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第五部
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翌々日。
わたしはフィジャと共にイナリさんの家に向かっていた。
荷物らしい荷物がないので、わたし一人でも大丈夫だよ、とフィジャには言ったのだが、引っ越しを手伝ってくれる、とのことで、仕事前に一緒に来てくれた。今日の出勤は昼過ぎからのシフトらしい。
フィジャの家に来るときも手荷物一つで、それからたいして荷物が増えていないから本当に一人でも大丈夫なのに、と思っていたのだが、フィジャに、「イナリの、あの家に、行くんだよ」と言われて、わたしはちょっと黙ってしまった。
あの、布やデザイン画の紙が散乱しまくった部屋に一人で行くのは大変かもしれない。もしかしたら片付けから入るかもしれないし。
それに、あんなことを聞いてしまった手前、二人きりになるのはちょっと気まずかったので、フィジャの言葉をありがたく受け取ったのだ。
ちなみにイエリオとウィルフは採集依頼についての話があるとかで欠席である。イエリオはともかく、ウィルフの顔には「片付けとかめんどくさい」という言葉が書いてあるように見えたけど。
イナリさんの家は、散乱していて整理整頓という言葉から四人の中で一番遠いような部屋をしているが、その実、本人には何が何処にあって、生活するスペースなど全て把握しているようなので、掃除は大変だろう。ああいう部屋ほど、他人が片付けると後々大変なのだ。
家が建つまで後約半年。家具の購入とかもろもろの準備を考えると、新居で生活するのはもう少し先になりそうだが、とりあえずお世話になるのは当初の予定通り四か月。フィジャ達の家をそれぞれ出る際、きっちり四か月お世話になったわけではないが、予定では四か月。
そのあとはまた、家の建設の進行状況と合わせて考えよう、という話になっているが、とにかく四か月。
この四か月、あの部屋で無事に生活できるだろうか、と、不安になる。
別に散らかった部屋が嫌、というわけではない。そりゃ、綺麗なほうがいいけど、潔癖症というわけでもないので、カビが生えているとか、そういうレベルになるまで放置されていなければ、まあ、許容範囲だ。お世話になる側だし。
問題は、生地なんかを踏みつけて駄目にしないか、なのだ。
本当に踏んだらまずい布は流石に床へ放置しないだろうが(しないと信じたい)、どれが何に使われるものなのかなんてわたしには分からない。知らないところでものを駄目にした、ということが起きてしまわないかが不安なのだ。ましてや土足文化だし。
わたしの不安がわかるのか、フィジャも苦笑いをしていた。でも、決して「大丈夫だよぉ」とは言わない。多分、散乱した部屋で何かをやらかすのは、想像に難くないんだろう。
「マレーゼ、ボクはマレーゼの味方だからね!」
ほらぁ……。にこやかにそんなことを言ってくれるフィジャ。でもそれって、あの散乱した部屋で何かが起きて喧嘩になってもこっち側に付いてくれる、という宣言であって、何も起きないから大丈夫だよ! というはげましではない。
気が重くても歩けばイナリさんの家にはたどり着くわけで。
わたしたちは、イナリさんの住む、少しばかり古めかしいアパートへとついたのだった。
わたしはフィジャと共にイナリさんの家に向かっていた。
荷物らしい荷物がないので、わたし一人でも大丈夫だよ、とフィジャには言ったのだが、引っ越しを手伝ってくれる、とのことで、仕事前に一緒に来てくれた。今日の出勤は昼過ぎからのシフトらしい。
フィジャの家に来るときも手荷物一つで、それからたいして荷物が増えていないから本当に一人でも大丈夫なのに、と思っていたのだが、フィジャに、「イナリの、あの家に、行くんだよ」と言われて、わたしはちょっと黙ってしまった。
あの、布やデザイン画の紙が散乱しまくった部屋に一人で行くのは大変かもしれない。もしかしたら片付けから入るかもしれないし。
それに、あんなことを聞いてしまった手前、二人きりになるのはちょっと気まずかったので、フィジャの言葉をありがたく受け取ったのだ。
ちなみにイエリオとウィルフは採集依頼についての話があるとかで欠席である。イエリオはともかく、ウィルフの顔には「片付けとかめんどくさい」という言葉が書いてあるように見えたけど。
イナリさんの家は、散乱していて整理整頓という言葉から四人の中で一番遠いような部屋をしているが、その実、本人には何が何処にあって、生活するスペースなど全て把握しているようなので、掃除は大変だろう。ああいう部屋ほど、他人が片付けると後々大変なのだ。
家が建つまで後約半年。家具の購入とかもろもろの準備を考えると、新居で生活するのはもう少し先になりそうだが、とりあえずお世話になるのは当初の予定通り四か月。フィジャ達の家をそれぞれ出る際、きっちり四か月お世話になったわけではないが、予定では四か月。
そのあとはまた、家の建設の進行状況と合わせて考えよう、という話になっているが、とにかく四か月。
この四か月、あの部屋で無事に生活できるだろうか、と、不安になる。
別に散らかった部屋が嫌、というわけではない。そりゃ、綺麗なほうがいいけど、潔癖症というわけでもないので、カビが生えているとか、そういうレベルになるまで放置されていなければ、まあ、許容範囲だ。お世話になる側だし。
問題は、生地なんかを踏みつけて駄目にしないか、なのだ。
本当に踏んだらまずい布は流石に床へ放置しないだろうが(しないと信じたい)、どれが何に使われるものなのかなんてわたしには分からない。知らないところでものを駄目にした、ということが起きてしまわないかが不安なのだ。ましてや土足文化だし。
わたしの不安がわかるのか、フィジャも苦笑いをしていた。でも、決して「大丈夫だよぉ」とは言わない。多分、散乱した部屋で何かをやらかすのは、想像に難くないんだろう。
「マレーゼ、ボクはマレーゼの味方だからね!」
ほらぁ……。にこやかにそんなことを言ってくれるフィジャ。でもそれって、あの散乱した部屋で何かが起きて喧嘩になってもこっち側に付いてくれる、という宣言であって、何も起きないから大丈夫だよ! というはげましではない。
気が重くても歩けばイナリさんの家にはたどり着くわけで。
わたしたちは、イナリさんの住む、少しばかり古めかしいアパートへとついたのだった。
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