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第一部『人界の秩序と魔界の理屈』
人身売買組織撲滅作戦
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「おかえりなさいませ、コクラン様」
宿の部屋に戻ったコクランを出迎えたのは宿の従業員ではなく、自らのメイド、レイチェルであった。
朝の時間、コクランによって留守を命じられていた彼女は丁寧な一礼を行った後でコクランに夕食の詰まったバスケットを差し出す。
コクランがバスケットを開けると、そこにはこんがりと焼いたパンに食材を挟んで作るホットサンドなる料理が揃っていた。
ホットサンドの入ったバスケットの脇にはレイチェル手作りのサラダと気軽につまめるような手軽な果物が入っていた。
レイチェルはそれから頭を下げ、厨房へと向かっていく。
厨房から帰ってきたレイチェルはコックから分けてもらったというお茶を持って帰ってきた。
お茶を皿の上に置き、コクランはお茶を啜り、手作りのホットサンドに舌鼓を打っていた。
自身のメイドというだけのことはあり、なかなかの出来だ。ここに来てからの食事はサンドばかりであるが、全く飽きの流れが来ないというのも流石なものだ。
コクランはサンドイッチを食しながら感心した様子でレイチェルを見つめていた。
「フフッ、そんなに見つめられると恥ずかしいですわ」
ホットサンドを食べるコクランに対し、レイチェルは思わず忍び笑いを漏らした。
「そんなに照れることはないさ。これがお前の実力なんだからさ。誇ればいいと思うぜ」
コクランの優しい言葉を聞いて、レイチェルは照れるような顔を見せた。
しばらく二人は無言で夕食を取っていた。やがて果物だけとなった。少し前と同じだ。コクランは果物を片手に今日の出来事を報告していく。
街の暗部となる酒場に足を踏み入れたことやそこから人界防衛騎士団の拠点となる場所を突き止めたこと、そして最後に人身売買組織がこの町で暗躍しているということも語っていった。
「なるほど、そんなことが……」
「あぁ、今から行くつもりだが、今回はお前も来てくれ。一人でも多く戦力がほしいからな」
レイチェルは迷うことなく首を縦に動かした。
コクランは翌日には人身売買組織の本部へと乗り込むつもりでいた。
一刻も早く、一部の狂ったリザードマンによる組織犯罪を止めなくてはならない。コクランは準備のため一度レイチェルを下がらせ、自宅に一度戻って日本刀を取ってきた。
これから敵の拠点の中で行われることになると思われる乱戦に備えたためである。それから後は日本刀を抜いて試し振りを行う。事務所に帰ってからはよく刀の手入れを行なっていたので、斬れ味には自身があった。宿屋の部屋に置いていた蒸留酒を啜って気合いを入れることにした。
酒のせいか、心地の良い眠りがコクランへと訪れることになった。今日は朝からずっと強めの酒を飲んでいたし、もしかすればあの酒が眠気を誘うトドメの一押しになってしまったのかもしれない。
これではいけない、と考え、うーんと屈伸を行い、自身の体を解していく。
それから日本刀と愛銃を腰に下げ、隣の部屋で準備を行っていたレイチェルの扉を叩いていく。
準備を終えたばかりと思われるレイチェルは申し訳なさそうに頭を下げてからコクランの後をついていく。
メイド服を着たレイチェルの背中には弓と矢を入れた筒がある。戦闘に向かう際にいつも装備しているものだ。
その姿を見て、コクランは真剣な顔を浮かべて言った。
「頼むぜ」
レイチェルは主人からの一言に頭を下げることで答えた。その顔からは彼女自身の強い意思のようなものが感じられた。
そして二人は夜の町の中を武器を携帯しながら歩いて行ったのである。
気分ら悪党の拠点を潰しに向かう西部劇のガンマンだった。
銃を下げているからか、はたまたシチュエーションが近いからかは分からなかったが、いずれにしろコクランの気分が良かったのは事実である。
彼は呑気に鼻歌を歌いながら地下の下水道へと進んでいく。各国が水の神を信望しているというだけのことはあり、水に対する思いは人一倍なのだろう。
下水道は前世の日本と同じくらいか、それ以上に綺麗に整備されていた。
