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第五部
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凄いことを聞いてしまった。
わたしはフィジャの家のソファの上で、狸寝入りをしながら、内心で焦っていた。
最初は、盗み聞きするつもりはなかった。というか、寝てしまう算段だったのだ、本当に。
つい先日、お酒でやらかしたから、今日は早めに切り上げよう、と思っていて。会話を続けるのも良かったけれど、最近は魔力の回復量も気になるし、少し寝てしまおうかな、と思ったのだ。多分、会話に加わっていたら楽しくて、寝る時間が少なくなっただろうし。
でも、どうしても眠い、というわけでもなくて、寝るまでに時間がかかったのが問題だった。
わたしが寝たものだと勘違いしているであろう四人は、わたしのことを話し始めたのだ。
そしたら、やっぱり、気になってしまって。
マナーとして聞かないほうがいい、というのは分かっているんだけど、耳をふさげないから、聞こえるものは聞こえてしまうし、話し始めたタイミングで起き上がって参加するのもなんだか気まずくて。
どうしよう、と目をつぶりながら焦っていると、ついに聞いちゃいけないところまで話し始めてしまったのだ。
――イナリってさぁ、絶対マレーゼのこと好きだよね。
フィジャの声が、頭の中をぐるぐる回る。
しかも、イナリさんは、フィジャの発言をハッキリ否定しなかった。
イエリオの追撃を聞くに、多分、イナリさんがわたしを好き、というのは、そう遠くない正解なんだろう。
勿論、本人から直接聞くまでは信じないけど。断定できないけど。でも、少なくとも、イナリさんのあのよそよそしい態度は、ウィルフさんのものと違って、本気の拒絶ではなかったような、そう思えるような雰囲気だった。
直接表情を見ることが出来なかったけど、声音だけ聞けば、間違いない。
――イナリさんは、わたしを好き。
考えても見なかった、唐突に知らされたことに、わたしの頭は一杯になる。
ほんの少ししかお酒を飲んでいないにしては、顔が真っ赤になっている自信がある。
明後日からはウィルフが、イエリオの為にいくつかの採集依頼をこなすと、城壁外に行くことになっていて、それに合わせてわたしもウィルフさんの家を出ることになっている。
明後日から、イナリさんの家でお世話になるのだ。
わたし、明後日から彼にどう対応したらいいんだろう。
彼とも向き合わなきゃ、話をしなきゃ、と思っていたが、それは全て、彼からよく思われていないことを前提に、あれこれ言葉を考えていたわけで。
実は好かれている、なんてこと、微塵も考えていなくて。
未だに、わたしのことを話す四人の声を遠くに聞きながら、わたしは一人、こっそりと、赤面していた。
わたしはフィジャの家のソファの上で、狸寝入りをしながら、内心で焦っていた。
最初は、盗み聞きするつもりはなかった。というか、寝てしまう算段だったのだ、本当に。
つい先日、お酒でやらかしたから、今日は早めに切り上げよう、と思っていて。会話を続けるのも良かったけれど、最近は魔力の回復量も気になるし、少し寝てしまおうかな、と思ったのだ。多分、会話に加わっていたら楽しくて、寝る時間が少なくなっただろうし。
でも、どうしても眠い、というわけでもなくて、寝るまでに時間がかかったのが問題だった。
わたしが寝たものだと勘違いしているであろう四人は、わたしのことを話し始めたのだ。
そしたら、やっぱり、気になってしまって。
マナーとして聞かないほうがいい、というのは分かっているんだけど、耳をふさげないから、聞こえるものは聞こえてしまうし、話し始めたタイミングで起き上がって参加するのもなんだか気まずくて。
どうしよう、と目をつぶりながら焦っていると、ついに聞いちゃいけないところまで話し始めてしまったのだ。
――イナリってさぁ、絶対マレーゼのこと好きだよね。
フィジャの声が、頭の中をぐるぐる回る。
しかも、イナリさんは、フィジャの発言をハッキリ否定しなかった。
イエリオの追撃を聞くに、多分、イナリさんがわたしを好き、というのは、そう遠くない正解なんだろう。
勿論、本人から直接聞くまでは信じないけど。断定できないけど。でも、少なくとも、イナリさんのあのよそよそしい態度は、ウィルフさんのものと違って、本気の拒絶ではなかったような、そう思えるような雰囲気だった。
直接表情を見ることが出来なかったけど、声音だけ聞けば、間違いない。
――イナリさんは、わたしを好き。
考えても見なかった、唐突に知らされたことに、わたしの頭は一杯になる。
ほんの少ししかお酒を飲んでいないにしては、顔が真っ赤になっている自信がある。
明後日からはウィルフが、イエリオの為にいくつかの採集依頼をこなすと、城壁外に行くことになっていて、それに合わせてわたしもウィルフさんの家を出ることになっている。
明後日から、イナリさんの家でお世話になるのだ。
わたし、明後日から彼にどう対応したらいいんだろう。
彼とも向き合わなきゃ、話をしなきゃ、と思っていたが、それは全て、彼からよく思われていないことを前提に、あれこれ言葉を考えていたわけで。
実は好かれている、なんてこと、微塵も考えていなくて。
未だに、わたしのことを話す四人の声を遠くに聞きながら、わたしは一人、こっそりと、赤面していた。
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