45 / 45
45.
桜舞い散る入学式と……
しおりを挟む
例年より早く開花した染井吉野の花びらが、春のそよ風に乗ってひらひらと舞う中、南高の新入生達が、中学時代の顔見知りの生徒と待ち合わせ、入学式の催される体育館へと向かおうとしていた。
「ねぇねぇ、あの桜の木の下の3人、次元が違うようなフォトジェニックな感じなんだけど……」
「私、知ってる! 第一中で有名だった文武両道で眉目秀麗な『三貴神』じゃん! 3人揃って南高なんて、超ラッキー!!」
「美女1人にイケメン2人って事は、私の入る余地も有り?」
「無理でしょ! 鏡見なよ!」
その時、タクシーから降りて来た、頭髪検査に引っかかりそうな茶褐色のしやなかな髪と 榛色の瞳をした色白の華奢な美少女に、その辺りにいた生徒達の視線が集中した。
「誰、あの外国人か、ハーフのような人?」
「妖精っぽくない? 透けそうで、存在してるの信じられない感じ」
「この辺で見かけない感じなのに、三貴神の方へ行くけど、知り合いって事?」
「あ~あ、2対2、しかも美少女なら勝ち目無しじゃん!」
周囲の声には耳を傾ける事も無く美しい姿勢で歩いていたが、染井吉野の下に集っていた3人を認めるなり、カモシカのような細い足でしなやかに駆け寄った。
弾むような軽やかな足音に気付いた3人が振り返ると、面影の残る懐かしい笑顔に、3人の顔が一気にほころんだ。
「 詩奈、お帰り!」
「一緒に南高生になれて良かった、牧田さん」
再会が嬉しそうな若葉と 凌空に迎え入れられて喜ぶ 詩奈。
「ただいま!」
驚き過ぎて、何も言えない様子の 瑞輝をチラッと見上げて言った 詩奈。
「相変わらず、生っ白いつーか、白さに磨きがかかった感じだな。日光浴して無かったのか?」
やっと言葉を発した 瑞輝は、憎まれ口になっていた。
「してたけど、北海道だから、これが限界」
「そうだよね~、北海道なんだから! ムリ言わない、 瑞輝。 詩奈、足はどう?」
約2年半ぶりで再会した 詩奈は、かつての松葉杖姿など連想出来ないほど、ごく普通に美しい姿勢で立っている。
「とっくに完治してるよ! 短距離走や持久走なんて、前より早くなったくらい!」
「スゴイね、牧田さん! 頑張ったんだね~!」
記憶より頭1つくらい大きくなり、 瑞輝と大差無い体格の 凌空に言われて、改めて時間の流れを感じられた 詩奈。
「あっ、でも、手術痕は健在だから、もし夢が変わってなかったら、北岡君にお願いするね! 私が第一号の実験台になってあげる!」
「牧田さんや、困っている人達の為に、なるべく早く、目立たなくなる技法を見付けるよ!」
凌空の夢の実現を心待ちにする 詩奈。
そんな2人のやり取りを見て、 瑞輝は両腕を空に向けて伸ばした。
「俺は、牧田の世話役から晴れて解放されたから、名医目指して頑張るか~!」
その言葉が寂しく感じつつも、やっと 瑞輝を自由な状態に戻せて、救われた思いの 詩奈。
「矢本君、本当にありがとう! そして、これからは、普通に友達としてよろしくね!」
「普通に友達だって、 瑞輝! 私、まだチャンス有るわけだね~!」
冷やかしながら、 詩奈がよく見慣れていたように、 瑞輝の腕を組んで玄関の方へ歩み出した若葉。
「あっ、牧田さんに言ってなかったけど、2年半前、 瑞輝が1人で病室に戻って最後に会った時の事、覚えてる? あの時、 瑞輝は牧田さんに告るつもりだったけど、 玉砕して戻って来た」
凌空に言われて、ハッとなった 詩奈。
2年半前、 瑞輝が1人で戻って来た時、 詩奈は驚きながら、 恵麻の発言を全否定した事を思い出した。
「あの時……?」
凌空からそんな話をふられようとは思わず、当時の気持ちを思い出し、動揺を隠し切れない 詩奈。
「もう時効と思って白状すると、その時、 瑞輝や若葉に、牧田さんが 瑞輝をずっと好きだった事や偽装交際の事も話した、ゴメン。牧田さんが転居しなかったら、多分、 瑞輝は機会見つけて、牧田さんに告ってたと思う」
自分があのタイミングでここを去る決断をしたばかりに、歯車が違う方向へと動いた事を知らされ 、愕然とした 詩奈。
「そうだったんだ……話してくれてありがとう、北岡君。でも、2年前の事だもんね! あの状況で、何を言われても、私が何を言っても、結局、同情や重荷とか色んな想いが引っかかるだけだから。あの時はあのままで終わって良かったって思ってる!」
(やっと今、皆と同じスタートラインに立てた! もう、これからは誰も縛らないし、誰からも同情されない! 皆と対等になれたのだから!)