煉瓦造りである点は異世界で文明力が劣ってしまう故に仕方がないが、設備は現代のものにも劣らない素晴らしい出来である。適切な処理が施された下水が通路の側を流れていた。
地下を流れる水道は迷路のように多くの下水道が入り混じった複雑な場所であり、悪事を隠すのならばもってこいの場所だろう。
よく考えたものだ。二人はこれから騎士団の面々が泊まる宿屋『テキーヤ』へと乗り込んだ。
『テキーヤ』の部屋の中にはすっかりと眠りこけている騎士団の団員たちの姿が見えた。
彼らに人身売買組織の元へと案内してもらおうではないか。コクランは口元を緩めた後に銃を構えたまま扉を蹴破った。
「動くなッ! 魔界執行官、コクラン・ネロスだッ! テメェらが人身売買組織と関わっていることは百も承知だッ! 早く、オレと助手を組織の元へと連れて行きやがれッ! 」
コクランが近くに居た哀れな男の頭に銃を突き付けながら要求してきたので、騎士団としては従わざるを得なかった。
コクランの要求に従い、二人を人身売買組織との取り引きを行う地下の下水道へと案内していく。
下水道の無限に続くような道を歩いた後で二人は下水が出ていない下水管の元へと連れて行かされた。
人一人が余裕で潜れるような下水管を通った後には巨大な部屋が見えた。舞踏会の会場のような豪華絢爛な広間であった。
広間の中ではリザードマンたちが熱心な声で奴隷オークションを行っていた。
「さぁ!今日の出演者はゴブリンのジョージくんだァァァァ~!!!」
首輪と手錠を掛けられたゴブリンが切なそうな表情を浮かべながら会場の中心に上がっていた。
「ジョージくん!実は働き者でして、炊事、洗濯、雑用、靴磨き、耕作なんでもこなします!あなたの仕事のお供にさぁ、どうぞ!さぁ、さぁ、金貨二十枚からスタートです!」
胸が悪くなるような光景だ。コクランは腐り切ったオーディションに参加して、買い物を行おうとしている客たちに嫌悪感を感じていた。同時に同じく魔族であるのに対し、同じ魔族を奴隷として攫い、売っている人攫いの集団にも嫌悪感を感じていた。
これ以上はもう黙って見ていられない。コクランは背後にいたレイチェルや案内役である人界防衛騎士団を振り切り、人質としていた男を片手に広場の表へと躍り出ていく。突然の乱入を受けて唖然とする広場の真ん中でコクランは半ば衝動的に天井へと拳銃を放った。
いわゆる威嚇射撃である。あまり聞くはずがない銃声を聞いて観客は驚いたらしい。悲鳴が聞こえ、慌てて部屋から逃げ惑う音が聞こえてきた。
「誰だ!?」
オークションで司会役を務めていた男が眉間に皺を寄せながら問い掛ける。
「魔界執行官、コクラン・ネロスだ。随分と胸が悪くなるようなことをしてくれるじゃあねぇか。クソ野郎ども」
コクランは人質にしていた騎士団の団員を司会役の男へと放り投げながら言った。
放り投げられた騎士団員の男は司会役の男と衝突して地面の上へと倒れ込む。
と、同時に背後にいた騎士団員たちが剣を掲げながらコクランへと斬りかかっていく。
「レイチェル、背後は任せたぞ」
「はいッ! 」
コクランは弓をつがえたレイチェルに背後を預け、拳銃をホルスターの中に仕舞い、代わりに日本刀を抜いた。
日本刀は珍しく片刃であり、裏は峰という作りになっている。峰で切れば相手は死なぬ。コクランはこの峰の特性を利用して両刃の剣で迫り来る騎士もどきたちを相手にすることになった。
そこから後は常にコクランが押していく。まさに一騎当千、まさしく戦国無双の豪傑ともいうべき奮迅ぶりだった。
先ず、コクランは目の前から上段に掛けて振りかぶってきた敵の腹部に向かって勢いよく峰打ちを行い、相手を地面の上へと叩き伏していく。
続いて、左右から斬り掛かってきた敵を弧を描くように峰打ち、地面の上に倒れさせた。
今度も左右からだが、結果は先ほどと同じ。無惨にも叩きのめされてしまったのである。
数の上では人界防衛騎士団と連帯した人攫い組織の方が上であった。
しかしコクランとレイチェルの両名は数を上回る技量によってそれらの不利をなくしたのだ。
結果としてあっという間に数を減らしていき、残るのは人攫い組織の親玉のみとなった。
「お、おのれッ! よくもオレの組織をッ! 」
親玉と思われる男は腰に下げていた巨大な剣を振り上げながらコクランの元へと斬りかかっていった。
だが、そんな単調な攻撃など簡単に読めた。コクランは峰打ちを行い、親玉を叩きのめしたのである。
