朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

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ひだまりの日々(静留side)

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ピアノを弾く前にふと窓の外をのぞいて、静留は開きかけだった花壇のチューリップが花を咲かせていることに気がついた。

__あか、しろ、きいろ…はるのいろ…。

花の明るさが東弥に重なって、一緒に見たい、と思い立つ。

静留はピアノを弾くことをせず、東弥を起こしに行くことにした。

彼は西弥の部屋だったところで寝ているはずで、静留は階段を上りそのドアを開ける。

__そういえば、寝てるかお、見たことない…。

音を立てないようにそっと近寄り、寝顔を覗き込む。

__きれい…。

彼の寝顔が美しくて、静留はぱちぱちと瞬いた。

長い睫毛と端正なラインがまるで彫刻のようで、静留は東弥の頬にそっと触れてみる。

__でも、お話ししてもらえないのは、さびしい…。

「と…西くん、西くん 」

東弥さん、と呼びそうになるのを抑え、違う名前を呼びながら彼の身体を揺する。

「ん…どうしたの?静留。おはよ。」

「おはよう、西くん!」

ダークブラウンの切れ長の瞳がゆっくりと開いて、ひだまりみたいに静留を優しく照らした。

温かな眼差しが嬉しくて、幸せで、その身体に抱きつくと、優しく抱き留められる。

続いて髪を撫でられ、心地よさに静留は目を瞑った。

「それで、どうしたの?何かいいことでもあった?」

__そうだった!

しばらくして東弥に尋ねられ、ここに来た本来の目的を思い出す。

彼と一緒にいる幸せで、すっかり忘れていた。

「うん!あのね、チューリップが咲いたの!」

「そっか、嬉しいね。何色だった?」

静留が言うと、東弥は微笑みを浮かべ、話を楽しそうに聞いてくれる。

「えっとね、赤と白と黄色!と…西くんも、いっしょに見にいこう?」

__…またまちがえちゃった。

自分の不甲斐なさに、静留はぎゅっと手を握りしめた。

東弥をもう西弥だとは思っていないから、どうしても時折呼び間違えそうになる。

でもいけない。東弥は西弥の代わりにここにいてくれるだけなのだから。

…彼を彼の名前で呼びながら一緒にいられる存在になりたいなんて、そんなわがままは許されない。

「…いいね。支度をするから少しだけ下で待っていてくれる?」

「うん!」

寂しくなった気持ちは、東弥が誘いに乗ってくれたことで小さくなった。

あまりにも楽しみで、玄関先で靴を履いたまま鼻歌を歌っていたら、やってきた東弥にくすりと笑われて、それがまた嬉しくて。

差し伸べられた大きな手をぎゅっと握ると、優しい力で握り返される。

ドアを開けて吹き込んできた風は、温かな春のにおいがした。
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