足枷を解いた今なら、 瑞輝か 凌空と、もしくは、この高校でこれから出逢う誰かと本気で恋が出来るようになれる。
その時、4人の友情にひびが入ったりする事も無いと、自分の中で認識しながら、 凌空と並んで、 瑞輝と若葉の後に続き、美しい歩みを見せた 詩奈。
念願が叶い、 詩奈の自然な歩行姿を最高の笑顔で喜んでいる3人。
そんな4人の門出を祝うように、染井吉野の桜吹雪がそよ風に舞い降り、足元には桜色の絨毯を形成していった。
【 完 】
「ねぇねぇ、あの桜の木の下の3人、次元が違うようなフォトジェニックな感じなんだけど……」
「私、知ってる! 第一中で有名だった文武両道で眉目秀麗な『三貴神』じゃん! 3人揃って南高なんて、超ラッキー!!」
「美女1人にイケメン2人って事は、私の入る余地も有り?」
「無理でしょ! 鏡見なよ!」
その時、タクシーから降りて来た、頭髪検査に引っかかりそうな茶褐色のしやなかな髪と 榛色の瞳をした色白の華奢な美少女に、その辺りにいた生徒達の視線が集中した。
「誰、あの外国人か、ハーフのような人?」
「妖精っぽくない? 透けそうで、存在してるの信じられない感じ」
「この辺で見かけない感じなのに、三貴神の方へ行くけど、知り合いって事?」
「あ~あ、2対2、しかも美少女なら勝ち目無しじゃん!」
周囲の声には耳を傾ける事も無く美しい姿勢で歩いていたが、染井吉野の下に集っていた3人を認めるなり、カモシカのような細い足でしなやかに駆け寄った。
弾むような軽やかな足音に気付いた3人が振り返ると、面影の残る懐かしい笑顔に、3人の顔が一気にほころんだ。
「 詩奈、お帰り!」
「一緒に南高生になれて良かった、牧田さん」
再会が嬉しそうな若葉と 凌空に迎え入れられて喜ぶ 詩奈。
「ただいま!」
驚き過ぎて、何も言えない様子の 瑞輝をチラッと見上げて言った 詩奈。
「相変わらず、生っ白いつーか、白さに磨きがかかった感じだな。日光浴して無かったのか?」
やっと言葉を発した 瑞輝は、憎まれ口になっていた。
「してたけど、北海道だから、これが限界」
「そうだよね~、北海道なんだから! ムリ言わない、 瑞輝。 詩奈、足はどう?」
約2年半ぶりで再会した 詩奈は、かつての松葉杖姿など連想出来ないほど、ごく普通に美しい姿勢で立っている。
「とっくに完治してるよ! 短距離走や持久走なんて、前より早くなったくらい!」
「スゴイね、牧田さん! 頑張ったんだね~!」
記憶より頭1つくらい大きくなり、 瑞輝と大差無い体格の 凌空に言われて、改めて時間の流れを感じられた 詩奈。
「あっ、でも、手術痕は健在だから、もし夢が変わってなかったら、北岡君にお願いするね! 私が第一号の実験台になってあげる!」
「牧田さんや、困っている人達の為に、なるべく早く、目立たなくなる技法を見付けるよ!」
凌空の夢の実現を心待ちにする 詩奈。
そんな2人のやり取りを見て、 瑞輝は両腕を空に向けて伸ばした。
「俺は、牧田の世話役から晴れて解放されたから、名医目指して頑張るか~!」
その言葉が寂しく感じつつも、やっと 瑞輝を自由な状態に戻せて、救われた思いの 詩奈。
「矢本君、本当にありがとう! そして、これからは、普通に友達としてよろしくね!」