親玉は「うっ!」と短い悲鳴を上げてから地面の上へと倒れ込んだ。
こうしてネガクの町に栄えていた人身売買組織は壊滅へと至ったのであった。
宿の部屋に戻ったコクランを出迎えたのは宿の従業員ではなく、自らのメイド、レイチェルであった。
朝の時間、コクランによって留守を命じられていた彼女は丁寧な一礼を行った後でコクランに夕食の詰まったバスケットを差し出す。
コクランがバスケットを開けると、そこにはこんがりと焼いたパンに食材を挟んで作るホットサンドなる料理が揃っていた。
ホットサンドの入ったバスケットの脇にはレイチェル手作りのサラダと気軽につまめるような手軽な果物が入っていた。
レイチェルはそれから頭を下げ、厨房へと向かっていく。
厨房から帰ってきたレイチェルはコックから分けてもらったというお茶を持って帰ってきた。
お茶を皿の上に置き、コクランはお茶を啜り、手作りのホットサンドに舌鼓を打っていた。
自身のメイドというだけのことはあり、なかなかの出来だ。ここに来てからの食事はサンドばかりであるが、全く飽きの流れが来ないというのも流石なものだ。
コクランはサンドイッチを食しながら感心した様子でレイチェルを見つめていた。
「フフッ、そんなに見つめられると恥ずかしいですわ」
ホットサンドを食べるコクランに対し、レイチェルは思わず忍び笑いを漏らした。
「そんなに照れることはないさ。これがお前の実力なんだからさ。誇ればいいと思うぜ」
コクランの優しい言葉を聞いて、レイチェルは照れるような顔を見せた。
しばらく二人は無言で夕食を取っていた。やがて果物だけとなった。少し前と同じだ。コクランは果物を片手に今日の出来事を報告していく。
街の暗部となる酒場に足を踏み入れたことやそこから人界防衛騎士団の拠点となる場所を突き止めたこと、そして最後に人身売買組織がこの町で暗躍しているということも語っていった。
「なるほど、そんなことが……」
「あぁ、今から行くつもりだが、今回はお前も来てくれ。一人でも多く戦力がほしいからな」
レイチェルは迷うことなく首を縦に動かした。
コクランは翌日には人身売買組織の本部へと乗り込むつもりでいた。
一刻も早く、一部の狂ったリザードマンによる組織犯罪を止めなくてはならない。コクランは準備のため一度レイチェルを下がらせ、自宅に一度戻って日本刀を取ってきた。
これから敵の拠点の中で行われることになると思われる乱戦に備えたためである。それから後は日本刀を抜いて試し振りを行う。事務所に帰ってからはよく刀の手入れを行なっていたので、斬れ味には自身があった。宿屋の部屋に置いていた蒸留酒を啜って気合いを入れることにした。
酒のせいか、心地の良い眠りがコクランへと訪れることになった。今日は朝からずっと強めの酒を飲んでいたし、もしかすればあの酒が眠気を誘うトドメの一押しになってしまったのかもしれない。
これではいけない、と考え、うーんと屈伸を行い、自身の体を解していく。
それから日本刀と愛銃を腰に下げ、隣の部屋で準備を行っていたレイチェルの扉を叩いていく。
準備を終えたばかりと思われるレイチェルは申し訳なさそうに頭を下げてからコクランの後をついていく。
メイド服を着たレイチェルの背中には弓と矢を入れた筒がある。戦闘に向かう際にいつも装備しているものだ。
その姿を見て、コクランは真剣な顔を浮かべて言った。
「頼むぜ」
レイチェルは主人からの一言に頭を下げることで答えた。その顔からは彼女自身の強い意思のようなものが感じられた。
そして二人は夜の町の中を武器を携帯しながら歩いて行ったのである。
気分ら悪党の拠点を潰しに向かう西部劇のガンマンだった。
銃を下げているからか、はたまたシチュエーションが近いからかは分からなかったが、いずれにしろコクランの気分が良かったのは事実である。
彼は呑気に鼻歌を歌いながら地下の下水道へと進んでいく。各国が水の神を信望しているというだけのことはあり、水に対する思いは人一倍なのだろう。
下水道は前世の日本と同じくらいか、それ以上に綺麗に整備されていた。
煉瓦造りである点は異世界で文明力が劣ってしまう故に仕方がないが、設備は現代のものにも劣らない素晴らしい出来である。適切な処理が施された下水が通路の側を流れていた。
地下を流れる水道は迷路のように多くの下水道が入り混じった複雑な場所であり、悪事を隠すのならばもってこいの場所だろう。
