葉が、デジカメを出して画像を見せ、お祭りの 神輿みこし担ぎの様子を説明した。

「そんな大げさなコケ方してね~よ!」

「いやいや、 瑞輝みずきのせいで将棋倒しになりそうで大変だった」

  瑞輝みずきと 凌空りくのどちらの言葉を信じて良いか、分からなくなる 詩奈しいな
 カメラをコマ送り続けていると、浴衣姿の若葉と 瑞輝みずきのツーショットも有り、 詩奈しいなはドキッとした。

「天気も良くてお祭り日和だったね~! 写真もよく写っている。見せてくれてありがとう、若葉」

 入院していなかったら、浴衣姿の自分も一緒に写っていたかも知れないと残念に感じながら、カメラを若葉に戻した 詩奈しいな

「牧田さん、またロフストランド杖になったんだね~! 今回は早いね~!」

  凌空りくが、林間学校で折れた形跡の残るロフストランド杖に気付いた。

「うん、先週末はリハビリ頑張っていたから。もうすぐ、杖無しにするか、少しの間T字杖にしてからの方がいいか選ぶ事になったの」

「T字杖?」

 キョトンとする若葉に、 詩奈しいなに渡すコビー用紙の裏に、ササっとT字杖を手描きした 凌空りく

「なるほど~、Tという形しているね!」

 昨日のお祭りで、念願の 瑞輝みずきと一緒に浴衣姿で露店などを見て回った余韻で、表情も声もご機嫌な若葉。

「勉強は、分からないところ無かった?」

 その日の分のコピーを渡す前に、必ず毎回、 詩奈しいなに尋ねる 凌空りく

「大丈夫! 北岡君のおかげで、今度の試験は、成績アップしていると思う! ありがとう!」

 テンションの高めな若葉と同じくらいに感じられる 詩奈しいなの様子に、また違和感が湧く 瑞輝みずきと 凌空りく

「リハビリ、そんな頑張っているなら疲れてそうだから、そろそろ帰るよ。また明日、いや明日は創立記念日だから、また明後日」

 中学校の創立記念日を思い出し、 凌空りくが言い直すと、 詩奈しいなは一瞬、表情が陰った。

「創立記念日、学校休んでいるうちにスッカリ忘れてた! また、明後日ね!」

 普通に受け答えしたものの、3人が病室から出て、 呆然ぼうぜんとなる 詩奈しいな
 今になって、彼らと会うのは、これが最後だったと気付いたのだった。

 3人はエレベーターで1階まで降りたが、 瑞輝みずかが思い出したように、Uターンしようとした。

「どうしたの、 瑞輝みずき?」

「ちょっと、忘れてた! 先行ってて!」

 エレベーターは既に上に上がり、 瑞輝みずきが階段を走り上って行くのを見て、若葉と 凌空りくが 唖然あぜんとした。

 布団に伏して泣きそうになっている時に、ノックが聞こえ、母と思い、沈んだ声で応答した 詩奈しいな

「はい……」

 思いの外、ドアが勢いよく開き、現れたのが 瑞輝みずきで焦った 詩奈しいな

「えっ、矢本君……? どうしたの……?」

「お祭り、行くように説得してくれて、ありがとう! おかげで、楽しかった!」

 その程度の事で、わざわざ戻って来てまで、お礼を言われるとは思わず、驚いてかたまったままの 詩奈しいな

「あっ、うん、良かった、3人で楽しんでもらえて……そんな、別に、お礼なんて良かったのに」

「それから、この前、中沢さんが言った事だけど……」

「あああああ~っ!! あれは、違うの!!」

  詩奈しいなは慌てて、自分でも感心するくらいの大声を出し、両手を顔の前で激しく振って否定した。

「ホントに違うから!! 私が好きなのは、北岡君だから!!」

「それなら、いいけど……そうか、じゃあ」

 あまりの 詩奈しいなの動揺ぶりに 呆気あっけに取られながら、即座に退散した 瑞輝みずき
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

処理中です...