「普通に友達だって、 瑞輝! 私、まだチャンス有るわけだね~!」
冷やかしながら、 詩奈がよく見慣れていたように、 瑞輝の腕を組んで玄関の方へ歩み出した若葉。
「あっ、牧田さんに言ってなかったけど、2年半前、 瑞輝が1人で病室に戻って最後に会った時の事、覚えてる? あの時、 瑞輝は牧田さんに告るつもりだったけど、 玉砕して戻って来た」
凌空に言われて、ハッとなった 詩奈。
2年半前、 瑞輝が1人で戻って来た時、 詩奈は驚きながら、 恵麻の発言を全否定した事を思い出した。
「あの時……?」
凌空からそんな話をふられようとは思わず、当時の気持ちを思い出し、動揺を隠し切れない 詩奈。
「もう時効と思って白状すると、その時、 瑞輝や若葉に、牧田さんが 瑞輝をずっと好きだった事や偽装交際の事も話した、ゴメン。牧田さんが転居しなかったら、多分、 瑞輝は機会見つけて、牧田さんに告ってたと思う」
自分があのタイミングでここを去る決断をしたばかりに、歯車が違う方向へと動いた事を知らされ 、愕然とした 詩奈。
「そうだったんだ……話してくれてありがとう、北岡君。でも、2年前の事だもんね! あの状況で、何を言われても、私が何を言っても、結局、同情や重荷とか色んな想いが引っかかるだけだから。あの時はあのままで終わって良かったって思ってる!」
(やっと今、皆と同じスタートラインに立てた! もう、これからは誰も縛らないし、誰からも同情されない! 皆と対等になれたのだから!)
足枷を解いた今なら、 瑞輝か 凌空と、もしくは、この高校でこれから出逢う誰かと本気で恋が出来るようになれる。
その時、4人の友情にひびが入ったりする事も無いと、自分の中で認識しながら、 凌空と並んで、 瑞輝と若葉の後に続き、美しい歩みを見せた 詩奈。
念願が叶い、 詩奈の自然な歩行姿を最高の笑顔で喜んでいる3人。
そんな4人の門出を祝うように、染井吉野の桜吹雪がそよ風に舞い降り、足元には桜色の絨毯を形成していった。
【 完 】
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ワケあり公子は諦めない
豊口楽々亭
ファンタジー
精霊の加護により平和が守られている、エスメラルダ公国。
この国の公爵家の娘、ローゼリンド公女がある日行方不明になった。
大公子であるヘリオスとの婚約式を控えた妹のために、双子で瓜二つの兄である公子ジークヴァルトが身代わりになることに!?
妹になり代わったまま、幼馴染みのフロレンスと過ごすうち、彼女に惹かれていくジークヴァルト。
そんなある日、ローゼリンドが亡骸となって発見されて……───最愛の妹の死から始まる、死に戻りの物語!!
※なろう、カクヨムでも掲載しております。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
退会済ユーザのコメントです
岡本様
ご訪問とコメント、お気に入り登録までして頂き
ありがとうございますm(__)m
別の小説サイトの青春系のコンテストでボツになった作品を修正して
こちらに応募したものですが(笑)
もったいないほど素敵な感想をありがとうございますm(__)m
よろしかったら、引き続き読み進めて頂けると嬉しいです!