よく考えたものだ。二人はこれから騎士団の面々が泊まる宿屋『テキーヤ』へと乗り込んだ。
『テキーヤ』の部屋の中にはすっかりと眠りこけている騎士団の団員たちの姿が見えた。
彼らに人身売買組織の元へと案内してもらおうではないか。コクランは口元を緩めた後に銃を構えたまま扉を蹴破った。
「動くなッ! 魔界執行官、コクラン・ネロスだッ! テメェらが人身売買組織と関わっていることは百も承知だッ! 早く、オレと助手を組織の元へと連れて行きやがれッ! 」
コクランが近くに居た哀れな男の頭に銃を突き付けながら要求してきたので、騎士団としては従わざるを得なかった。
コクランの要求に従い、二人を人身売買組織との取り引きを行う地下の下水道へと案内していく。
下水道の無限に続くような道を歩いた後で二人は下水が出ていない下水管の元へと連れて行かされた。
人一人が余裕で潜れるような下水管を通った後には巨大な部屋が見えた。舞踏会の会場のような豪華絢爛な広間であった。
広間の中ではリザードマンたちが熱心な声で奴隷オークションを行っていた。
「さぁ!今日の出演者はゴブリンのジョージくんだァァァァ~!!!」
首輪と手錠を掛けられたゴブリンが切なそうな表情を浮かべながら会場の中心に上がっていた。
「ジョージくん!実は働き者でして、炊事、洗濯、雑用、靴磨き、耕作なんでもこなします!あなたの仕事のお供にさぁ、どうぞ!さぁ、さぁ、金貨二十枚からスタートです!」
胸が悪くなるような光景だ。コクランは腐り切ったオーディションに参加して、買い物を行おうとしている客たちに嫌悪感を感じていた。同時に同じく魔族であるのに対し、同じ魔族を奴隷として攫い、売っている人攫いの集団にも嫌悪感を感じていた。
これ以上はもう黙って見ていられない。コクランは背後にいたレイチェルや案内役である人界防衛騎士団を振り切り、人質としていた男を片手に広場の表へと躍り出ていく。突然の乱入を受けて唖然とする広場の真ん中でコクランは半ば衝動的に天井へと拳銃を放った。
いわゆる威嚇射撃である。あまり聞くはずがない銃声を聞いて観客は驚いたらしい。悲鳴が聞こえ、慌てて部屋から逃げ惑う音が聞こえてきた。
「誰だ!?」
オークションで司会役を務めていた男が眉間に皺を寄せながら問い掛ける。
「魔界執行官、コクラン・ネロスだ。随分と胸が悪くなるようなことをしてくれるじゃあねぇか。クソ野郎ども」
コクランは人質にしていた騎士団の団員を司会役の男へと放り投げながら言った。
放り投げられた騎士団員の男は司会役の男と衝突して地面の上へと倒れ込む。
と、同時に背後にいた騎士団員たちが剣を掲げながらコクランへと斬りかかっていく。
「レイチェル、背後は任せたぞ」
「はいッ! 」
コクランは弓をつがえたレイチェルに背後を預け、拳銃をホルスターの中に仕舞い、代わりに日本刀を抜いた。
日本刀は珍しく片刃であり、裏は峰という作りになっている。峰で切れば相手は死なぬ。コクランはこの峰の特性を利用して両刃の剣で迫り来る騎士もどきたちを相手にすることになった。
そこから後は常にコクランが押していく。まさに一騎当千、まさしく戦国無双の豪傑ともいうべき奮迅ぶりだった。
先ず、コクランは目の前から上段に掛けて振りかぶってきた敵の腹部に向かって勢いよく峰打ちを行い、相手を地面の上へと叩き伏していく。
続いて、左右から斬り掛かってきた敵を弧を描くように峰打ち、地面の上に倒れさせた。
今度も左右からだが、結果は先ほどと同じ。無惨にも叩きのめされてしまったのである。
数の上では人界防衛騎士団と連帯した人攫い組織の方が上であった。
しかしコクランとレイチェルの両名は数を上回る技量によってそれらの不利をなくしたのだ。
結果としてあっという間に数を減らしていき、残るのは人攫い組織の親玉のみとなった。
「お、おのれッ! よくもオレの組織をッ! 」
親玉と思われる男は腰に下げていた巨大な剣を振り上げながらコクランの元へと斬りかかっていった。
だが、そんな単調な攻撃など簡単に読めた。コクランは峰打ちを行い、親玉を叩きのめしたのである。
親玉は「うっ!」と短い悲鳴を上げてから地面の上へと倒れ込んだ。
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